今日泊亜蘭『光の塔』 ('62、東都書房)
1:Houston_on_line
「(矢島正明の声で) 無限にひろがる大宇宙・・・・・・」
2:D_the_SpaceMan
「うわーーー!!!
おまえ、それじゃいつもと同じやないかい!せっかく新感覚、偽装ツィッター方式を導入してお届けしようってときに、アタマっからそれかい!」
3:Houston_on_line
「われわれのシリーズも順調にロングランを続け、毎回同じオープニングもいい加減飽きてきたからな!ここはひとつ、現代科学の最新成果を取り入れて、新たな気持ちで記事を作成することにした。諸君、ディスれ~~~!ディスりまくれ~~~!すべての価値をゼロに戻すんだ。そして、リツィート」
4:D_the_SpaceMan
「絶対勘違いしてる。ツィッターってのは企業名だし情報サービスの名前ですから!字数制限のあるミニブログという感じ。ボクも人気ブロガーのはしくれとして常に情報のアンテナを張り巡らし、フォローを入れまくる毎日です」
5:Houston_on_line
「この偽善者め、ユダめボブ・ディランめ磯野磯兵衛め!それにしても俺達、全然普通に会話してて、ちっともツィッターの醍醐味が感じられませんがな~(爆)」
6:D_the_SpaceMan
「語尾に“なう”ってつけるといいらしいっスよ、なう」
7:Houston_on_line
「・・・光の塔、なう。」
8:D_the_SpaceMan
「おおー、いきなり本題、核心じゃないスか!迂遠迂遠を重ねて本題から超音速で遠ざかっていく、あんたの記事にしちゃ珍しい直截さじゃないですか。明治生まれの著者が書いた日本初の本格長編SF!侵略モノにして時間モノという、ジャンルのあわせ技を駆使したトリッキーなプロット!で、どうだったんすか、これ?」
9:Houston_on_line
「面白かったよ。全編、意図的に歪めた過剰なジャポニズムが洪水みたいに溢れてくるんだ。例えば、ネタばらしになるがこれ、最終的な問題解決をハラキリに求めた作品なんだよ」
10:D_the_SpaceMan
「・・・は?今村正の『武士道残酷物語』じゃないよね?」
11:Houston_on_line
「あの映画は63年公開だね。南条範夫の原作『被虐の系譜』も同じころか。1970年にリアル切腹事件を起こす三島の『憂国』発表が61年。相当流行ったのかね、ハラキリ。
『光の塔』では、他にも、特攻、カチ込み、タイマン、やくざのカシオド(脅迫)、夫婦のまぐわいなどなど、日本の美しい習慣が続々登場!さらに国際化時代を反映して、火星人の介護問題まで!ま、重力の差があるから地球に来たら、調子悪くなるのは当たり前なんだけど。秘密裏に連れてこられた火星人が田舎の土蔵に匿われてる・・・って、はっ、これ強制拉致問題、自宅監禁まで先取りしてる!」
12:D_the_SpaceMan
「してないと思うね。
ま、いいや。そもそもどんな話なの?」
13:Houston_on_line
「二十年前の渋谷大爆発のあとに復興した未来の日本。首都東京は飛車(エアカー)や角がぐんぐん飛び交うメトロポリス的な未来都市だ。語学に堪能な現役将校の主人公が宇宙から帰ってくると、“おまえは幼女に手を出して俺の嫁にしたな!”と査問委員会にかけられる。どんなに科学が進んだ未来でも、おかっぱ・もんぺ姿の未成年者との性行為は重大な犯罪なのだ」
14:D_the_SpaceMan
「・・・そんな話なのか?」
15:Houston_on_line
「うん。
で、そんなところへ原子炉の燃料棒盗難、木星宇宙船の紛失と怪事件があいつぐ。失くした担当者は思いっきり過失責任を問われ、査問委員会から口汚く罵られる」
16:D_the_SpaceMan
「なにかというと査問なんだな。でも怪事件が連発して、調査する主人公が徐々に核心へと迫っていく。こりゃウィンダム『海竜めざめる』パターンの王道作品という感じだな!」
17:Houston_on_line
「はい、原因は未来からの侵略でしたーーー!!」
18:D_the_SpaceMan
「・・・って思い切りネタバレしとるやないかい!おのれには節度や配慮っちゅうもんはないんかい!」
19:Houston_on_line
「(完全無視して)遥かな未来からわざわざ手間暇かけて過去に侵攻する。疑似科学風味満点で描かれる時間超越手段はそのものは面白いけど、相当うざい。なんでまたそんな七面倒臭いことをする必要があったのか。そもそも過去を侵略して何の得があるというのか。ディ・キャンプ『闇よ落ちるなかれ』的な歴史改変テーマが、一応物語のバックボーンになってるとはいえ、これ本当の動機は、未来人類の恨み・つらみなんですよ。そんだけなの。そこがリアル。過去の人間がなにも考えず、好き放題、無茶苦茶やったんで、結果的にこんな世界が出来上がってしまった、許せん!という感情的鬱積と反発ね。このへん、まさにいまの年金問題を先取りしてる感じ」
20:D_the_SpaceMan
「・・・マジすか?だいたい、キーワードとして出てくる二十年前の渋谷大爆発って・・・」
21:Houston_on_line
「はい、ご想像の通り、某セカンド・インパクト的なものです」
22:D_the_SpaceMan
「あ~~~、やっぱりぃ~~~(笑)」
23:Houston_on_line
「欧米先端科学のタームと怪しい日本語表記の乱れ撃ち、軍事国家になってる未来ニッポンって設定とか、昨今のニーメ文化の源流として捉えることは非常にたやすいことだとは思う。この作品以前にカッコよさ重視でそういう取り組みをしたものがどれだけあったか知らないが、意識的という意味では『光の塔』が最初で決定的でしょう。軽さが確信犯というスタンス。皮肉も効いてる。でも、ファッショナブルだってそれだけじゃない。
もうひとつの重要なキーは、敗戦に終わったあの戦争なんですよ」
24:D_the_SpaceMan
「うわ。出た。重い~~~」
25:Houston_on_line
「もう、侵略してくる敵側が『マーズ・アタック!』かってぐらいに圧倒的に強すぎでね、埼玉タワーなんか怪光線浴びてドロドロに溶けちゃう。当然ですが端っから科学力に差がありすぎるんで国軍は完全に無能で、反撃らしい反撃も全然できなくって国土はどんどん焼け野原に。大都市は残らず壊滅し国民は無差別爆撃で皆殺し。これってまるっきし太平洋戦争末期、空襲下の日本じゃないすか」
26:D_the_SpaceMan
「あ~~~、やっぱりぃ~~~(嘆息)」
27:Houston_on_line
「最終的にはその一方的な殺戮戦が特攻やらハラキリやらの活躍でようやく終結し、再び復興の日を迎えたところで、主人公が回想し記す。ウェルズの『宇宙戦争』とおんなじコンセプト。その綴られた記録がこの本、この物語って設定なんですが、日本の華々しい復活を経たさらなるその未来には破局に瀕した絶望的な世界が相変わらずあるんだ。結局何も救われていないんですよ。それってやたらリアルで怖くないですか?」
28:D_the_SpaceMan
「円環構造ってことね。歌舞伎の因果ものみたい~」
29:Houston_on_line
「因果ものといえば、今回私の入手したハヤカワSFシリーズ版には、某北海道図書館の貸出票がしおり代わりに挟み込まれておりまして、失礼ながらお名前を検索させていただいたら、某東大の有名教授の経歴・出身地と見事ヒット致しました。この方が若かりし日に間違ってお読みになってしまった模様です」
30:D_the_SpaceMan
「おー、おー、本家ツィッターっぽくなってきたじゃない。そこから導き出される結論は?」
31:Houston_on_line
「いや、こんなしょうもない本読んでても出世する人はちゃんと出世するんだな、って。
『神秘の探究』読者のみなさん、本年もひとつ頑張ってちょんまげ!そして、にゃんまげ!」
32:D_the_SpaceMan
「キミとは、ホンマやっとられんわ!どうも、ありがとうございましたーーー!!」
33:Houston_on_line
「ありがとうございましたーーー!!」
(天井から無数の落石が降ってくる。終幕)
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