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2013年11月

2013年11月25日 (月)

相対性理論『ハイファイ新書』 ('09、みらいレコーズ)

 (Yさんとスカイプでの会話。Webアニメはわれわれ二名体制でずっと作業しているので自然に無駄話が多くなる。)

 「・・・いまさらですが、相対性理論のセカンドって凄くない?(フォトショで絵を切り抜いている。)」
 「あんた、時代に遅いよね。明らかにね。」
 「オレ、全然知らんかったんだよねー。なんか、大人気バンドらしいね。こんな地味なのに。
 で、知ったきっかけは、『WORLD HAPPINESS』って、夢の島だか新島だかでやってるフェスのコンピを買ったときだったんだけどさ。2009年度版。」
 「新島は、明らかに嘘だね。」
 「ま、このフェスがまだやってるのか、そもそもなんでまた開催地が夢の島なんだか知らんが、きっとエコでロハスな理由があるのだろう。かつてそんなイベントに相対性が出てたワケだ。
 ちなみにコンピ収録内容はですね、業界のNHKに出れる立ち位置の連中というか、YMO絡みとかスチャダラとかロートルメインで他にも色々と混ざってまして、なかなかでした。」
 「随分グレイな感想だよね。」
 「で、本題。ここに収録されてた“テレ東”が強力に引っかかったんですよ。」

 「・・・長いね。毎度、説明までの前振りが。」

 (聞いていない。)
 「 ・・・んで、まぁ、騙されてるのかなぁーとか半信半疑の気持で、『ハイファイ新書』中古で買ってみましたよ。
 そしたら、いやー、なんかもう全編微妙な感じが印象に残った。だじゃれ多いし。」

 「俺はきっかけ、ポリスだね。御存知の通り、昔っからポリス大好きだから。」
 「水野晴郎と同じく?」
 「それはアメリカンポリスだよね。明らかに違うよね。
 ある日ふと、どっかにポリス系列の音を出してる連中はいないかと思ってサーチしてって、出てきたのが“地獄先生”だったんだよね。」
 「“地獄先生”(笑)。」
 「あのギターリフって、完璧にポリスの世界じゃん?どの曲のパクリとかじゃなくって、もう一歩進んで血肉になってる感じがする。ま、正直たまげたんだよね。」
 「しかし、Yさんが日本の女ボーカルものを推奨するのって珍しくないですか?全員嫌いでしょ、日本の女?」
 「そうね。歌謡曲以外は。ロック寄りだとちょっとね。全員SHOW-YAで、シナロケだよねー。顔こわいじゃん。そういう女は昔たくさん周りに居たし。」
 「さすが武侠派。」
 
「で、どんなバンドだと思って調べてみたら、まだ若い連中がやってたんだよね。そこで二度びっくり。」
 「あ、若いんだ。意外。」
 「若かったんだよね。実は。音聴くと結構年期入ってるかと思うじゃん。意外や若いの。

(つづく)

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2013年11月16日 (土)

袈裟丸周造『廃屋の住人』 ('11、集英社ヤングジャンプコミックス)

 そんなに深くない意味で、ここには明確な恐怖に対する指向がある。

 人は怖いものを見たい。なぜ見たいのか。
 問うても仕方無い無駄な質問だが、強いて答えるなら、われわれは常に灰色の現実を塗り変えられたいと思っている。「現実を塗り変える」ならスポーツマンシップに則ってポジティブだが、人間そうそう無駄な努力は続かないものだ。
 お前の息子は絶対東京五輪には出場できないだろう。出てもカナダに負けるだろう。
 それよか、現実には存在しない存在、霊や呪い、たたりといった人知を越えたいかがわしい超自然現象に翻弄され捲くり、なすすべもなく滅んでいきたい。
 ホラーの魅力の何パーセントかは、そんな暗いひねくれた破滅願望によって出来ているのではなかろうか。これって、例えばエロマンガなんかの、

 「スゴいエロい、バスト90cm以上を誇る美貌の女教師が突然赴任してきて高校生のボクは教室内教室外でセックスしまくり出しまくり、結果的に非常に充実したダメな毎日を送る」

 なんぞにも似通っているが、より病は深刻な気がする。なにせ最終的に破滅するのは世界だったり人類だったりするのだ。
 袈裟丸周造(この名前をサイン色紙に書くのはたいへんだろうなぁー)のこの本は、そこまで突き詰められた事態にはならないが、本質は同じだ。超自然現象には意味などない。解釈不能の破滅が突如として襲い掛かり、人が死ぬ。
 楽しいデート前にはおすすめの一冊だ。

【あらすじ】

 藤森さんは一児の母。悩みの種は幼稚園に通うお子さんが、交通事故死した別の園児の霊に取り憑かれているらしいこと。
 それとはまったく関係なく、友人と飲んだ帰り道、ひょんな偶然から“いつも電車から見かけて気になっていた”廃屋を訪れた藤森さんのいとこ・健太くんは、人知を越えたなにかに遭遇、なんでか死んだ園児の霊が見えるようになる。これは一族の血にまつわる呪われた因果か何かなのだろうか?
 解決の鍵は、田舎に居た頃聞かされたおじいさんの語る実話怪談にあった。
 「廃屋にお化けが住むのではなく、家全体がひとつの幽霊だったのじゃ。」

 真相を悟ったときには既に遅く、健太くんは謎の失踪を遂げてしまい、幼稚園児は高熱を出して危篤寸前。携帯で知らせを聞いて慌ててマイカーで自宅へ引き返す藤森さんの前に、極端にへんな顔の園児が立ちはだかる。
 「ああっ、あなたは・・・?!」
 彼こそは廃屋の住人。そして廃屋そのもの。幽冥界の存在。
 健太くんに続いて藤森さんも魔界に飲み込まれてしまうかと思われたが、突如幽体離脱で救いに現れたお子様の的確なサジェスチョンにより、かろうじて死ぬのは免れた。

【解説】

 以上のあらすじ紹介を読んでも、どんな話だかサッパリわからないだろうが、実は本編を読んでみてもよくわからないのだ。なんておそろしいことだ。
 廃屋と死んだ園児のつながりが全然わからない。いずれもこの世のものでないには違いないが、連れ立って現れる積極的理由はないように見える。藤森さんの血縁に連なる者たちは廃屋や死んだ子供を見たり関わったりできるようだが、なぜなのかは解き明かされない。
 あの世の論理は解明できない。が、おぼろげに関係性を感じ取ることはできる。
 極端な説明不足を貫いた作者の意図は、落としどころを排除し、霊現象をリアルに描き出そうとすることだったのだろうが、逆に「もうちょっと説明してくれ」という読者の声を産み出してしまった。皮肉な話だ。

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