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2015年7月26日 (日)

田川水泡/くまの歩『のらくろファミリー』 ('87、講談社KCワイドコミックス)

 「27年ぶりにセーラー服を着た風間三姉妹ってのは、なんかもう、まるっきり漫★画太郎のキャラですなー!」

 失礼な感想をずけずけ述べながら、古本好きの好青年スズキくんはスポーツ新聞を折り畳んだ。
 異常な猛暑に責め立てられ、街路を行き交う人影も無い。表に出たら、たちまち熱中症のえじきにでもなりそうな、緊迫感に満ちた過酷すぎる夏が続いている。

 「先日全国2か所で、それぞれトライアスロン中死亡した中年男性がいるんだが・・・」
 古本屋のおやじはゆっくり咥えたピースの紫煙を吐き出しながら、
 「ユング先生の言う共時性(シンクロニシティー)ってのは、まさにこういう現象を説明するために編み出された用語なんだろう。意味ある偶然の一致ってやつだよ!」

 スズキくん、ギロリ目を光らせて、
 「・・・ホホゥ。で、そこにいったいどんな意味が?」

 「過酷なスポーツに挑む人はまず両親に相談しろ。両親がいない場合は、先生に相談すること!!」

 おやじは背後の黒板に“※この夏の重点課題”とチョークで大書きし、バンバンと叩いた。

 「無謀すぎる若者が生き急ぎ、思慮深い筈の中年も当てにはならん。老人は線路と道路を間違えるし、酔ってセクハラの挙句に奴隷誓約書を書かせるし。まことこの世は嘆かわしい。名探偵カッレくんにも恥ずかしい。吾輩は背中を十数箇所刺されて殺された町内自治会長にでもなったような心境だ」

 「あんた、最近つくづく時事ネタ好きですなー。
 そういや、ドローンが落ちてきて国会がぼかんぼかんってオチ、二連続で掲載されてましたよ!ネタの使い廻しじゃないですか!更新数も減ってるんだし、ネタの粉飾決算はいい加減にしてください。第三者委員会に査問調査させますよ!」

 「あ。ホントだ。
 実はまったく気づかなかった。遂にこのわしも惚けたかも知れん!・・・って今更感のある疑惑を突きつけたところで、今回取り上げるのは、実はのらくろなんだが・・・」

 「唐突にきましたねー。大昔過ぎる有名マンガですよねー。でも全然読んだことないですよ、ボク」

 おやじ、ここぞとばかりニンマリと笑い、身を乗り出した。

 「よし、のらくろ歴40年のこのわしが、おぼろげな記憶をもとにこれまでのあらすじ含め、解り易く解説してあげよう!
 なにせ、わしは『のらくろ自叙伝』を発売時に買った男なのだから、のら知識はもうカンペキだ!」


 「・・・ウソこけ・・・」

【あらすじ】

 中国四千年の歴史を誇る花果山の麓で、岩がパカっと割れて産み出された無敵の兵隊これが野良犬くろ吉、通称のらくろである。住所不定の野良犬であり、色が真っ黒で鼻づらだけが白いので、通称のらくろ。海に出たらばハナジロという名で通っている。
 時は戦国、世は乱世。バイト先のたこ焼き屋のおやじに薦められたのらくろは、連日おサルとの激しい戦闘に明け暮れる猛犬連隊に二等兵として入隊する。
 日々の過酷な特訓に耐えに耐え、めきめきと軍きってのトップガンとしての資質を発揮していくくろ吉。単身おサルの国に乗り込んでいって豪快に捕虜になるなど、一線越えたアヴァンギャルド過ぎる軍務を続ける。その一方、たこ焼き屋の一人娘お銀ちゃんと懇ろになるなど、恋に仕事に大ハッスル!
 やがてその活動は、連隊の最高司令官ブル大佐(※ブルドック)の目にとまるところとなり(って、まぁ入隊初日から連隊長とは互いにど突きあう仲なのだが)、軍曹、曹長、少尉に大尉と異例のスピード出世を重ねていくも、すでに戦況は我が国敗戦の色濃く、戦時下の東京では紙資源の供給もままならなくなり、遂に1941年ジョンベルーシ・イヤー、無念の打ち切り。俗にいう「のらくろ切ったら戦争負けた」という、例のアレである。
 そこで戦後は油田探しやら喫茶店経営などして、まごまご暮らしたということじゃ。
               (完)

 「・・・って、まぁ書いてあることの90%以上は嘘なんでしょうが・・・」
 スズキくんは珍しく感心している。
 「ちょっとだけ、本当のこともありますね!」

 「失敬な。正直ブロガーとして20万アクセスを誇る弊社の実績を舐めんなよ!何の役にも立たん、読んで気持ち悪くなった、グロ載せんな!と小国民の皆さんも怒り心頭大好評だ!」

 「そんなもんに毎回駆り出されるボクの身にもなってください!頼むから!
 ・・・で、今回取り上げてるこの本ですが、'87年の発行なんですね」

 「フランク・ミラーがバットマンの再起動に成功した『ダークナイト・リターンズ』が'86年、スーパーマンのリニューアル『マン・オブ・スティール』もこの頃だから、日本のDCコミックスと異名をとる講談社(それを証拠に自社コミックスブランド名がKCだ!)としても、自社の老舗キャラを現代に蘇らせる欲望に憑りつかれてもおかしくあるまい。オリジネーターである田川氏ではなく、別の作家を起用するところもとってもアメコミ流儀だよな!」

 「田川水泡が亡くなる間際で、版権が浮いたんじゃないんですか?(※実際に亡くなるのは'89年)」

 「黙らっしゃい!この時期、『のらくろクン』というアニメが放映されていたのも含め、所詮すべて一種の黒歴史。誰もがなかったことにして“のらくろリブート”など忘れ去った。マンガ版の方でも、主人公は実はのらくろではなくって、彼の息子。麻雀好きでしかもW大学中退・・・ってコレ、宇宙飛行士Dさんじゃん!そんなやつが主役じゃダメだろう。
 兵隊でないのらくろなんて、なんの魅力もないし、誰も感情移入なんかできないんだよ」

 「あ、いま、言ってはならない当然の真実を突きましたね。これで安心して記事終われますね。早くてよかった、よかった~」

 「いや、まだドローンが墜ちてきてないから・・・」

 「・・・もういいよ!」

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