アルフレッド・ヒッチコック 『ファミリー・プロット 』(’76、ユニバーサル・ピクチャーズ)
(※古本屋のおやじのシネマカフェにて、本編上映後フリートーク)
「意外と見落としがちな本作のポイントとしては、バーバラ・ハリスの演じるブランチが胸のないセックス好きだってとこかな?やたら彼氏に“泊っていきなよ”とおねだりするんだが」
「いや、セックス好きと胸は関係ないでしょ」
「ヒッチはそう思わなかったみたいよ。終段の監禁室前のショットだったと思うが、上部からのぞき込む盗撮目線カメラがあるんだけど。ネグリジェだか薄いぺらぺらシャツだか、胸元の開いたやつを上から覗くセクハラアングルね。女優さんってたいへんよね。その場面で映る胸元の薄さは、こりゃもう、絶対狙ってやってるとしか思えないんだよねー」
「偶然でしょ?そもそも何の意味が?」
「失礼ながら、たぶんギャグの小ネタ(笑)サービスショットへのアンチ。ひねくれ者だから。
この作品、実はヒッチさんの遺作として有名であるんだけどさ。往年の犯罪スリラーの70年代版を依頼されたのに、何をトチグルったか、明るくコミカルでベタベタな犯罪コメディにしちゃったの。終幕のカット、最後のオチなんか『奥様は魔女』風の粋な演出(笑)監督自身はもう体調崩してて、撮影中も心臓にペースメーカー入れてたそうだし(しかも、それをやたら人に見せたがった)。もうなんか、しんどいこと全部忘れて、楽しくパーッといきたかったんだろうね。堅物だったオタクがアイドルにハマるみたいな感じよ」
「はぁ。たとえがよくわかりませんが・・・」
「いや、いいんだよ。わかる奴、絶対全国に3人くらいいるから。
あとこの映画の見どころはね、そう、成功したヒッチ映画には、かならず、特殊効果をフルに活かした必殺の見せ場が存在する。誰が見ても”面白い!”って言うMAXレベルのやつ。例えば『見知らぬ乗客』のメリーゴーラウンド全速ぶん廻しの場面。
今回はアクセルの壊れた車で山降りする名場面を見逃すな!ここでのブランチちゃんの邪魔くささ加減はホント最高!リアル・ブラック魔王を越えて、リアル・ケンケン!最高だよね!」
「はぁ、なんか全然わかりませんが、楽しんでいただけたようで有難うございます。・・・で、あの、もう一人のヒロイン、カレン・ブラックさんには触れないんですか?」
「あれはキャスティング自体が高級なギャグの一環でしょ。『殺しのドレス』が億面なくパクった、例の金髪女のコスプレ姿が有名ですけどさ、わざとグラサンさせて寄り目隠して、高いヒールのブーツ履かせて、しかもセリフは一切喋らせない。でもピストルはぶっ放す!「男って、どいつもこいつもブロンドで背の高い女が好きよね~」ってブラックさんのセリフがあって、これってティッピ・ヘドレンに言い寄ったりしてた、ヒッチさん自身への自虐ネタでしょ。キム・ノヴァクとかさ」
「そこへあえてブサイク投入ですか。なるほど、そうすると、音楽が『ジョーズ』で当てたばかりのジョン・ウィリアムスだってのも・・・」
「ギャグです(笑)しかも当時サントラ盤出してもらえなかったっていう。シュールな高踏ギャグ(笑)」
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