リドリー・スコット『プロメテウス』 ('12、20世紀フォックス)
きみはもうとっくに観てしまっているだろうから、何を書いても構わないだろ?
僕は最近とても不自由な生活をしていて、片腕がうまく持ち上がらないんだ。パソコンの画面をONにしていても、Yahoo!ニュースしか観るものがない。潜水中の樽のなかにいるようなものさ。空気を吸うことしかできない。大渦に揉まれて。
無駄口をやめて『プロメテウス』の話を。
これは『エイリアン』の前日譚みたいな話で、ひさびさに一作目のリドリー・スコットが撮るとか随分盛り上がっていた映画。
“遥かな異星で人類の起源が解き明かされる!”とか、わかっちゃいたけど、とんでもないデタラメさ。人類を創造した神らしき種族は、確かに出てくるんだけど、
「なぜ、われわれを創ったんだ?」
と問い詰めると、逆上してキレて暴れ出すし。アンドロイドは相変わらず悪いことしかたくらまないし。船長は異様に男気があってイオン・エンジン抱いて特攻するし。ヒロインは下着一枚で腹かっ捌いた直後に砂漠の平原全力ダッシュをキメるし。
はっきり言って、観たいものが全部詰まっている。
リドリーの生涯最高の出来だと思う。
だって映画愛ってこういうことですよ。むちゃくちゃですもん、この話。子供でも頭おかしいってわかる。宇宙船が縦に倒れてくるとこなんか本当凄いですよ。大爆笑もんですよ。ドリフのコントを大予算でやってるんだもん。キレイごとばかり抜かす『アバター』よかよっぽど夢の映像ですよ。
なにが凄いって、コレ、『エイリアン』のエピソードに繋がりそうで繋がらないんですよ。前宣伝と全然違うじゃん。書いてるうちに脚本家がテンション上がり過ぎちゃったんだろーね。
「敵の星に乗り込んで、皆殺しだ!」って、ワクワクする夢のある幕切れになってる。アメリカ人ってのは何世紀経とうが変わらない人種だね。いまどきスティーブン・スティルス出してくるセンスも相変わらずだしね。
そのくせ、「宇宙、超おっかねーよ!!!」というスタンリー・キューブリック主義を全編に貫いているところは素直に好感が持てます。
「宇宙、超怖ぇーーーよ!!!
だって、空気が全然ないんだぜーーー!!!」
この発言にうなづいた奴だけ、観に来い。そういう映画です。
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