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2014年2月 8日 (土)

りんたろう『幻魔大戦』 ('83、角川映画)

 ニーメというものが、そもそも超クソださい存在だ。
 
観るとへこむ。腹がゆるくなる。自分ではカッコいいつもりでいるからむかつく。そのいっさい反省を知らぬ姿勢はまるで田舎のツッパリのよう。改造車を乗り回しコスプレを楽しむ。端的な例はつい先日の農薬混入事件のあいつに象徴されるだろう。

 ようこそ、『幻魔大戦』へ。
 これこそ私が推奨する、この世でもっとも忌むべき日本ニーメの代表格である。この作品がアブノーマル、インモラルの極みで、根本的に人の道を大きく踏みハズしていることは、上映当時から多くの識者に指摘されてきた。
 そもそも物語の意味が不明だ。全宇宙的災厄である筈の幻魔を、下っ端を倒しただけで大団円にしてしまう構成はおかしい。キース・エマーソンの音楽は単純に恥ずかしい。大友克洋にキャラデを頼む必要があったのか。無駄に豪華な声優陣の使い倒しはなんだ。
 すべての凡庸な突っ込みを乗り越えよう。
 われわれは過去を清算すべき年代に到達したのではないか。無残にラストがカットされた『タイムバンディッツ(バンデットQ)』と同時上映で『幻魔』を観る経験をしたのは、至福の映画体験とは絶対呼べないまでも、消費されては消えていく空疎なハリウッド大作を観るよりも遥かに有意義な時間ではなかったか。そもそもこの映画、全編がほぼ突っ込みどころという点では、エド・ウッドを凌ぐ確かなクオリティーではあるまいか。
 幻魔に愛を。幻魔に光を。
 私はそう叫ばずにいられないのだ。最近。

【あらすじ】

 新宿で深夜、女占い師が踊り狂う。観客の予想を大きく外す、リアクションに困る、異次元感覚溢れるオープニングに脱帽。このオーバーアクトが出た瞬間、劇場がなんとも困った失笑に包まれたことは忘れられない。
 次の瞬間、飛行機に隕石が激突。
 乗っていた超能力者のケバいねーちゃんは、明らかにやばい、宇宙から来た超意識的存在美輪明宏と接触して発狂。唐突に地球を救う使命に目覚めてしまう。宇宙に浮かんだドクロくんが星を食べ尽くしながら大接近しつつあるのだ。なんとかしないと、お前の星も破滅だぞ。
 ねーちゃんは、彼女をドクロくんに食われた異星のロボ戦士(故障品)と共に、太平洋を越えて超能力者集めに旅立つ。軽く空中を飛んで。(無論これは舞空術なのである。)
 地球の未来を担う超能力者は、新宿のどぶ板横丁にいた。未成年なのに飲んだくれ。いい若いもんがそれでどうする。暗がりに追い詰め、レーザーガンを連射し心の籠もったヤキを入れてやるロボ戦士。親心も宇宙級。
 生命の危険にさらされ、超能力に目覚めた若手は空中浮遊し遁走。その日からまともに登校しなくなる。なにせ地球の危機ですから。
 その姿を同じ不良の先輩として温かく見守るケバねーちゃん。われわれもいい加減、この映画の持つ善悪の観念が常識と大幅に外れたものであることを理解し始めた頃に、神社のコマイヌが若手を襲撃。ドクロくんの魔の手は刻々地球に迫っていたのだ。コマイヌの相棒、仁王像との戦いに苦戦する若手。なんでいちいち神社関連。からくも敵を撃退するも、若手の大好きな独身の姉は敵の犠牲になり、あたら処女のまま荼毘に附されてしまう。
 おのれ、幻魔め。
 舞台は変わってニューヨーク。
 このへん、映画全体を覆う慢性的な作画枚数不足がたたって、かなりお見苦しい場面が頻発するのだが、それはともかく、超能力を持つエマニュエル坊や、サイボーグ・ゼロゼロナントカから借りてきたインディアンと、中国から来た原田知世が警察署に集結し、焼き討ちに遭う。国際貿易センタービルを薙ぎ倒し、マンハッタンは巨大な光球となって消滅した。あとには寒波吹き荒ぶ砂漠が残った。
 ひとり遅れて現れたインドの超能力行者が、「虚しい・・・」とツイッターで呟いた。
 最終的にドクロくん一味の狙いは富士山大噴火であることがわかり、日本に続々と集結する国籍不明の超能力者たち。あとは、地球の未来を担う超能力の若手が覚醒すれば首尾よくすべてが終わる段取りが組まれたところへ、鳴動する噴火の前兆に追われシカ、クマ、イノシシなどの種々雑多な動物の群れが襲来。
 全員、ケモノに喰われて光の輪になり、天に昇っていった。
 劇終。

【解説】

 多少嘘も書いたが、本当にデタラメな話なので驚く。最も忌むべき点は、これをカッコイイものとして捉える歪んだ感性・・・というか、腐った性根の部分である。
 そういう意味だか細かい解説を書くのも無駄な気がしてきたので、ひとつ怒鳴り散らしながら観てくれ。テーブルを切り裂け。
 全体を通して、怒りと突っ込みに駆られない場面は存在しない。
 きみに本気の殺意が湧いて来るだろう。

 
怒れ。

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