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2013年7月 8日 (月)

ジェームス・ハーバート『霧』 ('75、サンケイ出版)

 名前は偏差値高そうなくせに、内容は心底くだらない英国お下劣ホラーの巨匠ジェームズ・ハーバート。本書『霧』は、人間を発狂させる霧が地中から湧き出して人がどんどん死ぬ、彼の代表作である。決して親戚に威張れる内容ではない。
 間違っても再刊などされないと思うが、古本では微妙なプレミア感をつけて結構出まわっているので少し前に入手し、それから随分時間も経ったことだし、いい加減読むかと頁を捲ってみたところ、これが物凄いことになっていた。

 細かい説明をする前に先に断っておく。
 ハーバートは間違いなくホモだと思われる。

 衝撃のデビュー作『鼠』(人喰いネズミが大繁殖しロンドンを襲う!)でも最初の犠牲者は孤独なホモのおやじであったが、『霧』においても、酷い目にあうのはまたしても片腕のホモ教師であり、彼が片腕を失った経緯も物凄くくだらない。
 ここで同じ英国のホモ仲間、否ホラー仲間のクライヴ・バーカーを、例えば代表作『血の本』劈頭付近に位置する「豚の血のブルース」やら「丘に町が」を思い起こしてみてくれたまえ。(知らない方に念のため警告しておくが、これらは本当に凄い傑作である。ちなみに『血の本』は第1巻目が一番テンション高く、後に行くほど尻すぼみになる、通称『寄生獣』方式を独自に採用している。)
 バーカーにおいても最も差別的で酷い死に方をするのは常にホモであり、「外道だから当然でしョ」的な大胆な割り切りかたで処理されていた。これらの短編でのホモの死にざまは本当に残虐非道であり、豚に喰われたり、東欧の村で巨人に踏まれたり、なにか根本的に恨みでもあるのかというくらい、バカげた報われない死に方だった。

 ホモの自虐傾向は、世界的に有名である。
 ゆえにハーバートもホモ。

 しかし、この洞察力に富む大胆な仮説を実証する根拠が微塵も手元に存在しないことを、私は諸君と共に悲しみたいと思うのだ。
 誰か真相知ってたら、教えてください。


 話が不穏当に逸れたが、私の手にした『霧』のすごい箇所は、正体不明の霧によって発狂した男子高校生たちが集団で片腕ホモ教師を殺戮する場面から幕を開けるのである。
 あー、長い前フリだった。
 以下引用する。
 (翻訳は『ドクター・フー/ダレク族の逆襲!』でお馴染み、関口幸男。)

 『数人の生徒が自分のパンツとランニングを脱ぎ捨て、すでに勃起しているペニスをこすりはじめた。小柄な生徒のひとりが教師の上に飛び乗ると、彼を女と間違えているように、はいろうとした。だが、小柄な生徒は他の連中に殴られ蹴られ、床に引きずり落とされた。
 「ハトたちのことは心配ないよ、ハーブ。そのうち戻ってくるさ」
 ハリーはカウンターに身を乗り出し、同情しているような顔つきをしてみせた。ハトなんてもんをここまで心配するなんて、まったく奇特なやつがいるもんだ。放って置いたら幾らでも増えるのに。
 彼にはまったく理解できなかった。』

 あれ?
 ホモの集団レイプ事件が、唐突に鳩の話に変わっている。ロンドンの新沼謙治か。しかし誰だこいつ。こんなやつ、いままで居たっけ。
 さすがにこりゃ絶対変だと思い、目次を念入りに確認しページ数をよくよく見直したらようやく真相がわかりました。

 私が手にした『霧』は、64ページまで進むと、次に再び49ページとなり、再度64ページまで進むと、次はいきなり81ページに直結しているのだった。
 
 物凄い落丁である。

 その間にホモの片腕教師は(おそらく)虐殺され、ロンドンで鳩を飼うのが好きなじじいのエピソードが勝手に始まっていたのだった。うわ。こりゃ酷い。
 版元のサンケイ出版はとっくに扶桑社に変わってるし、購入した時の古本屋のレシートなんてとっくに無いし。こりゃまいった。

 そこで、現在私の頭を悩ませているのは、絶対書かれている内容が下品でくだらないことは目に見えている小説に対し、その失われた数十ページのみに対して、またしても幾ばくかのお金を注ぎ込むのか、ということだ。

 そうしてしまいそうな自分について、正直どうかと思う。

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