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2013年7月15日 (月)

『長靴をはいた猫』 ('69、東映動画)

【あらすじ】
 
 ペロは長靴をはいた猫。
 エサになる筈のネズミを「いっさい食べない!」と、公衆の面前でさして深い考えもなく気まぐれに大胆発言しやがったので、ネコ社会を追われ逃亡の身に。
 じゃあ、普段何を食ってるかというとハムやチーズ、たくわん、ぶどう酒。人間と大差なし。結構グルメ。勿論、入手経路は常に窃盗か詐欺。ってどのみち犯罪者じゃん。
 さてさて、ネズミ捕りは人間と暮らすネコにとっては日常のお勤め。他さして働かないあいつら風情にしてみれば正統かつ立派な労働行為であるからして、ペロの罪状は実は堂々たる就労拒否にあたるのだ。今後の飼い主との外交折衝に致命的な齟齬を来たす可能性が大。事態を重く見たネコ行政当局は凄腕の殺し屋3名を派遣し、密かに反乱分子の抹殺を謀る。
 が、こいつら、凄い弱い。弱すぎ。原因は構成メンバー。三名のうち二名が鬼太郎のおやじ水森亜土。真剣に相手を殺そうと思うなら決してやってはいけない人選だ。
 ということで。今日も今日とて、気弱な男の子をダシにして、王家に取り入りうまい汁を吸わんとするあの悪逆千万な非道ネコを誰か止める者はおらんのだろうか?! 

【解説】

 こんな有名物件にいちいち、あらすじ紹介やら面倒な解説の必要はないのだが。

 夏。海。波濤。三角マーク。

 
今年も来ました、東映まんが祭りの季節到来。同意見の者は多数いるようで、去年は確か、年度ごとのマンガ祭りをフルサイズで体験できるDVDボックスという、高齢化社会に素晴らしく厳しい商品も出廻っていた気がする。自宅でまんが祭り。誰が喜ぶというのか。びっくりしたニャ。
 それにしましても、一度も真剣に考えたことがなかったけど、『長靴』とは実はブーツのことなのである。キャット・オン・ブーツ。ナンシー・シナトラか。これはどんなセクシーな雌猫ちゃんがお出でになるのかと思ったら、石川進のおやじ臭い声で喋るおっさんだったという。だが、こうした意外性が結果的に作品の伝説度を上げることに貢献していると思う。
 宇野誠一郎のアッパー過ぎるアドレナリン全開の楽曲における歌唱も素晴らしく、一休さんとの掛け合いも実にキマっている。就労拒否して歌って踊って浮かれるおっさん。ある意味ロックンローラー。ミック・ジャガーを彷彿とさせる。
 ならば、カラバ侯爵あらため百姓の子倅れピエールはキース、という役回りになるワケだが、それにしてはあいつ、剣技うますぎ。隠れて特訓の噂アリ。そんなのキースじゃないやい。やたら高いところに登っては墜落するデスウイッシュな姿勢だけは、共通する無謀なサムシングを感じさせるけど。
 他、お姫様役に榊原ルミ。魔王に扮するのが刑事コロンボ。

 大塚康生先生がハンマー一個の無駄なハイテンションで城を完全崩壊させるクライマックスの素晴らしさは、いまさら語るまでもあるまい。

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