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2021年10月26日 (火)

雨穴「とある一軒家で見つかった、不気味なビデオテープの真相」 2,050,876 回視聴2021/09/24

墓碑銘2021年―――。

災禍の年は粛々と進んでいた。昨年から空前の猖獗を振るったコロナウィルスは、真夏の感染爆発のあと、専門家も首を捻る謎のフェイドアウトを遂げ、列島各地を襲っていた中規模地震の不可解な連鎖は突如10月首都圏一帯にも及び、かの震災以降の交通機関の大混乱と共に広域に水道管被害を齎した。
 われわれが記憶しておかなくてはならないのは、皇族の異常婚礼でもなければ、安直な政権交代でもない。人類が直面する真の恐怖はまだその深淵の顔を僅か一端しか覗かせておらず、本当の地獄はこれから到来するということだ。

いまはまだ大破壊の前夜、世界は真にこれから破滅するのだ。
 
 そんな平凡なある日のこと。
 怪奇探偵スズキくんは一本の電話に起こされた。
「はい・・・怪奇探偵事務所ですが・・・」
『ハロー、ヤングボーイ』
 相手はよく知った口調で話しかけてきた。
『きみが、GW以降に来ると言ってなかなか来ないのでね。こうして自ら呼びに来たのだ』
「・・・だれ?借金取りなら間に合ってますよ。こちとら、去年から碌な仕事も無くって腐ってるんだ。おととい来やがれ、バカヤロウ」
『こいつはご挨拶だな。せっかく新しいネタを持って参上したんじゃないか。きみ、怪奇現象はまだまだ終わっていないぜ。謎は深まるばかりだ』
 スズキくんはボリボリ頭を搔いた。
 カーテンの向こうから新鮮な光が床に零れ落ち、日野日出志『恐怖怪談!!ぼくらの先生』の表紙を照らしている。
「いいですか、古本屋のおやじ」
 電話の向こうの相手は明らかにギクリとしたようだ。
「あんたとこうして漫才ごっこを始めてからもう何年になるか忘れましたが、その間に時代はドンドン進んでるんですよ。ひばり書房版を昨晩読んでた日野先生の『ぼくらの先生』だって、Amazon Kindle版が発売されてるくらいだ。それを知ってある意味ビビリましたよ」

恐怖怪談!!
ぼくらの先生1 Kindle

学校中から慕われている大仏先生。その周りでは何故か不可解な出来事が多かった。それでも生徒たちは先生に信頼をよせて、先生自体もより良い先生であろうとしていた。だが、大仏先生の過去には恐ろしい秘密があった……。表題作「ぼくらの先生」をはじめ、ナマズを寄生させて共生し利益を得ている少年の「おーいナマズくん」など日野日出志先生の魅力あふれる怪奇ファンタジー作品群。

『うん、それ実は日野先生の第一作品集「幻色の孤島」そのものだからな。実にエモくね?得も言われず、エモくね?』

「無理やりエモくなくてよろしい。電子版はフルコピー3分冊されていて、一冊当たり¥110
Kindle
価格にて読めるんです。獲得ポイント:
1pt
貰えます。ところがですよ、書籍は古書価格がバカ高くて、メルカリで¥44,444(税込)
送料込のぼったくり価格で出品しているバカがいた。絶対買っちゃダメですよ!」

『ふむ、虫プロ版はまんだらけで、¥3,800、ひばり版は¥3,000か。古書なんて所詮言い値だからな。それでも相場があるのは一定のマーケットが存在する商品だからだよな。知らん奴にしてみりゃ10円貰ってもいらん代物だろ。我が家でも家内がよく表紙にパンチをくれとる』
「ケッ、物の値打ちを知らない腐れ外道どもが。しかし、日野先生は著者と直接版権交渉できるから良いとしましても、作者行方不明で、再版のあてもないひばりは軒並み高価ですな。森由岐子ですら高い」

『あー。それ。それ言う。見事にフラグだよ、今回のテーマの』

 スズキくんは首をかしげて考え込む。

「へ・・・?!」

 

 咳払いした古本屋のおやじ、前説を続ける。

『日野先生が電子書籍化されるなんて誠に驚愕だが、考えてみれば内容もしっかりしてるし、文学的エッセンスもあるし、ファンシーな童話や寓話的な要素もふんだんにあるし。現代のよい子が読んでも一応問題なかろう。ま、日野先生には美しい奥さんを欲望から絞殺して死体をバラして薔薇の堆肥にする定番アブノーマルな話や、世間に理解されない恨み・つらみ・鬱憤に駆られて漫画編集者を衝動的に惨殺し、一部始終を目撃した読者に対して斧を投げて殺害しようとする異常な話もたまにあるのだが。セーフ。常識の範囲。問題ない。ギリ安心だ。子供が読んでもだいじょうぶ!』

「・・・そうかなァ・・・?」

『それよか、現在お読みの「神秘の探求」という無駄ブログ。今どきパッケージメディアに拘り続け、紙やら本やらディスクやらと心中しようと偏愛、収集を重ねてきた、この上なく悲惨な闘争記録であるのだが、正直もう限界なの』

「エッ?!」

『最初のこころざしは破綻崩壊、建物倒壊した。原因は収納スペース。もうこれ以上入らねぇ(泣)このままだと床が抜け落ちる。フロア崩落により死亡する。かといって収集の為に貸し倉庫やストレージボックスを借りる資金なんか無い。残念だが、俺は諦めた。神々の黄昏、地獄に堕ちた勇者ども。泣く泣く積み上げた財産を処分するしかない、ハムレット的状況に立ち至ったことを諸君に告げる。アドルフに告ぐ。ホレイショ、お前もか

「いや、それブルータス。BRUTUSって雑誌が昔ありましたよね?いや、そもそもコレクターの末路なんてのは、最初から分かり切ってたことじゃないですか。ボクなんか2,000冊積み上げて、一気に売って、また買い戻す。人生とはその繰り返しですよ」

『オレは気が小さいんだよ!ただ実際売ってみてわかった、くだらんもんが古書価格上がったりするんだな。同時代で体験した読者にしてみりゃ、物好き以外にはゴミだぜ、山尾悠子「仮面物語」なんか』

「あー、あー。作者が再刊を許可してない系ですね。出す出さないで本人Twitter書いてましたね」

『うむ。あの頃小松左京(豚)がなんでか褒めたりして、当時は星雲賞だか日本SF大賞の候補だかにもなってたような気がする。どこがSFなんだよ豚!でも、あれ、意外と買取高かったぜ。嫁が喜んでた』

「山尾をですか・・・()

『うん、山尾高評価()・・・いや、そういう話じゃないんだ。というわけで、今回はYouTubeやるぞ』

「え?」

『パッケージメディアはもう限界だ!!今どきそんなクソみたいなもん、集める奴はバカか河馬だよ。これからは、コホン、ズバリ電子だな。世界はダウンロード、ストリーミングの時代が来てるんだよ。ネトフリ、ネトゲ、ネトウヨなんだよ!CD屋なんか軒並み倒産じゃないか』

「はぁ、でも最近はハヤカワのポケミス、古いやつ拾い歩いてるって聞きましたが・・・」

 

 電話の向こうで古本屋のおやじはまた咳払いした。

『いいか。2014年に待望の翻訳が出たホセ・ドノソの大長編「別荘」の初版がわずか500部だったんだよ』

「これまた唐突すぎる展開。誰ですか、それ?」

『黙れ、俗人。ラテンアメリカ文学の高名な傑作だよ。本国チリでは文学的事件と呼ばれ、ラテンアメリカ各国で大ベストセラーだったってのに。私が見つけた日本版2020年三刷も、同じく僅か500部だった。こりゃつまりトータル1,500部での出版ってことだろ。露骨に過疎っとる。めちゃめちゃ過疎っとるネ!』

「あんたに言われたくないでしょ、ドノソも」

『うるせぇ。そこでだな。エヘン、これを大手配信サイト、例えばふわっちの閲覧と比較してみたまえ』

「え、ふわっちですか?なんでまた?今回もまた強引な話繋ぎで攻めますね」

『計算が分かり易いから引き合いに出しとるだけだ。他意は無いのよ。

 いいか、ふわっちの場合な、二桁数の閲覧ではまだ過疎と呼ばれるのだ。1,000人越えしてようやく一応大手配信者扱いにされる仕組みになっとる』

「フーン、やけに詳しいな。そうなんですか?」

『きみ、素人が個人で細々やっているいい加減な垂れ流し配信なんかを観るような、物好きな暇人が、この国にどんだけいると思うね?東京流れ者だって喰っていくには銭がいる。まともな奴は全員カツカツで働いとるよ。だから観てるのは無職やニートや住所不定者、扶養枠の人だけ。最低国民層。

 そんな逆境で人を集め、いちどきの閲覧が余裕で1,000人超えるなんていうケースは、もう並々ならぬ異常事態だよ。何か事件起こして警察絡むとか、連行されるとか、裁判だとか。自殺やらキチガイやら喧嘩色恋、刃傷沙汰だとか。放送しているマンションが火事で文字通り炎上中だとか、UFO着陸とか、青木ヶ原で心霊デートだとか。産まれた子供が実の旦那の子じゃないかも知れないからDNA鑑定するとか、あるいは大手配信者の炎上放送とかでもない限り、そうそう発生しないものなのだ。

 YouTubeなどメジャーとは違って、どこかから浮動票が大量に流入してきたりは絶対しないからな。ニコ生も同様だとは思うが、観る人、観ない人の差がハッキリしていて、一般人は間違っても偶然観たりしない。完全に閉鎖的な村社会だからな!』

「確かに。ボクは存在自体まったくに気にしてませんでした」

『大手配信者の相次ぐ不祥事や、規制強化によるアカウント停止により、ふわっち自体が最近超絶に過疎っとるが、それでも多ければ最大5,000人はいく。ネットの世界は恐ろしい。暇なやつがウヨウヨおる』

「はァ、それは確実にあんたですね」

『むむッ、MY NAME ISあんた?!どたわけが!あんた、あんたって気安く呼ばないで!
 YouTubeでは、登録者数5,000人ではまだまだ弱小。一万越えてなんぼ、10万人越えして成功、100万越えて有名人。とまぁ、恐ろしい基準があるのだがね。そうして比較すると、今回取り上げる記事の動画がどの程度の認知度をもっているのか、数字を突き合わせて初めて見えてくる訳よ』
「うーーーん。ドノソ閲覧500か。こうしてみると文学、メチャめちゃ過疎ですね!」

『本当は別ジャンルだから単純比較できないんだけどな。ドノソなんか、エンタメで本当面白いのに。もったいない。ただ、いまどき、人の関心がどこに集まりやすいか。観客の数字がどこに集まりやすいか、一応は頭に入れてもらっておいてだな・・・』

「はい・・・」

 怪奇探偵スズキくんはカップから冷めてしまったコーヒーを飲んだ。ドリップで淹れたハワイのLIONブランドである。遠くでチチチと可愛い小鳥の声がした。

『今回取り上げるのは、創作系YouTuberのホラー動画だ。まず昨年大ヒットして続編が書籍化されたという、どっかで聞いた話の、こいつを観てもらおうか。

 【不動産ミステリー】変な家

 9,318,060回視聴2020/10/30

https://www.youtube.com/watch?v=CBIL0eAwDs8

 注意警告!こっからネタバレ、ビシバシいくからな!

 ちゃんと事前に観とけよ。本だと全然読まないおまいらも、YouTube動画だったら大好きな筈だ!ふんふんシッポを振って喰らいつく間抜けヅラが目に浮かぶようだ!』

「だれもそんな暇じゃないでしょ。・・・でも、まぁ、いいでしょう。観てやるか。どれどれ」

 (幕間)
『どうだ、YouTubeにおける100万回再生の真の意味とは“100万人が観た!”ではないのだ。“物好きが百万回も観てやがる”が正しい。だって、大人は誰もヒカルもヒカキンも観ない訳じゃん。それが超大手とか適当に呼ばれるとは、認識の狭さ、世間の狭さに片腹痛いわ!栗原ひろみだわ!』
「なにを独りで騒いでるんですか。観ましたよ」

『・・・で、どうだった?』

「ふつうかな。・・・これ、どのへんがホラーなんですか?」

『うんうん。期待通りの反応をありがとう。

 ホラーというか、ぶっちゃけ、映画「ホステル」は本当にありました!みたいな謎解き話だよね。物語的には普通に“あるある”。虚実の狭間を狙った伝統の風姿花伝スタイル。都市伝説本とかエヴァ本とかに共通する、「すべての謎を解明する!・・・うん、わかった!だから、なに?」的な肩透かしとでもいうか。ちっとも凄くない真相究明というか。ネタとしては前段で振っといた森由岐子の例の問題作「怪奇!この家にはトイレがない!」、いや「魔性わらべの家」だっけ、あれと同じ話なの』

「はい。確かに」

『しかし、閑話休題、これを観て初めて分かったことだが、この世に見取り図マニアってのが結構いるんだな。笠井潔『オイディプス症候群』に小野不由美が描いた館の図面がある理由が分かった』

「え?どういうことです?」

『ほら、推理小説とかでさ、事件のあった屋敷の見取り図とか結構載ってるじゃない。実は作者がトリックを考えるために使った、単なる資料だったりするけどさ。初心者ほど、なんか深い意味あるのかと思ったりして、ついジッと見てしまうなんてことあるよな』

「実はまったく意味がないという()

『でも、その行為が段々癖みたいになってしまって、家の間取りとか館の見取り図とか大好きになってしまって、集めたり、つい自分で書いてみたりする。電車でいえば、Dみたいな時刻表マニアはそこから鉄道マニアになるけど、見取り図マニアは進化すると一級建築士を目指したりするのか?』

「あぁ、でも、鉄道マニアが本当にJRに就職すると最悪らしいですよ。余計な蘊蓄ばかり垂れてまったく兎に角仕事しないって誰か嘆いてた。確かに趣味で仕事しちゃいかんでしょう。当然だ」

『怪奇探偵のお前が言うな!!!』

「違いますよ、怪奇はボクの運命なのです(断言)。

 それにしても、これ、ぬるいよなー。風邪引きそう。でも、この動画は続編含めて書籍化されるてんですよね。果たして1,700円新刊の価値はあるのか。よし、お馴染みの秘密道具、読書メーターさんで測ってみますか。

 おっ、あらすじ掲載あり。これ広告コピーでしょ。問題なさそうだし、以下引用しとくか。

※(引用開始)

『あらすじ』

話題騒然!! 2020年、ウェブサイトで166PVを記録

YouTubeではなんと700万回以上再生!

あの「【不動産ミステリー】変な家」にはさらなる続きがあった!!

謎の空間、二重扉、窓のない子供部屋——

間取りの謎をたどった先に見た、「事実」とは!?

知人が購入を検討している都内の中古一軒家。

開放的で明るい内装の、ごくありふれた物件に思えたが、間取り図に「謎の空間」が存在していた。

知り合いの設計士にその間取り図を見せると、この家は、そこかしこに「奇妙な違和感」が存在すると言う。

間取りの謎をたどった先に見たものとは……。

不可解な間取りの真相は!?

突如消えた「元住人」は一体何者!?

本書で全ての謎が解き明かされる!

※(引用終わり)

・・・うん、なるほど。色々な方のレビュー参照しましたけど。ボク的には以下の感想が妥当な評価です。“あまり深く考えずに読んだほうが・・・”、至言ですね。

※(引用開始)

nadami30

不思議な間取りの変な家。荒唐無稽な憶測から、ある一族の因習へと繋がる不動産ミステリ。
読みやすい。
金田一耕助の時代ならともかく、現代日本の東京や埼玉を舞台にして戦前のしきたりを受継ぎ、素人の子どもが殺人を続けるのは、少し無理がある気がする…。
昭和の舞台にしたほうが良かったのでは?と思ってしまう。
あまり深く考えずに読んだほうが楽しめる和風ミステリ。

※(引用終わり)

ま、これレビューが的確な評価だってのは、まったく1ページも読んでもいないやつが勝手に言ってるだけの、根拠薄弱なエアー感想ですけどね!」

『酷い評価だが、ま、納得。妥当かな。怪奇探偵は、読まずしてその本の評価を言い切ってしまう特殊能力の持ち主なのか。連載以来ここまで続いてきて、初めて明かされる衝撃の真実だよなー』

 スズキくんは世にも爽やかな笑顔で微笑んで、

「はい、時間もカネも有限ですから。馬鹿正直一本でやってるだけで、怪奇な世間が渡れるもんか!」

『貧乏暇なしは私もおんなじだよ。でも世の中全般そうだから、これほどSNSが流行るんだろ。裏で金を毟られてるのに、気づきもしない馬鹿どもの間でな!なにがデジタル大臣だ!ふざけんな!人体にメカのひとつも埋め込んでみろ!

 家庭にファミコンしかなかった時代は、実は意外と裕福な時代だった。

 紙雑誌メディアが盛り上がった時代はまだマシだった。

 真にデジタル化とは、実は貧乏人の為の救済措置だったのかも知れないよ。スマホ1台で幾らでも暇つぶし出来るんだろうがよ。いいよな、お前ら!本当幸せなやつらだ!路上交通を妨害するだけのゴミクズ野郎どもが!』

「・・・いや、ソーシャルゲーム最高。毎日ガチャ引きたい・・・」

『では本論の動画のコメ欄から一本引用しておこうか。本気なのかね?』

yushy
0314

2か月前

これほんとにすごいです、、

まじで鳥肌、、

 怪奇探偵スズキくんはタバコに火を付け、静かに問いかけた。
「・・・結局あなた、誰かを相手に喧嘩売りたいんですか?」

『違うよ。正しい意見を言ってるだけだよ。長い年月に渡り、わしは沈黙を保っていたんだよ。自分が間違っているのかも知れない。世間のみんなが正しくて、わしは悔い改めて坊主にでもなって即刻反省すべきなのかも。そう思いながら耐えて、我慢して、水面下に沈んだ石ころのように黙って生きてきて、さらに、手術したり、豊胸したり、理不尽なハラスメントを受けたりしながら、LGBT問題に理解を深めたりして、流浪の果てにようやく真実が分かった。

 あいつらを野放しにしてきた結果、世の中、どんどん悪くなるばかりだったんだよ!

 ジャンジャン不景気になって、へんな病気も流行り出して、誰も彼もがおかしくなって、なにも良いことなんか無くなったんだよ!』

「・・・・・・・」

『ならば、言いたいことを自由に言わせてもらうぜ。それがオレのスタイルだ!世の中なんてクソだぜ。黙ってて損をしちゃった。キャハ💛』

「はァ。どうぞご勝手に。それでは、本来のレビューに戻りましょうか。

 プロの怪奇探偵として謂わせて貰いますが、やはりこの家、単なる設計ミスだと思うんです。失敗してる建築なんて、有名施工業者が請け負った地盤沈下を起こしてる某タワマン含め、星の数ほどある。そこをグッと拡げて、妄想詰め込んで膨らまして、ほら、ハリー・ケメルマン『9マイルは遠すぎる』って有名な短編ありましたでしょ?あれですよ」

『安楽椅子探偵の古典だな。仮想に仮想を重ねて、意外な真相を炙り出す。ま、単なるこじつけとも言うけどな!』

「あれが短編で書かれてるとこにポイントがあると思うんです。日常の平凡な違和感を膨らませて、架空の理屈でねじ伏せていくのは悪い切り口ではないけど、長くなるほどボロが出る。入口が平凡なだけに進むほど“そんなアホな!”感がドンドンつのって収拾つかなくなるんですね。オカルトってすべてそうでしょ。ほら、高橋克彦『総門谷』ですよ」

『あぁ、典型的なバカ小説だったな。劣化した半村良というか、もっとマンガで、内容壊れ過ぎてて1作目は結構好きだったが。敵が使徒と呼ばれ、なんでかキリストとかなんだよな・・・』

「エヴァンなんかとの元ネタのひとつですね。ダサいですね」

 スズキくんは再び、チャッチャッと引用した。

『総門谷』(高橋克彦) -
講談社文庫

初版発行:
1985

岩手県で1年間にわたり、UFOの目撃者が続出、そして奇怪な焼死体さえも! だが、このUFO騒動の裏は? 疑惑を抱く超能力者霧神顕たちは、怖るべきパワーの魔手と闘い、傷つきながらも、ついに魔の本拠・総門谷に潜入した。そこで目にした驚愕の光景とは? 構想15年を費したSF伝奇超大作。

「で、今回使いまくる読書メーターさん評価はこれで決まりでしょ!」

かつりん

ふた昔前の角川映画って感じでした。

『うん、的確だ。物事の理を解ってんな、かつりん』

「あんたの同世代の方だと思いますけどね。「総門谷」はバカ小説の典型として、最後は時空崩壊して万物リセットが起こります。広げた風呂敷たためなくなっちゃうんですよね。ケメルマンは賢かったということですよ。喋る程ボロが出る。ついた嘘を、更に規模の大きい嘘で上塗りしなきゃならない。バカのインフレ、『少年ジャンプ』の強いやつインフレと同じ理屈です」

 おやじは電話の向こうで溜め息をついた。

『ま、楽しいからいいんだけど。そればっか観てると、本当に頭悪くなって、最後は気が狂って死んじゃうぞ。「サメ映画大全」とか「人喰い映画大全」とか、本当にそう思うな。あれと伊東美和「ゾンビ映画大辞典」の格式の差について一度真剣に考えてみるべきだよ』

「嫌です。でも、まァ、わかりますよ。内容スカスカってことですよね。それは単に著者の技術レベルの差、情報量の格差なのでは?」

『いや、違うよ。真剣さが足りない!ってことだよ。バカと心中する覚悟の差というべきかね。
 まぁ、いいよ。今回の話はあくまでYouTubeだし、次はこれを観るのだ!』

とある一軒家で見つかった、不気味なビデオテープの真相

2,289,521
回視聴2021/09/24

https://www.youtube.com/watch?v=QboNR30zqPk

「ゲッ、長大化して49分もありやがる」

『うむ。最新作はストーリーテリングはこなれてきて、普通になってきてる。というか、Jホラーあるあるだな。呪いのビデオテープってネタが既に古臭いが。300万回再生も楽勝でいくでしょ、これも。まったくドノソの何倍だよ!』

「まだ、拘りますか()250万というのは、バブル期の松任谷由美のCD出荷枚数でしたね。紙メディアで唯一気を吐く『少年ジャンプ』も公称200万部から落ちてたみたい。これらは有償、無償の区別はあるから同一テーブルで比較し辛いところがありますが、でも実は、すべてのメディアは受け手の貴重な時間を浪費するという一点ではまったく同等なのです。これがスマホ普及以降の、娯楽メディアの真実ではないでしょうか」

◆参考記事:ジャンプ一強状態だが部数減少継続中…少年向けコミック誌の部数動向をさぐる(20201012)

https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20210314-00226269

(幕間)

『・・・やっと観たか。観終わったか。わしはタバコ3本消費したぞ。どうだった?』

「やはり、ふつう」

()

「確かに、だいぶ語り口がこなれてきてますが。そこは、まぁ、3歳馬の馬体重増は成長分ってくらいに理解しとけばいいんですが。それよか、あの。この話、そもそもプロット破綻してませんか。呪いのビデオテープ、部屋の四隅に張る必要まったくないですよね?」

『うん、無いね。別にやってもいいけど、必然性はない。趣味の問題()

「はい。そもそも実際リアルタイムで呪いの儀式を行うことが出来ないのなら、嫁の留守中にこっそりやればいいんではないか?
 この呪術法が実在するのかどうか知りませんが、たぶん白石晃士『ノロイ』の“かぐたば”的なものでしょう。架空だけど元ネタある系。民間伝承でこの設定なら、そもそも発生時点からして、呪う対象の部屋の中でこっそりやるたぐいの呪術だったと考える方が自然でしょ。最初っから、面倒なビデオ撮影なんてしないで全然済む楽な呪い方だった訳じゃないですか。
 なんでこんなに苦労してるんですか、真犯人?」

『うんうん』
「やはり、これって、設定のための設定なんですよ。まずビデオ貼り付けありきで、そこから話が組み立てられてるので、辻褄合わなくなってしまったんだと思う。残念。

 あと、ここは声を大にして言いたいんですが、ラストの恐怖落ちがあまりに弱すぎ。やばすぎるレベルでしょ」
『そうだね。しかし、ゾッとしたって人もいるみたいよ』

YouTuber

3
週間前

最後の電話で鳥肌が立った。

YouTubeでこんなに惹きつけられるのは凄すぎる。

間取りとミステリーのシリーズ好きなのでまた見たい。


佐藤はる

4週間前

「完」の文字が出た直後に来た得体の知れない興奮。どことなく不気味で、物悲しくて、でも凄く恐ろしい、上質な映画を見た時と同じ感覚でした。今回も素晴らしい物語をありがとうございます!

『・・・都合の悪い感想は全部削除してる疑惑()それくらい、溢れる絶賛の嵐!』
「オチの弱さは特に気になりましたよ、根っからのホラー好きのボクとしては。この後に、最後の呪術が動き出して恐ろしい効果を上げるようには、どんなに好意的に解釈したって、まったく見えないんです。なんか全員無事そう、無傷そう。それってホラーとしては致命傷、最悪でしょ。 前半の展開の中でね、もうホント、軽い扱いでもネタ振りでもいいから、テスト的に猫とか犬を呪殺してみせるとかさ、隣人が狂い死んでくれてもいいんです、なんか異様な事態がないと。肝心の呪法の威力が伝わらないじゃないですか。“この呪いが発動したら世界は終わり”くらいの、大袈裟な緊張感あるハッタリでもって強引に話を盛り上げてくれないと。観てるこっちはイマイチ消化不良で、おモロくないんですよ!」

『だから、寸前で怖くない怪談という新ジャンル。虚実の狭間でリアルを狙いすぎたのか?』

スズキくんは机を叩いた。

「いや、ないでしょ、リアリティ。あったら絶対こうはならないよ!所詮アタマで考えただけの話だよ!例えば里子に出された赤ん坊の気持ちが、お前に分かるのかよ、クズ野郎が!本当の親が誰だか全然分からなくって、大人になって真相聞いて、ただギャフンと言うしかなかった、あの日の苦い経験を、あの日の夕焼け空をボクは決して忘れませんからね!このカスが!」

『え・・・?そこ?!』

 古本屋のおやじは、収拾つかなくなりそうな空気を察して、素早くまとめに入った。

『“怖い間取り”とかね、“事故物件に住んでみた!”とかね。実話系怪談が因縁話で盛り上がるのは、結構なことだと思うんだが、小学校のクラスで流行った心霊写真本みたいで新味がない。
 ホラー好きと心霊好きは、実は凄く相性が悪いのかも知れないよ。心霊とかオカルト好きな人ってさ、世にも奇妙な怖い現象が起きました!ってその事実だけで盛り上がれちゃう人達でしょ。ムー大陸は実在してました!とかさ。

 ホラーはもう少し高級というか、怪奇現象のその先を探求しちゃうものだから。

 でも以下の感想にはちょっと同意しちゃおうかな。※
スタイルズクラッシュという名の乗り物に乗っているヨシハシ

3週間前

雨穴さんのスゴいところは、

"新しい小説家像"を生み出したところだと思います。

「小説思いついたけど自費出版するお金はない」という人の先駆者になると思う。

※ 
 ニューメディアの効能を説明するのに旧メディアを持ち出すのは、政府のバカ共の常套手段。カス野郎が。この動画の内容だったら、平山夢明なら短編でやれるんじゃね?しかも、そっちの方が上手いし怖いと思うよ。第一小説書きたいなら文章にしろよ。いらねぇんだよ、新しい小説なんてよ。
 とはいえ、ま、確かにこういう小説があってもいんじゃね?頑張ってね』

「史上最強に、心こもってないですね」

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