ミケル・ブレネ・サンデモーセ『ラグナロク オーディン神話伝説』(2013年、ノルウェイの森プロ)
あらすじこそがすべてだ。
どんな感動的な名場面があろうと、役者が畢生の名演技を見せようと、私の脳内ではすべてがあらすじに変換される。それは余分なデティールを削ぎ落す作業。皮を剥ぎ、肉を削り、映画の骨を抉り出す。
ま、簡単に云うと単純化して面白がってるだけなんですが。意外と映画の本質はそこにある。例えばこの映画。
いっけんポスターだけ取れば『グーニーズはグッドイナフ』に、『ハムナプトラ』に、『ナイトミュージアム』にも見えますが、中身は実はノルウェー産の『アナコンダ』であるという。この矛盾。詐欺じゃん。
【あらすじ】
北欧の田舎にキャンプに行った佐藤さん一家。きれいな大自然の空気を満喫しながら、がんがん山奥へ分け入っていく。いい景色だ、空気もうまい。こいつはビールも進むぜ。
「こらー、あんまり山奥行っちゃダメよ、パパ」
優しい奥さんの止める声も聞かず、ずんずん奥へ奥へと分け入っていく。
「うわー、こりゃすごい森だ。昆虫どっさりいそうだなー」
素直な感動に目をキラキラ輝かせながら感慨を漏らす佐藤さん。
小学生の息子が冷静にどつく。
「おやじぃ~、こんな海外の僻地まで来て、それかよ~!」
とても穏やかな佐藤さん、さらに国境のない自由な世界にイマジンを飛ばす。呆れる家族はガン無視するが、ふと気がつくと帰り道がわからなくなっていた。
おまけに急激に天候も悪化。降り出す激烈な雨にあわてて近所の洞窟に避難することに。洞窟の中は当然まっくら。心細くなり泣き出す家族。
「おーーーい、助けてくれーーー!」
「うぇーん、うぇーん、うぇーん」
と、そこへ忍び寄る黒い影。
「てめーら、俺の縄張りを荒らすなよ!北欧伝説の秘宝は、基本的にオレが独り占めだかンな!!」
それは、いい歳こいて独身で、ガラシャツ着て缶チューハイ飲んで、古代ノルウェー王が洞窟の奥に隠した宝を探す、どこの国にもいるごくつぶしの汚いヒゲオヤジだった。
抵抗する気もなく、「まぁまぁ、落ち着いて。話し合いましょうよ」とか言ってる佐藤さんに銃を突きつけ、素早くこの世とララバイさせようとした瞬間。
「ガーーーーッ!!ぐぎゃるるるーーー!!!」
襲い掛かる超巨大な、へび。
「ひぇーーー!」へびの嫌いな佐藤さんは悲鳴を上げ、無駄な抵抗をしようと猟銃を向けた悪いおやじは丸呑みに。おやじが大蛇に丸呑みされる映画は、全部無条件に『アナコンダ』。
なんとか逃げ出した佐藤さん一家に、なおも執拗に迫るへび。ドリフのコントみたく、呪われた沼地に張り渡したロープから落っこちそうな佐藤さんを、奥さんが救いに来ました。
「あなたー!頑張ってー!まだ家のローンは残ってるのよー!」
しかし敢え無く呪われた沼にドボーーーン。せっかくの努力がまったく役に立たないこともある。
迫る巨大な大蛇のあぎと。佐藤さん夫婦の運命ももはや風前の灯かと思われましたが、そこへ、子供たちが子へびを捕まえ交渉に。
「おまえの子供は預かっている。返して欲しくば三千万円用意しろ」
大へびだって子供は可愛い。しかたなく、へび銀行伝説の森支店に現金を引き出しに行っているあいだに、佐藤さん一家は無事脱出。子へびは交番に届けましたとさ。
【結論】
観る価値のない映画にもいろいろあるが、そのひとつに既に観てしまっている映画というのがある。すでに観ていて、まったく面白くなかったものを再度観直すくらい無駄な行為はない。やめましょう。
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