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2022年6月19日 (日)

怪獣ウラン (1956、X THE UNKNOWN、ハマー・プロ)

 意識を持った泥が人間を襲うドロドロ・パニック映画

 そんなもの正気で観たがる奴などいるだろうか。

 泥っぽいところで、昔トロマビデオで『悪魔の毒々モンスター』ってのがありましたが、あれは廃液で溶けて変形した人間だからね。同じハマーでも『原子人間』の系列。サム・ライミの『ダークマン』か。ジョーカーと同じ製造方法。人体改造、フランケンシュタインの流れですよね。

 『コロッサス』のマニング大佐も含め、人間が変形するモンスターには、人間的悲哀と喜怒哀楽とお色気があります。巨人獣と化したマニングがマンション窓からブロンド美女の入浴シーンを覗く場面を思い出してみて。あれ、人間だから成立するんであって、単なる泥じゃねぇ。

 しかし。

 泥がこっちを見ている。しかも、その泥が勝手に動いて、人間を襲ってくる。

 これって、かなりの確率で怖くないですか。ホラーじゃないですか。生命のない筈のものが意識を持って動く。ロボット物って全般そうだけど、あれはまだ人型ベースだったりするからねぇ。機械が動くのはまだ理解の範疇。意味が解る。動くように作られているんだから、そりゃ動くだろ。

 でも動きとまったく関係ないものが突然動き出したら、こりゃホラーですよ。本気で怖いですよ。意味わからんもん。私はレムの『大失敗』を連想した。究極の恐怖かも知れない。非生命に襲われるのって。

 放射能を帯びた被爆泥がさ、勝手に動き出して人間を襲う。ジューッと溶かしちゃう。で、泥に接触した人間が骨だけにされる、かなり呑気な残虐描写とか本作にはあって、そこが冒頭に映る、かの「この作品には過激で残酷な描写が含まれます!閲覧注意」テロップの要因になっているようなんですが、そんなこと言われてもねぇー。そこはホラ、『ウルトラQ』で放送できるレベルでお約束の範疇であって、血は出る、脳天に杭は打たれる、腕やら足は切り刻む。残虐の極みに達した現在の視点から見れば、ま、幼稚園レベルで生ぬるいものなんで、好きな人はかえって微笑ましく思えちゃうんでしょうけど。(主役の博士の見事なハゲ頭の方がよっぽど凶悪である。)

 でも、ここまで泥ネタ押し。

 あくまで、泥こだわり一辺倒。

 もう、煎じ詰めれば、すべて、泥ネタしかない!

 泥一発でここまで見せきる泥オンリー主演の映画がある。一時間半かけて大の大人が泥いじり。脚本ジミー・サングスター本気の泥チャレンジ。脱ぎも爆破もクソくらえ。泥こそはすべてだ!
 こういう、まったく観なくていい傑作に出会えるんだから、映画界もまだまだ捨てたもんじゃない。
諸君に言っておきたいが、見たい映像を見るだけが映画じゃないんだ。なんていうか、観たくないものを見せられる。そういう体験は非常に大事だし、これからの人生の糧となるんだよ。一回観たらもう衝撃もないような、ちょろいCGよか、動く泥ですよ。内部で水流して動かしてるのかな?

 

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