武富健治『惨殺半島赤目村②』 ('14、アース・スター・エンターテイメント)
「いいよね、惨殺。本来日本のあるべき姿だよ、呪われた村ってのは。ロマンですなァ~」
呵呵大笑する古本屋のおやじを見ながら、怪奇探偵スズキくんは出されたお茶をガブリ飲み干した。いま読み終えた本の通りなら、毒物のひとつも混入していそうなものだが、さすがにそれはないようだ。
「最初ね、大丈夫かよ?と思ったの。一巻でさんざんネタ振りしたばかりだし、最低5冊はいくんじゃないのって。そしたら2巻で完結だっていうじゃない。でも読んでみると実際虐殺行為が始まってからはあれよあれよの展開で。気持ちよく読み終えられました。
一夜で大量殺人なんて、そうそう引っ張るネタじゃないもんね。犬丸継男の昔からそうだもんねー。」
「ボクはリベラル穏健派ですんで、“虐殺はスピード感が命”とか不適切な発言は避けたいとこなんですけど。やはり、イイですよ。マンガの中で生首ごろごろ転がるのは。読んでて本当によかったって、神に感謝する気になります。」
イッヒッヒ、と笑った。
「かつ、このマンガ、児童教育に関し率直かつ大らか過ぎる描写もありますし。石原都政の介入以降キナ臭くなってきてる現況でもまだこれがやれるんですね。安心しました。」
「モラルハザード問題か。丹沢先生は予想以上にカマしてくれる、感じいいキャラだったよねー。ああいう人物が出てるうちはまだまだマンガも大丈夫。一線越えたらこの世の外まで行ってしまおう、という姿勢には大黒摩季に似た力強いサムシングを貰いましたよ。
あと、適当な古代史オカルトの味付けも、微妙な植物学知識も邪魔にならなくてよかった。読み飛ばしても理解できるというのは大事なことだ。
最近、説明ネーム読まないんだよ、オレ。」
「ダメでしょ、それじゃ。薀蓄なんて掘り下げてなんぼですよ・・・」
マンガという名の魔道には入った二名の楽しい語らいは尚も続いている。台所の奥では呆れた物憂げな溜め息が聞こえてくる。
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