超・神秘・映画

2022年6月19日 (日)

怪獣ウラン (1956、X THE UNKNOWN、ハマー・プロ)

 意識を持った泥が人間を襲うドロドロ・パニック映画

 そんなもの正気で観たがる奴などいるだろうか。

 泥っぽいところで、昔トロマビデオで『悪魔の毒々モンスター』ってのがありましたが、あれは廃液で溶けて変形した人間だからね。同じハマーでも『原子人間』の系列。サム・ライミの『ダークマン』か。ジョーカーと同じ製造方法。人体改造、フランケンシュタインの流れですよね。

 『コロッサス』のマニング大佐も含め、人間が変形するモンスターには、人間的悲哀と喜怒哀楽とお色気があります。巨人獣と化したマニングがマンション窓からブロンド美女の入浴シーンを覗く場面を思い出してみて。あれ、人間だから成立するんであって、単なる泥じゃねぇ。

 しかし。

 泥がこっちを見ている。しかも、その泥が勝手に動いて、人間を襲ってくる。

 これって、かなりの確率で怖くないですか。ホラーじゃないですか。生命のない筈のものが意識を持って動く。ロボット物って全般そうだけど、あれはまだ人型ベースだったりするからねぇ。機械が動くのはまだ理解の範疇。意味が解る。動くように作られているんだから、そりゃ動くだろ。

 でも動きとまったく関係ないものが突然動き出したら、こりゃホラーですよ。本気で怖いですよ。意味わからんもん。私はレムの『大失敗』を連想した。究極の恐怖かも知れない。非生命に襲われるのって。

 放射能を帯びた被爆泥がさ、勝手に動き出して人間を襲う。ジューッと溶かしちゃう。で、泥に接触した人間が骨だけにされる、かなり呑気な残虐描写とか本作にはあって、そこが冒頭に映る、かの「この作品には過激で残酷な描写が含まれます!閲覧注意」テロップの要因になっているようなんですが、そんなこと言われてもねぇー。そこはホラ、『ウルトラQ』で放送できるレベルでお約束の範疇であって、血は出る、脳天に杭は打たれる、腕やら足は切り刻む。残虐の極みに達した現在の視点から見れば、ま、幼稚園レベルで生ぬるいものなんで、好きな人はかえって微笑ましく思えちゃうんでしょうけど。(主役の博士の見事なハゲ頭の方がよっぽど凶悪である。)

 でも、ここまで泥ネタ押し。

 あくまで、泥こだわり一辺倒。

 もう、煎じ詰めれば、すべて、泥ネタしかない!

 泥一発でここまで見せきる泥オンリー主演の映画がある。一時間半かけて大の大人が泥いじり。脚本ジミー・サングスター本気の泥チャレンジ。脱ぎも爆破もクソくらえ。泥こそはすべてだ!
 こういう、まったく観なくていい傑作に出会えるんだから、映画界もまだまだ捨てたもんじゃない。
諸君に言っておきたいが、見たい映像を見るだけが映画じゃないんだ。なんていうか、観たくないものを見せられる。そういう体験は非常に大事だし、これからの人生の糧となるんだよ。一回観たらもう衝撃もないような、ちょろいCGよか、動く泥ですよ。内部で水流して動かしてるのかな?

 

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2021年10月26日 (火)

雨穴「とある一軒家で見つかった、不気味なビデオテープの真相」 2,050,876 回視聴2021/09/24

墓碑銘2021年―――。

災禍の年は粛々と進んでいた。昨年から空前の猖獗を振るったコロナウィルスは、真夏の感染爆発のあと、専門家も首を捻る謎のフェイドアウトを遂げ、列島各地を襲っていた中規模地震の不可解な連鎖は突如10月首都圏一帯にも及び、かの震災以降の交通機関の大混乱と共に広域に水道管被害を齎した。
 われわれが記憶しておかなくてはならないのは、皇族の異常婚礼でもなければ、安直な政権交代でもない。人類が直面する真の恐怖はまだその深淵の顔を僅か一端しか覗かせておらず、本当の地獄はこれから到来するということだ。

いまはまだ大破壊の前夜、世界は真にこれから破滅するのだ。
 
 そんな平凡なある日のこと。
 怪奇探偵スズキくんは一本の電話に起こされた。
「はい・・・怪奇探偵事務所ですが・・・」
『ハロー、ヤングボーイ』
 相手はよく知った口調で話しかけてきた。
『きみが、GW以降に来ると言ってなかなか来ないのでね。こうして自ら呼びに来たのだ』
「・・・だれ?借金取りなら間に合ってますよ。こちとら、去年から碌な仕事も無くって腐ってるんだ。おととい来やがれ、バカヤロウ」
『こいつはご挨拶だな。せっかく新しいネタを持って参上したんじゃないか。きみ、怪奇現象はまだまだ終わっていないぜ。謎は深まるばかりだ』
 スズキくんはボリボリ頭を搔いた。
 カーテンの向こうから新鮮な光が床に零れ落ち、日野日出志『恐怖怪談!!ぼくらの先生』の表紙を照らしている。
「いいですか、古本屋のおやじ」
 電話の向こうの相手は明らかにギクリとしたようだ。
「あんたとこうして漫才ごっこを始めてからもう何年になるか忘れましたが、その間に時代はドンドン進んでるんですよ。ひばり書房版を昨晩読んでた日野先生の『ぼくらの先生』だって、Amazon Kindle版が発売されてるくらいだ。それを知ってある意味ビビリましたよ」

恐怖怪談!!
ぼくらの先生1 Kindle

学校中から慕われている大仏先生。その周りでは何故か不可解な出来事が多かった。それでも生徒たちは先生に信頼をよせて、先生自体もより良い先生であろうとしていた。だが、大仏先生の過去には恐ろしい秘密があった……。表題作「ぼくらの先生」をはじめ、ナマズを寄生させて共生し利益を得ている少年の「おーいナマズくん」など日野日出志先生の魅力あふれる怪奇ファンタジー作品群。

『うん、それ実は日野先生の第一作品集「幻色の孤島」そのものだからな。実にエモくね?得も言われず、エモくね?』

「無理やりエモくなくてよろしい。電子版はフルコピー3分冊されていて、一冊当たり¥110
Kindle
価格にて読めるんです。獲得ポイント:
1pt
貰えます。ところがですよ、書籍は古書価格がバカ高くて、メルカリで¥44,444(税込)
送料込のぼったくり価格で出品しているバカがいた。絶対買っちゃダメですよ!」

『ふむ、虫プロ版はまんだらけで、¥3,800、ひばり版は¥3,000か。古書なんて所詮言い値だからな。それでも相場があるのは一定のマーケットが存在する商品だからだよな。知らん奴にしてみりゃ10円貰ってもいらん代物だろ。我が家でも家内がよく表紙にパンチをくれとる』
「ケッ、物の値打ちを知らない腐れ外道どもが。しかし、日野先生は著者と直接版権交渉できるから良いとしましても、作者行方不明で、再版のあてもないひばりは軒並み高価ですな。森由岐子ですら高い」

『あー。それ。それ言う。見事にフラグだよ、今回のテーマの』

 スズキくんは首をかしげて考え込む。

「へ・・・?!」

 

 咳払いした古本屋のおやじ、前説を続ける。

『日野先生が電子書籍化されるなんて誠に驚愕だが、考えてみれば内容もしっかりしてるし、文学的エッセンスもあるし、ファンシーな童話や寓話的な要素もふんだんにあるし。現代のよい子が読んでも一応問題なかろう。ま、日野先生には美しい奥さんを欲望から絞殺して死体をバラして薔薇の堆肥にする定番アブノーマルな話や、世間に理解されない恨み・つらみ・鬱憤に駆られて漫画編集者を衝動的に惨殺し、一部始終を目撃した読者に対して斧を投げて殺害しようとする異常な話もたまにあるのだが。セーフ。常識の範囲。問題ない。ギリ安心だ。子供が読んでもだいじょうぶ!』

「・・・そうかなァ・・・?」

『それよか、現在お読みの「神秘の探求」という無駄ブログ。今どきパッケージメディアに拘り続け、紙やら本やらディスクやらと心中しようと偏愛、収集を重ねてきた、この上なく悲惨な闘争記録であるのだが、正直もう限界なの』

「エッ?!」

『最初のこころざしは破綻崩壊、建物倒壊した。原因は収納スペース。もうこれ以上入らねぇ(泣)このままだと床が抜け落ちる。フロア崩落により死亡する。かといって収集の為に貸し倉庫やストレージボックスを借りる資金なんか無い。残念だが、俺は諦めた。神々の黄昏、地獄に堕ちた勇者ども。泣く泣く積み上げた財産を処分するしかない、ハムレット的状況に立ち至ったことを諸君に告げる。アドルフに告ぐ。ホレイショ、お前もか

「いや、それブルータス。BRUTUSって雑誌が昔ありましたよね?いや、そもそもコレクターの末路なんてのは、最初から分かり切ってたことじゃないですか。ボクなんか2,000冊積み上げて、一気に売って、また買い戻す。人生とはその繰り返しですよ」

『オレは気が小さいんだよ!ただ実際売ってみてわかった、くだらんもんが古書価格上がったりするんだな。同時代で体験した読者にしてみりゃ、物好き以外にはゴミだぜ、山尾悠子「仮面物語」なんか』

「あー、あー。作者が再刊を許可してない系ですね。出す出さないで本人Twitter書いてましたね」

『うむ。あの頃小松左京(豚)がなんでか褒めたりして、当時は星雲賞だか日本SF大賞の候補だかにもなってたような気がする。どこがSFなんだよ豚!でも、あれ、意外と買取高かったぜ。嫁が喜んでた』

「山尾をですか・・・()

『うん、山尾高評価()・・・いや、そういう話じゃないんだ。というわけで、今回はYouTubeやるぞ』

「え?」

『パッケージメディアはもう限界だ!!今どきそんなクソみたいなもん、集める奴はバカか河馬だよ。これからは、コホン、ズバリ電子だな。世界はダウンロード、ストリーミングの時代が来てるんだよ。ネトフリ、ネトゲ、ネトウヨなんだよ!CD屋なんか軒並み倒産じゃないか』

「はぁ、でも最近はハヤカワのポケミス、古いやつ拾い歩いてるって聞きましたが・・・」

 

 電話の向こうで古本屋のおやじはまた咳払いした。

『いいか。2014年に待望の翻訳が出たホセ・ドノソの大長編「別荘」の初版がわずか500部だったんだよ』

「これまた唐突すぎる展開。誰ですか、それ?」

『黙れ、俗人。ラテンアメリカ文学の高名な傑作だよ。本国チリでは文学的事件と呼ばれ、ラテンアメリカ各国で大ベストセラーだったってのに。私が見つけた日本版2020年三刷も、同じく僅か500部だった。こりゃつまりトータル1,500部での出版ってことだろ。露骨に過疎っとる。めちゃめちゃ過疎っとるネ!』

「あんたに言われたくないでしょ、ドノソも」

『うるせぇ。そこでだな。エヘン、これを大手配信サイト、例えばふわっちの閲覧と比較してみたまえ』

「え、ふわっちですか?なんでまた?今回もまた強引な話繋ぎで攻めますね」

『計算が分かり易いから引き合いに出しとるだけだ。他意は無いのよ。

 いいか、ふわっちの場合な、二桁数の閲覧ではまだ過疎と呼ばれるのだ。1,000人越えしてようやく一応大手配信者扱いにされる仕組みになっとる』

「フーン、やけに詳しいな。そうなんですか?」

『きみ、素人が個人で細々やっているいい加減な垂れ流し配信なんかを観るような、物好きな暇人が、この国にどんだけいると思うね?東京流れ者だって喰っていくには銭がいる。まともな奴は全員カツカツで働いとるよ。だから観てるのは無職やニートや住所不定者、扶養枠の人だけ。最低国民層。

 そんな逆境で人を集め、いちどきの閲覧が余裕で1,000人超えるなんていうケースは、もう並々ならぬ異常事態だよ。何か事件起こして警察絡むとか、連行されるとか、裁判だとか。自殺やらキチガイやら喧嘩色恋、刃傷沙汰だとか。放送しているマンションが火事で文字通り炎上中だとか、UFO着陸とか、青木ヶ原で心霊デートだとか。産まれた子供が実の旦那の子じゃないかも知れないからDNA鑑定するとか、あるいは大手配信者の炎上放送とかでもない限り、そうそう発生しないものなのだ。

 YouTubeなどメジャーとは違って、どこかから浮動票が大量に流入してきたりは絶対しないからな。ニコ生も同様だとは思うが、観る人、観ない人の差がハッキリしていて、一般人は間違っても偶然観たりしない。完全に閉鎖的な村社会だからな!』

「確かに。ボクは存在自体まったくに気にしてませんでした」

『大手配信者の相次ぐ不祥事や、規制強化によるアカウント停止により、ふわっち自体が最近超絶に過疎っとるが、それでも多ければ最大5,000人はいく。ネットの世界は恐ろしい。暇なやつがウヨウヨおる』

「はァ、それは確実にあんたですね」

『むむッ、MY NAME ISあんた?!どたわけが!あんた、あんたって気安く呼ばないで!
 YouTubeでは、登録者数5,000人ではまだまだ弱小。一万越えてなんぼ、10万人越えして成功、100万越えて有名人。とまぁ、恐ろしい基準があるのだがね。そうして比較すると、今回取り上げる記事の動画がどの程度の認知度をもっているのか、数字を突き合わせて初めて見えてくる訳よ』
「うーーーん。ドノソ閲覧500か。こうしてみると文学、メチャめちゃ過疎ですね!」

『本当は別ジャンルだから単純比較できないんだけどな。ドノソなんか、エンタメで本当面白いのに。もったいない。ただ、いまどき、人の関心がどこに集まりやすいか。観客の数字がどこに集まりやすいか、一応は頭に入れてもらっておいてだな・・・』

「はい・・・」

 怪奇探偵スズキくんはカップから冷めてしまったコーヒーを飲んだ。ドリップで淹れたハワイのLIONブランドである。遠くでチチチと可愛い小鳥の声がした。

『今回取り上げるのは、創作系YouTuberのホラー動画だ。まず昨年大ヒットして続編が書籍化されたという、どっかで聞いた話の、こいつを観てもらおうか。

 【不動産ミステリー】変な家

 9,318,060回視聴2020/10/30

https://www.youtube.com/watch?v=CBIL0eAwDs8

 注意警告!こっからネタバレ、ビシバシいくからな!

 ちゃんと事前に観とけよ。本だと全然読まないおまいらも、YouTube動画だったら大好きな筈だ!ふんふんシッポを振って喰らいつく間抜けヅラが目に浮かぶようだ!』

「だれもそんな暇じゃないでしょ。・・・でも、まぁ、いいでしょう。観てやるか。どれどれ」

 (幕間)
『どうだ、YouTubeにおける100万回再生の真の意味とは“100万人が観た!”ではないのだ。“物好きが百万回も観てやがる”が正しい。だって、大人は誰もヒカルもヒカキンも観ない訳じゃん。それが超大手とか適当に呼ばれるとは、認識の狭さ、世間の狭さに片腹痛いわ!栗原ひろみだわ!』
「なにを独りで騒いでるんですか。観ましたよ」

『・・・で、どうだった?』

「ふつうかな。・・・これ、どのへんがホラーなんですか?」

『うんうん。期待通りの反応をありがとう。

 ホラーというか、ぶっちゃけ、映画「ホステル」は本当にありました!みたいな謎解き話だよね。物語的には普通に“あるある”。虚実の狭間を狙った伝統の風姿花伝スタイル。都市伝説本とかエヴァ本とかに共通する、「すべての謎を解明する!・・・うん、わかった!だから、なに?」的な肩透かしとでもいうか。ちっとも凄くない真相究明というか。ネタとしては前段で振っといた森由岐子の例の問題作「怪奇!この家にはトイレがない!」、いや「魔性わらべの家」だっけ、あれと同じ話なの』

「はい。確かに」

『しかし、閑話休題、これを観て初めて分かったことだが、この世に見取り図マニアってのが結構いるんだな。笠井潔『オイディプス症候群』に小野不由美が描いた館の図面がある理由が分かった』

「え?どういうことです?」

『ほら、推理小説とかでさ、事件のあった屋敷の見取り図とか結構載ってるじゃない。実は作者がトリックを考えるために使った、単なる資料だったりするけどさ。初心者ほど、なんか深い意味あるのかと思ったりして、ついジッと見てしまうなんてことあるよな』

「実はまったく意味がないという()

『でも、その行為が段々癖みたいになってしまって、家の間取りとか館の見取り図とか大好きになってしまって、集めたり、つい自分で書いてみたりする。電車でいえば、Dみたいな時刻表マニアはそこから鉄道マニアになるけど、見取り図マニアは進化すると一級建築士を目指したりするのか?』

「あぁ、でも、鉄道マニアが本当にJRに就職すると最悪らしいですよ。余計な蘊蓄ばかり垂れてまったく兎に角仕事しないって誰か嘆いてた。確かに趣味で仕事しちゃいかんでしょう。当然だ」

『怪奇探偵のお前が言うな!!!』

「違いますよ、怪奇はボクの運命なのです(断言)。

 それにしても、これ、ぬるいよなー。風邪引きそう。でも、この動画は続編含めて書籍化されるてんですよね。果たして1,700円新刊の価値はあるのか。よし、お馴染みの秘密道具、読書メーターさんで測ってみますか。

 おっ、あらすじ掲載あり。これ広告コピーでしょ。問題なさそうだし、以下引用しとくか。

※(引用開始)

『あらすじ』

話題騒然!! 2020年、ウェブサイトで166PVを記録

YouTubeではなんと700万回以上再生!

あの「【不動産ミステリー】変な家」にはさらなる続きがあった!!

謎の空間、二重扉、窓のない子供部屋——

間取りの謎をたどった先に見た、「事実」とは!?

知人が購入を検討している都内の中古一軒家。

開放的で明るい内装の、ごくありふれた物件に思えたが、間取り図に「謎の空間」が存在していた。

知り合いの設計士にその間取り図を見せると、この家は、そこかしこに「奇妙な違和感」が存在すると言う。

間取りの謎をたどった先に見たものとは……。

不可解な間取りの真相は!?

突如消えた「元住人」は一体何者!?

本書で全ての謎が解き明かされる!

※(引用終わり)

・・・うん、なるほど。色々な方のレビュー参照しましたけど。ボク的には以下の感想が妥当な評価です。“あまり深く考えずに読んだほうが・・・”、至言ですね。

※(引用開始)

nadami30

不思議な間取りの変な家。荒唐無稽な憶測から、ある一族の因習へと繋がる不動産ミステリ。
読みやすい。
金田一耕助の時代ならともかく、現代日本の東京や埼玉を舞台にして戦前のしきたりを受継ぎ、素人の子どもが殺人を続けるのは、少し無理がある気がする…。
昭和の舞台にしたほうが良かったのでは?と思ってしまう。
あまり深く考えずに読んだほうが楽しめる和風ミステリ。

※(引用終わり)

ま、これレビューが的確な評価だってのは、まったく1ページも読んでもいないやつが勝手に言ってるだけの、根拠薄弱なエアー感想ですけどね!」

『酷い評価だが、ま、納得。妥当かな。怪奇探偵は、読まずしてその本の評価を言い切ってしまう特殊能力の持ち主なのか。連載以来ここまで続いてきて、初めて明かされる衝撃の真実だよなー』

 スズキくんは世にも爽やかな笑顔で微笑んで、

「はい、時間もカネも有限ですから。馬鹿正直一本でやってるだけで、怪奇な世間が渡れるもんか!」

『貧乏暇なしは私もおんなじだよ。でも世の中全般そうだから、これほどSNSが流行るんだろ。裏で金を毟られてるのに、気づきもしない馬鹿どもの間でな!なにがデジタル大臣だ!ふざけんな!人体にメカのひとつも埋め込んでみろ!

 家庭にファミコンしかなかった時代は、実は意外と裕福な時代だった。

 紙雑誌メディアが盛り上がった時代はまだマシだった。

 真にデジタル化とは、実は貧乏人の為の救済措置だったのかも知れないよ。スマホ1台で幾らでも暇つぶし出来るんだろうがよ。いいよな、お前ら!本当幸せなやつらだ!路上交通を妨害するだけのゴミクズ野郎どもが!』

「・・・いや、ソーシャルゲーム最高。毎日ガチャ引きたい・・・」

『では本論の動画のコメ欄から一本引用しておこうか。本気なのかね?』

yushy
0314

2か月前

これほんとにすごいです、、

まじで鳥肌、、

 怪奇探偵スズキくんはタバコに火を付け、静かに問いかけた。
「・・・結局あなた、誰かを相手に喧嘩売りたいんですか?」

『違うよ。正しい意見を言ってるだけだよ。長い年月に渡り、わしは沈黙を保っていたんだよ。自分が間違っているのかも知れない。世間のみんなが正しくて、わしは悔い改めて坊主にでもなって即刻反省すべきなのかも。そう思いながら耐えて、我慢して、水面下に沈んだ石ころのように黙って生きてきて、さらに、手術したり、豊胸したり、理不尽なハラスメントを受けたりしながら、LGBT問題に理解を深めたりして、流浪の果てにようやく真実が分かった。

 あいつらを野放しにしてきた結果、世の中、どんどん悪くなるばかりだったんだよ!

 ジャンジャン不景気になって、へんな病気も流行り出して、誰も彼もがおかしくなって、なにも良いことなんか無くなったんだよ!』

「・・・・・・・」

『ならば、言いたいことを自由に言わせてもらうぜ。それがオレのスタイルだ!世の中なんてクソだぜ。黙ってて損をしちゃった。キャハ💛』

「はァ。どうぞご勝手に。それでは、本来のレビューに戻りましょうか。

 プロの怪奇探偵として謂わせて貰いますが、やはりこの家、単なる設計ミスだと思うんです。失敗してる建築なんて、有名施工業者が請け負った地盤沈下を起こしてる某タワマン含め、星の数ほどある。そこをグッと拡げて、妄想詰め込んで膨らまして、ほら、ハリー・ケメルマン『9マイルは遠すぎる』って有名な短編ありましたでしょ?あれですよ」

『安楽椅子探偵の古典だな。仮想に仮想を重ねて、意外な真相を炙り出す。ま、単なるこじつけとも言うけどな!』

「あれが短編で書かれてるとこにポイントがあると思うんです。日常の平凡な違和感を膨らませて、架空の理屈でねじ伏せていくのは悪い切り口ではないけど、長くなるほどボロが出る。入口が平凡なだけに進むほど“そんなアホな!”感がドンドンつのって収拾つかなくなるんですね。オカルトってすべてそうでしょ。ほら、高橋克彦『総門谷』ですよ」

『あぁ、典型的なバカ小説だったな。劣化した半村良というか、もっとマンガで、内容壊れ過ぎてて1作目は結構好きだったが。敵が使徒と呼ばれ、なんでかキリストとかなんだよな・・・』

「エヴァンなんかとの元ネタのひとつですね。ダサいですね」

 スズキくんは再び、チャッチャッと引用した。

『総門谷』(高橋克彦) -
講談社文庫

初版発行:
1985

岩手県で1年間にわたり、UFOの目撃者が続出、そして奇怪な焼死体さえも! だが、このUFO騒動の裏は? 疑惑を抱く超能力者霧神顕たちは、怖るべきパワーの魔手と闘い、傷つきながらも、ついに魔の本拠・総門谷に潜入した。そこで目にした驚愕の光景とは? 構想15年を費したSF伝奇超大作。

「で、今回使いまくる読書メーターさん評価はこれで決まりでしょ!」

かつりん

ふた昔前の角川映画って感じでした。

『うん、的確だ。物事の理を解ってんな、かつりん』

「あんたの同世代の方だと思いますけどね。「総門谷」はバカ小説の典型として、最後は時空崩壊して万物リセットが起こります。広げた風呂敷たためなくなっちゃうんですよね。ケメルマンは賢かったということですよ。喋る程ボロが出る。ついた嘘を、更に規模の大きい嘘で上塗りしなきゃならない。バカのインフレ、『少年ジャンプ』の強いやつインフレと同じ理屈です」

 おやじは電話の向こうで溜め息をついた。

『ま、楽しいからいいんだけど。そればっか観てると、本当に頭悪くなって、最後は気が狂って死んじゃうぞ。「サメ映画大全」とか「人喰い映画大全」とか、本当にそう思うな。あれと伊東美和「ゾンビ映画大辞典」の格式の差について一度真剣に考えてみるべきだよ』

「嫌です。でも、まァ、わかりますよ。内容スカスカってことですよね。それは単に著者の技術レベルの差、情報量の格差なのでは?」

『いや、違うよ。真剣さが足りない!ってことだよ。バカと心中する覚悟の差というべきかね。
 まぁ、いいよ。今回の話はあくまでYouTubeだし、次はこれを観るのだ!』

とある一軒家で見つかった、不気味なビデオテープの真相

2,289,521
回視聴2021/09/24

https://www.youtube.com/watch?v=QboNR30zqPk

「ゲッ、長大化して49分もありやがる」

『うむ。最新作はストーリーテリングはこなれてきて、普通になってきてる。というか、Jホラーあるあるだな。呪いのビデオテープってネタが既に古臭いが。300万回再生も楽勝でいくでしょ、これも。まったくドノソの何倍だよ!』

「まだ、拘りますか()250万というのは、バブル期の松任谷由美のCD出荷枚数でしたね。紙メディアで唯一気を吐く『少年ジャンプ』も公称200万部から落ちてたみたい。これらは有償、無償の区別はあるから同一テーブルで比較し辛いところがありますが、でも実は、すべてのメディアは受け手の貴重な時間を浪費するという一点ではまったく同等なのです。これがスマホ普及以降の、娯楽メディアの真実ではないでしょうか」

◆参考記事:ジャンプ一強状態だが部数減少継続中…少年向けコミック誌の部数動向をさぐる(20201012)

https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20210314-00226269

(幕間)

『・・・やっと観たか。観終わったか。わしはタバコ3本消費したぞ。どうだった?』

「やはり、ふつう」

()

「確かに、だいぶ語り口がこなれてきてますが。そこは、まぁ、3歳馬の馬体重増は成長分ってくらいに理解しとけばいいんですが。それよか、あの。この話、そもそもプロット破綻してませんか。呪いのビデオテープ、部屋の四隅に張る必要まったくないですよね?」

『うん、無いね。別にやってもいいけど、必然性はない。趣味の問題()

「はい。そもそも実際リアルタイムで呪いの儀式を行うことが出来ないのなら、嫁の留守中にこっそりやればいいんではないか?
 この呪術法が実在するのかどうか知りませんが、たぶん白石晃士『ノロイ』の“かぐたば”的なものでしょう。架空だけど元ネタある系。民間伝承でこの設定なら、そもそも発生時点からして、呪う対象の部屋の中でこっそりやるたぐいの呪術だったと考える方が自然でしょ。最初っから、面倒なビデオ撮影なんてしないで全然済む楽な呪い方だった訳じゃないですか。
 なんでこんなに苦労してるんですか、真犯人?」

『うんうん』
「やはり、これって、設定のための設定なんですよ。まずビデオ貼り付けありきで、そこから話が組み立てられてるので、辻褄合わなくなってしまったんだと思う。残念。

 あと、ここは声を大にして言いたいんですが、ラストの恐怖落ちがあまりに弱すぎ。やばすぎるレベルでしょ」
『そうだね。しかし、ゾッとしたって人もいるみたいよ』

YouTuber

3
週間前

最後の電話で鳥肌が立った。

YouTubeでこんなに惹きつけられるのは凄すぎる。

間取りとミステリーのシリーズ好きなのでまた見たい。


佐藤はる

4週間前

「完」の文字が出た直後に来た得体の知れない興奮。どことなく不気味で、物悲しくて、でも凄く恐ろしい、上質な映画を見た時と同じ感覚でした。今回も素晴らしい物語をありがとうございます!

『・・・都合の悪い感想は全部削除してる疑惑()それくらい、溢れる絶賛の嵐!』
「オチの弱さは特に気になりましたよ、根っからのホラー好きのボクとしては。この後に、最後の呪術が動き出して恐ろしい効果を上げるようには、どんなに好意的に解釈したって、まったく見えないんです。なんか全員無事そう、無傷そう。それってホラーとしては致命傷、最悪でしょ。 前半の展開の中でね、もうホント、軽い扱いでもネタ振りでもいいから、テスト的に猫とか犬を呪殺してみせるとかさ、隣人が狂い死んでくれてもいいんです、なんか異様な事態がないと。肝心の呪法の威力が伝わらないじゃないですか。“この呪いが発動したら世界は終わり”くらいの、大袈裟な緊張感あるハッタリでもって強引に話を盛り上げてくれないと。観てるこっちはイマイチ消化不良で、おモロくないんですよ!」

『だから、寸前で怖くない怪談という新ジャンル。虚実の狭間でリアルを狙いすぎたのか?』

スズキくんは机を叩いた。

「いや、ないでしょ、リアリティ。あったら絶対こうはならないよ!所詮アタマで考えただけの話だよ!例えば里子に出された赤ん坊の気持ちが、お前に分かるのかよ、クズ野郎が!本当の親が誰だか全然分からなくって、大人になって真相聞いて、ただギャフンと言うしかなかった、あの日の苦い経験を、あの日の夕焼け空をボクは決して忘れませんからね!このカスが!」

『え・・・?そこ?!』

 古本屋のおやじは、収拾つかなくなりそうな空気を察して、素早くまとめに入った。

『“怖い間取り”とかね、“事故物件に住んでみた!”とかね。実話系怪談が因縁話で盛り上がるのは、結構なことだと思うんだが、小学校のクラスで流行った心霊写真本みたいで新味がない。
 ホラー好きと心霊好きは、実は凄く相性が悪いのかも知れないよ。心霊とかオカルト好きな人ってさ、世にも奇妙な怖い現象が起きました!ってその事実だけで盛り上がれちゃう人達でしょ。ムー大陸は実在してました!とかさ。

 ホラーはもう少し高級というか、怪奇現象のその先を探求しちゃうものだから。

 でも以下の感想にはちょっと同意しちゃおうかな。※
スタイルズクラッシュという名の乗り物に乗っているヨシハシ

3週間前

雨穴さんのスゴいところは、

"新しい小説家像"を生み出したところだと思います。

「小説思いついたけど自費出版するお金はない」という人の先駆者になると思う。

※ 
 ニューメディアの効能を説明するのに旧メディアを持ち出すのは、政府のバカ共の常套手段。カス野郎が。この動画の内容だったら、平山夢明なら短編でやれるんじゃね?しかも、そっちの方が上手いし怖いと思うよ。第一小説書きたいなら文章にしろよ。いらねぇんだよ、新しい小説なんてよ。
 とはいえ、ま、確かにこういう小説があってもいんじゃね?頑張ってね』

「史上最強に、心こもってないですね」

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2018年8月12日 (日)

ウィリス・H・オブライエン『黒い蠍』 ('57、ワーナー)

 大きな黒いサソリが暴れる映画に、『黒い蠍』とタイトルをつける人は天才じゃないだろうか。そういう短絡思考の愚直さが、この映画をなんとも憎めない、可愛らしいものにしている。
 話をすっきりさせるためにハッキリ名指しで言いますが、嘘にまつわる映画だから『ライアー・ゲーム』。これじゃダメなんですよ。全然ダメです。わかりますか。この違い。
 同じじゃん!

 【あらすじ】
 メキシコで火山が噴火した!地元じゃたいへんな騒ぎになるが、そんな激甚災害発生のさなかに、さらに巨大な危機が襲いかかる。巨大サソリの襲撃だ!

 以上これですべてを語り尽してしまった。この映画、一時間半以上あるのに内容はこれだけ。本当にこれだけしかない。驚くべきコスパの良さではないでしょうか。
 大河ドラマもスピンオフも結構ですけどさ、一本の映画を本当に面白くするのは、シンプルで力強いワンアイディアだと思うよ。ちまちました話にはもう飽き飽きだ。やっぱひと言で説明できないと。

 そりゃあね。これ1950年代のアメリカ映画でさ、巨大アリが暴れまわる傑作映画『放射能X』の国民的大ヒットを受けて製作されたムシムシ大行進映画の一本ですからさ、いちおう出涸らし茶みたいな人間ドラマはありますよ。火山の調査に行った博士が、牧場主の娘のくせ馬に乗るのがど下手(ホントすぐ落馬する)のグラマーちゃんと恋に落ちる、もうどうしようもない話が添え物でついてきます。
 随所に挿入されるこいつらのラブラブトークが本当頭が悪すぎて、観てると知能がグングン下がってしまって心底どうしようもなくなるけど、まぁ、いいじゃないか!気が利いてるつもりで空振りばかりしているハリウッド脚本術って、本当クソだよね。いや最高じゃん。

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 あと、サソリの顔だよ。造形悪くて不細工すぎてもはやシュールアートの領域に入ってるこの顔が、白い泡噴きながら何度もスローモーションで迫ってくる。もううんざり。
 すごいね。これこれ。この退屈さこそが映画の本質だと思うよ。

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2014年9月15日 (月)

リドリー・スコット『プロメテウス』 ('12、20世紀フォックス)

 きみはもうとっくに観てしまっているだろうから、何を書いても構わないだろ?
 僕は最近とても不自由な生活をしていて、片腕がうまく持ち上がらないんだ。パソコンの画面をONにしていても、Yahoo!ニュースしか観るものがない。潜水中の樽のなかにいるようなものさ。空気を吸うことしかできない。大渦に揉まれて。

 無駄口をやめて『プロメテウス』の話を。
 これは『エイリアン』の前日譚みたいな話で、ひさびさに一作目のリドリー・スコットが撮るとか随分盛り上がっていた映画。
 “遥かな異星で人類の起源が解き明かされる!”とか、わかっちゃいたけど、とんでもないデタラメさ。人類を創造した神らしき種族は、確かに出てくるんだけど、
 「なぜ、われわれを創ったんだ?」
 と問い詰めると、逆上してキレて暴れ出すし。アンドロイドは相変わらず悪いことしかたくらまないし。船長は異様に男気があってイオン・エンジン抱いて特攻するし。ヒロインは下着一枚で腹かっ捌いた直後に砂漠の平原全力ダッシュをキメるし。
 はっきり言って、観たいものが全部詰まっている。
 リドリーの生涯最高の出来だと思う。


 だって映画愛ってこういうことですよ。むちゃくちゃですもん、この話。子供でも頭おかしいってわかる。宇宙船が縦に倒れてくるとこなんか本当凄いですよ。大爆笑もんですよ。ドリフのコントを大予算でやってるんだもん。キレイごとばかり抜かす『アバター』よかよっぽど夢の映像ですよ。
 なにが凄いって、コレ、『エイリアン』のエピソードに繋がりそうで繋がらないんですよ。前宣伝と全然違うじゃん。書いてるうちに脚本家がテンション上がり過ぎちゃったんだろーね。
 「敵の星に乗り込んで、皆殺しだ!」って、ワクワクする夢のある幕切れになってる。アメリカ人ってのは何世紀経とうが変わらない人種だね。いまどきスティーブン・スティルス出してくるセンスも相変わらずだしね。
 そのくせ、「宇宙、超おっかねーよ!!!」というスタンリー・キューブリック主義を全編に貫いているところは素直に好感が持てます。

 「宇宙、超怖ぇーーーよ!!!
 だって、空気が全然ないんだぜーーー!!!」

 
 この発言にうなづいた奴だけ、観に来い。そういう映画です。

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2013年9月21日 (土)

『盲坊主対空飛ぶギロチン』 (’77、ドラゴンフィルム)

 (SKYPE経由のYさんとの会話。)

 「盲坊主ってわかる?座頭市のことなんだけど。」
 『・・・ひでぇね。』
 「座頭市のくせに、中国人って設定なんだよ。5年前に日本の海賊に攫われて行方不明になった男。そいつが故郷の鳳凰村に帰ってくると、すっかり盲の按摩姿になってるの。変わり過ぎ。
 そんな変人が兄の仇やら義理の姉やらと擦った揉んだの末、空飛ぶギロチンと対決するんだ。』
 『あんた、その映画の存在、どこで知ったわけ?』
 「ドラゴン系の雑誌やムックに情報だけは載ってたんですよ。でも、確かに、現物が国内発売されるとは予想してなかったなぁー。遭遇したらもう観るしかない。そういうことになるじゃないですか。」
 『ふーーーん。で、結局面白かったんだ?』
 「微妙。
 画質も音声も最悪だし。そもそも、市のコスプレして無理やり白目剥こうとしてる(でも結構黒目がちな)男、そもそも勝新太郎じゃないですし。」
 『・・・へ?!』
 「日本のそっくりさんが主演。クレジット表記は“勝新太郎(そっくりショー)”。」
 『えっ?ソレってありなの?』
 「中国のディズニーランド方式ですよ。昔、台湾版のドラえもん単行本とか見たことない?手描きで模写が酷くて、オリジナルと化しているという。」
 『フツウ知らねぇよね、そういうの。普通に生きてるとね。』
 「あ、そう。
 話は30分のTV番組レベルだし、でもアクションシーンは割りとちゃんと演出してるし。飽きずに観終えることができました。ジャンル映画の残り滓の底力を感じる。お馴染み、空飛ぶギロチンもちゃんと出てきて活躍するし。鳩を落としたりとか。」
 『空飛ぶギロチン、お馴染みじゃないよね。明らかに。』
 
「そう?
 赤い中国帽の内側に刃物がザクザク仕込んであるキテレツ兵器なんだけど。投げつけて、スポッと相手に被せて、首を捥ぐっていう。内気な鎖鎌みたいなもんですよ。」
 『見たことないね。
 俺は武侠派の出身だけど、そんな武器使うやつ、まず見たことない。』
 「でも、一番びっくりしたのは、このDVD、売れ残りが中古屋に流出してきたのを拾ったんだけど、シュリンクかかってて未開封だったの。
 開けたら、ケースの内側に真樹日佐夫先生の小型ブロマイドが二枚も混入してあったんだよねー。思わずびびった。」
 『Oh、マキ!!×クザ!!』
 「普通なら絶対出せない筈のこういう映画のDVDがポロッと出てくるところに、未だ衰えを知らない、マキ先生の底知れぬ黒いフォースをビシビシ感じるよねー。
 素晴らしい。」

 (こういう会話が明け方5時まで続くのであった。以下略。)

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2013年9月11日 (水)

『蠅の王』 ('90、M.G.M.)

 いま観ると、フツーにいじめの話だなぁー。

 素朴な感想で申し訳ないが、「人間の内面に潜む闇」とかさ、キレイ事はもういいでしょう。2013年ですし。ゴールディングの原作小説、1954年ですよ。
 ガキってのは 放っとくとそこらに小便するし、セミ喰うし、女教師のパンティーの一枚も盗むような生き物ですよ。最低。でもそれが表沙汰にしにくいけど真実。

 それでも、この原作の「秩序のタガが外れた人間集団が何をしでかすか?」という一大テーマの発見は、本当に賞賛に値するものだったと思う。
 マンガでは『漂流教室』から『悪霊』『ドラゴンヘッド』に到るまで、映画では『食人族』『世界残酷物語』やら『ゾンビ』やら『ニューヨーク1997』『マッドマックス』まで、その発見の延長線上には巨大なマーケットが広がっている。
 オレは優れたヤマ師と見たね、ゴールディング。敬称“サー”がつくヤマ師。大英帝国にはいっぱいいますよね、そういう人。

 '90年の映画版は、そういう有名な原作の二度目の映画化で、割と忠実に原作の雰囲気を再現してくれてる気がします。(ごめん、中学の頃、集英社文庫版読んだっきりなんだ。勘弁してくんろ。)
 それでも、救難信号代わりの烽火に気づかず沖を無情に通り過ぎていく汽船が、映画ではヘリコプターになってたりとか、あと、たしか原作は実はSFで、第三次世界大戦の渦中に子供たちを疎開させる輸送船が遭難という設定だったのだが、今回の映画はそのへんまるっきり無視・・・だとか、細かい違いはあるにはあるが。
 まー、おおむね、こんな話ですよ。間違ってない。無責任に断言。
 さぁ、TSUTAYAで借りてきて、読んだ気になろう!

 ひとつ不満を。
 獣性も暴力も、野蛮への退行も描かれている『蠅の王』だが、無人島での少年たちの性生活はどうなっていたのか。実はあんまり描写がないんだ。
 絶対何かなんかあったと思うんだけど、それを正直にルポしていたら、ゴールディングはノーベル賞作家になれてなかっただろうし。ま、しょうがないさね。
 その欠落箇所を網羅した『蠅の王(完全版)』を次の冬コミに出品してくれるサークルを大募集します!がんばれ!時間はもうないぞ!

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2013年8月31日 (土)

テレンス・マリック『地獄の逃避行』 ('73、ワーナー)

 マリックさんが超魔術を駆使して、かのチャールズ・スタークウェザー事件を実写映画化。ちなみにマリックさんは百年に一本しか映画を撮らないので業界では幻の映画監督として恐れられています。で、これがそんな男のデビュー作。うひょー。
 今回ネタになってるスタークウェザーってのは、名前こそなんか80年代アニメっぽいですけど(『光子力原潜スタークウェザー』主題歌ア×フィー)、アメリカ殺人史に残る連続射殺魔さんのことですね。知ってんだろうけど。悪い人だよ。すごい悪い。憧れちゃダメよ。

【あらすじ】

 清掃局に勤めるキットは、とにかく人を撃つのが平気な男。朝鮮戦争に行ってそうなった。
 この特技を活かそうと、常に極限まで自分を追い詰める選択肢ばかりをチョイスする習慣を身につけることを決意。安寧なんか全部敵だ。コマンドーを見ろ。プレデターを見ろよ。奴らは毎日危険と向き合って生活してるんだぜ。
 危険だけがオレを輝かせるビジネスだ。
 手始めに道端でバトンを廻して遊んでいた15歳の女子中学生をナンパし処女をいただく。わお、リスキー。しかもその女がシシー・スペイセクだっていうんだから豪快だ。

 「カノジョがキャリー。」

 もう、これは職場でも学校でもモテモテの超人気ですよ。男子限定だけど。
 「エ、マジ?マジやってんの、あの女と?!」「スゲエ、よくできるなー!」
 「なんか勇気をもらっちゃいました!」

 こういう会話が飛び交う。しかもキットはジェームス・ディーンみたいな男の子として近所でも定評のある二枚目。この時点で凡人の理解をまったく越えている。
 カノジョの父親が交際に猛烈に反対してくると、面倒臭いのであっさり銃で射殺。おやじの職業は看板描きなんだけど、演じてるのがペキンパー『ガルシアの首』でお馴染み悔しい顔させたら世界一のウォーレン・オーツ。ホール&オーツの片割れですね期待通り今回も飛び切り無念そうに死んでくれます。
 そのまま奪ったおやじの車で逃亡。キャリーはなんかショックなんだかボケッとしているので、「一緒に来る?」と誘ったら附いてきた。変な女だなぁー。

 逃走資金なんか全然ないので、近所の河ッぺりに小屋をつくり、畑のメロンを盗み食いしたりニワトリをパクってきたりして、ガキ大将みたく隠れ住んでいたら賞金稼ぎ3人組に見つかっちまった。しかし、そこは従軍経験者。かねてより準備済みのブービートラップを駆使して返り討ちに。
 最後、逃げる男を迷わず背中から射殺。キャリーが質問する。
 「それ・・・なんか、ちょっと反則っぽくないですか?」
 「そこがいいんだよ、全然わかってねぇなぁー!」

 キットは'71年アカデミー賞5部門制覇した『フレンチ・コネクション』にかぶれていた。時空を飛び越えポパイ刑事に憧れていたのだった。やれやれ。

 でも、そろそろ此処もやばくなってきたんで、清掃局時代の知り合いの家に相談に行く。友人もやはり清掃局から足を洗いブタ飼いに転職していた。なかなか凄いチョイスだ。一生モテとは無縁だろう。さすがオレ様のダチ公と勝手に大絶賛。
 だがあろうことか、やつは裏切り通報しようとしやがった。チクショウ。射殺。
 偶然その現場へ訪ねて来た知人らしき男女ふたりも、地下の蔵に閉じ込めると二三発盲撃ちにして片付ける。行きがけの駄賃だ。とにかく銃弾を惜しみなくバラ撒く男を、中3の女はボケッと見ている。
 愛ってそういうもんなのかなー、とか思いながら。父親が死んでも泣かないんだこの女。

 キットは金持ちの家を襲ってキャディラックを奪い、州境目指して荒野へ出発。ちなみに此処はテキサス州。あぁ、やっぱりね。
 道なき乾き切った平原を突っ走る。途中で、だんだん逃亡に飽きてきた女(キャリー)と険悪なムードになるが、そこはそれ、セックス三昧でネゴシエーション。
 でも、さすがにアメリカは広い。キャデラック1台じゃ走りきれない。
 何日も走って、「いい加減お風呂入りたぁーい」とかブータレられ、逃亡もロマンもだんだんアホらしくなってきた頃、汽車が見えた。貨物列車はラクダの隊商のように揺らめく地平を通り過ぎていくのだった。乗りてぇなぁー。でも近づいてみると、只直線の鉄路が引かれているばかり。地平線まで停車駅の姿なんか見えず。汽車はさすがに丘蒸気じゃないし、超スピード出してるから、ホーボーみたくタダ乗りなんて出来ない。
 あぁ、もうグッドオールドデイズじゃないんだね。
 そういう諦観と郷愁がアメリカンニューシネマの時代にはしつこく漂っている。疲れと諦めの心地よい空気。夜更けにラジオから流れ出したナット・キング・コールに合わせてふたりが踊る場面は、なんかそんな感じだ。逃亡不可。あとは捕まるだけ。

 ここ数日碌な食べ物を口にしていない、と愚痴る女にキットが言う。

 「街に着いたら、ビフテキ食わせてやるよ・・・だからさ・・・」
 「あたし、ビフテキ嫌い。」

 ※註・ビフテキというのは戸田奈津子先生の名訳。うむ時代。

 荒野で油田を掘っていたおやじを襲撃したら、警察のヘリに見つかった。ハイウェイパトロールがサイレン鳴らして飛んでくる。拳銃の名手のキット、格好よく警官を次々と射殺。
 「逃げるぞ!車に乗れ!」
 「イヤよ、あたし、行かない・・・」

 ここでのキット役、マーティン・シーンのガッカリ顔は生涯最大の名演技。
 「わかった!一年後、サンフランシスコの港が見える丘公園の桟橋のたもとに来い!必ず迎えに行く!」
 「そんなややこしい名前の場所、覚えられないわ!」

 しらけてキャディラックに単身乗り込むキット。
 不細工にふられた。
 不細工にふられた。
 もう、ダメだ、オレ。

 砂塵を撒き散らし追撃するパトカーと派手なカーチェイスを繰り広げるも、胸にポッカリ空いた穴を塞ぐ手段はないのだった。キットは自首するかたちで投降。護送の警官やら兵隊に大人気となるが、落ち着いた先は誰もいない特別収監房だった。つまらん。

 キットは特に反省することもなく、半年後、電気椅子で処刑された。
 未成年ということで、反省文百回書くことで保釈となったキャリーは、女子高に通うことを許されたが、その高校にはトラボルタとブタの血が待ち受けていたのだった。ちゃんちゃん。

【解説】
 
 マリックさんといえば、マジックアワー。
 マジックアワーとはハッピーアワーによく似た習慣で、野外で映画を撮影するのにもっとも適した時間帯、夜明け直前か日没直後のことを指す。光線の具合がいいそうだ。
 しかし、そんな時間帯にしか事件が起こらないというのは明らかにウソなので、マリックさんが本当は何を言いたかったのか、オレはいまひとつ理解できないでいる。
 だから、なんだ。

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2013年7月31日 (水)

ダン・オバノン『バタリアン』 ('84、HEMDALE FILM Co.)

 『ウォーキング・デッド』原作版の4巻が出ているのだけど、まずは反則ゾンビ物の原点『バタリアン』から話を始めよう。これはジャンルの分水嶺に位置する重要な作品なのだけれど、リニア・クイグリーの墓地ヌードであるとか、オバンバの手術台ヌードであるとか、もっぱら裸絡みでしか語られない不憫な作品だ。

 「どう観ても真面目につくっていないのがバレバレ!!」

 ・・・という誰でも解る事実が決定的にまずかったのかも知れない。
 子供でもわかる不謹慎さ。あと、80年代ならではの致命的な安さを感じさせるサントラ(クランプス参加)や、パッとしない役者陣にも責任も一端は求められるだろう。
 今日でも誰もがロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が後世の数多いホラー映画に与えた影響について過剰に評価し褒め称えている。だが、その正当な続編を名乗る正統派ゴミ映画『バタリアン』の映画史的意義を真剣に問う者はいない。ま、そりゃバカだからね。
 だが、しかし。
 それでも、オバノンの一発ギャグみたいなアイディアの閃きは、重なる悪条件を見事に乗り越え、世界ゾンビ映画史を決定的に塗り変えてしまったのだった。私見ではあるが今日くだらないゾンビ映画が山と氾濫する状況が生まれたのは、ロメロの所為ではなく、すべてオバノンの責任である。
 悪いのは全部オバノン。ゆえにグレイト。
 
 まず、この映画は一般的に見地からみて、全速力で走るゾンビの元祖だ。
 (え、ウンベルト・レンツィ『ナイトメア・シティ』?あれは80年だって?ひとつ聞く。誰が観るんだそんなオタク映画?金曜ロードショーで水野晴郎が解説できるのか、ソレを?)
 蘇った最初の死体が社長目掛けて全裸で全力疾走してくるツカミは、あまりといえばあまりに最高にくだらなくて、カラダ張ってる感じがして大好きな名場面なのだが、そのうちゾンビたちは洒落にならないくらい高速で、100人規模の集団マラソンを開始。ダーーーッと波のように犠牲者に襲い掛かり喰らい尽くす。これは怖い。絶対に逃げられない感じがする。
 だから、比較的近年の『28日後・・・』もリメイク『ドーン・オブ・ザ・デッド』も、ロメロではなく、『バタリアン』に直接の影響を受けているものとして考えるべきだ。ロメロ無罪。
 予告編を見る限りブラピ主演のゾンビ大作『ワールド・ウォー・Z』にしてみても、所詮は規模のでかい『バタリアン』に過ぎない。街路に溢れた人間山脈が崩壊するさまとか、まさに名ゼリフ、「もっと救急車を寄越してくれ!」が似合いそう。
 
 さて、さらに言えば、これは喋るゾンビの元祖である。
 オバノン版の生ける死者は、割りと気軽に口を利く。まぁ、トークの大半は「脳みそをくれ!」という心底熱い青春メッセージを伝えるに留まっているワケだが。無駄口叩くぐらいは余裕っぱち。ギャグも飛ばす。「もっと警官隊を寄越してくれ!」
 だが、それでも手術台に半身を固定されたオバンバが泣きながら語る死者の苦しみ、絶え間ない激痛と飢えの思想はインパクト絶大で、そりゃ人間襲うよな、脳みそ喰うよなと変に納得させてくれる。
 蘇った死者が口を利く。
 このへんは迂遠に直接にたぶん、黒沢清『回路』に影響を与えているのである。
 かのドラキュラ伯爵を始め、喋る死人というのは映画史に事欠かないが、死んでいることの状況説明を細かくやった人はあんまりいない。だいたいが死者は現世への執着を語り、生前の恨みつらみの言及に終始して、本当に重要なことを語り損ねるようだ。
 死んでいることの不思議さ、生きていない状態の意味。
 オバノンはかなりくだらない方向で死者の蘇りに動機を与えた。これは賞賛されていい。ロメロは死者が人間を喰う現象を敢えて説明しようとはしないだろうから。
 (ロメロ的に言えば、“あれは、ああいう生き物なのだ。死者だけどね(笑)”)
 
 第三に、これは『博士の異常な愛情』から脈々と続く、爆弾一発ですべてが台無しになるガッカリな映画の系譜に連なる作品である。人類皆殺し映画といってもいい。
 「あぁ、コレって・・・」と思って観ていると、ほらやっぱりアレだ。ヴェラ・リンだ。「また逢う日まで」だ。「あの素晴らしい愛をもう一度」だ。(ちょっと違う。)
 事の善し悪しはともかくとして、『渚にて』でも『続・猿の惑星』でもなんでもいいが、「全員死にました」という結末は反則に近いハッピーエンドなのである。“彼と彼女が結ばれて末永く幸せに暮らしました”的な、ありふれたハッピーエンドより正味の幸福度数は高いのかも知れない。本当のところは水木先生にでも聞かないとわからないけれど。
 いずれにせよ、こういう皮肉極まる反則、真面目な映画制作者は決してやってはいけない。面白い映画をつくろうとするすべての努力がオジャンになる危険性が高い。

 あと、爆弾一発に関連して『バタリアン』は、これまた50年代のモンスター映画から、『ピラニア』『殺人魚フライング・キラー』、フランク・ダラボン『ミスト』に到るまで、果てしなく受け継がれている伝統芸能の如きおハコ、「軍がなにやら怪しい実験を繰り返していて、罪もない一般大衆がその巻き添えとなる」パターンというのが挙げられる。
 これもまた不毛なジャンルだ。
 異次元の壁を越えようとしたり、先史時代の生物を蘇らせたり、スターゲートを開いたり。軍人というのはよほど暇なのか遊んでばかりいるようだ。これで国家から金が出ているというのだから実に結構な話だ。
 もっとも90年代に入り、アメリカ経済も破綻。レニー・ハーリンの『ディープ・ブルー』なんか、政府の助成金を打ち切られそうな科学者が四苦八苦しながら水中ショーを展開する、夏休みに品川水族館に行った子供の絵日記みたいな話になっていた。

 以上ダラダラ書き連ねた話など全部忘れて貰って構わないが、最後にひとつ。
 『バタリアン』は日本語吹き替えの方が面白いんじゃないかと思う。かつてTVで観た同世代の諸君は同意してくれるんじゃないかな。
 まったく深みを欠いた、表面的で軽すぎる内容は、ホントTVによく似合ってると思うよ。

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2013年7月 7日 (日)

ジョージ・A・ロメロ『サバイバル・オブ・ザ・デッド』 ('09、プレシディオ)

 「父ちゃん、ゾンビが馬刺しを食べたよ!」
 ですべてを解決しようとする無茶な映画。
 混乱気味の脚本はロメロ先生本人が手掛けているワケだが、どうやら「人肉を喰わないゾンビ」という画期的な新概念を主軸にストーリーを組み立てたかった様子で、そのぶっ飛んだ発想にどうも凡庸な俗人はついていけず。(「そりゃ普通に人間じゃん!」という言ってはならない身も蓋もない突っ込みあり。)ゆえに評判いまひとつ、ロメロもガックシという残念な事態になって終わったようだが。
 甘い。
 お前ら、全員甘い。吊るし首。
 批評自体は辛いが、考えてる内容が甘いんだよハッキシ言って。結論がなんだかわからない?それこそがロメロ先生独自の視点で捉えた現実ってもんじゃないですか。この映画における議論の混乱は現実をそっくり反映してるんですよ。一本の正論がすべてを総括する時代なんてもうないんだよ。多段階選択方式じゃないですか。いつも常に。なんだって。
 そう思いながら観ると、やっぱり面白い、いつも通りの定番ロメロ映画でしたよ。何の不満があるんですか。え?「なんで島に着いたら西部劇なんだ!」って?
 ロメロは携帯が嫌いなんだよ。
 「携帯持ってるやつは全員ゾンビに喰われちまえ!」って心の底から思ってるに違いないんですよ。だから携帯通じない離島が舞台なの。そんだけ。(ネットは可とするらしい。)
 前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』はロメロの自伝でしたけど、今回はロメロのエッセイ。随筆です。お題は現代社会について。現代が嫌いだから、敢えてオールドハリウッド調の西部劇出してくるの。いつもの分かり易い皮肉ですよ。嫌味。シェー。
 
 確かにこの映画は混乱しているが、その混乱はなんだか愛すべきものに思われるのであります。

 
【あらすじ】

 首都圏でのゾンビ発生事態から逃げ出し、田舎は安全なんじゃないかと超甘い考えで街道を爆走する兵隊たち。女兵士なんて登場すると同時にオナったりして、露骨に緩んで退屈している。
 と、そこへネット経由で怪しいおやじの出ているCMが。

 「この島へ来ればゾンビもいない!安全!ハッピー!最高!もうギンギン!
 桟橋まで来てワタシを探してみてください、ヨロシク!!!」


 ブルワーカー、ビリー・ブートキャンプの昔から怪しいおやじの出ているCMは誰が信用するんだコレって胡散臭い空気を漂わせておりますが、不思議とみんな買っちまうんだ。これが。
 百戦錬磨の筈の彼らもコロリ騙されやって来ました港町。美空ひばりのゾンビが『悲しい酒』を絶叫する歓迎ムードの中、前門のゾンビ、後門に地雷原が出現!こりゃたまらんわい、とフェリー逃げ出すと、航海すること5時間で問題の島に着いた。ホントにあったんだジュラシック・アイランド。
 襲い掛かる恐竜の群れを退治しながら、アトラクションの出口を探す兵隊たちを馬に乗った美少女ゾンビが襲う!ってまぁ、全速ダッシュで集団中央を突破されただけですが。さすがアメリカはススんでる、馬を駆るゾンビなんてJ・R・Aにもいませんよ。
 とそこへ、さきほどのゾンビと同じ顔の女の子が現れて、

 「バァーーーッ!!!
 実は、あたしら、双子でしたーーー!!!」

 
 って禁じ手には、正直どうリアクションすればいいのだろうか。教えてロメロ叔父。
 その後事態は加速度的にグダグダになって行き、最終的に主人公以外の連中はなんらかの事情があってバタバタ死んでしまい、「あー、たまに休みが取れても島なんか観光するもんじゃねーな、死ぬほど不便だし」と観客も同様疲れ切ったところで終了。
 
【解説】

 撮影をSuicaに任せたところに、ジョージの現代批判精神を感じる。確かにSuicaは便利だが、なにもカメラまでワンタッチでなくてよさそうなもんだ。でも限度額までチャージできます。最高。
 

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2013年5月14日 (火)

『グラインドハウス予告編集Vol.1』 ('13、HIGH BURN VIDEO)

 世の中には知らなくていい映画というのが山とあるのであって、例えば大量に予告編を詰め込んだこのDVDを観れば、きみにもそれが伝わる筈だ。

 例えば3人の赤タイツ姿のスーパーマン達がトランポリンを駆使してぴょんぴょん飛び回りながら敵を倒す、という人間の忍耐の限界を越えて愉快な映画。
 笑いながらアクションする彼らのバカ丸出しの姿を実際に観て貰えれば、私の疲労感も多少お分かりいただけるのではないか。馬鹿げたトリック撮影で天井を得意げに歩いたり、にせカンフーを披露したり、敵が安いゴールドフィンガーっぽいのもがっかりポイント。見事だ。絶対観たくない。
 あるいは、クリストファー・リーが「徹子の部屋」よろしく、われわれに直接語りかけてくるスペシャル映像も収録されている。なにをって、怖いことをだ。決まってるじゃないか!アホタレ!
 そういう間抜けな諸君を救済するために、本ディスクは豪華日本語字幕を特別収録!!まさに画期的な仕様である。これほど訳しがいのない内容はない。
 編集者の無駄に深い愛情を感じる。

 あたしはかつて「SOMETHING WEIRD」が出した予告編集で、動くモール・ピープルやら世界に挑戦したカタツムリやらを実際に観て感激したことを憶えている。考えてみればあれもVHSだったのだな。
 時間はいつの間にか経ってしまうってことだ。
 これらは本当に心の底から碌でもないが、われわれの血肉の重要な一部だ。

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