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2013年6月14日 (金)

エラリー・クイーン『シャム双生児の秘密』 ('33、ハヤカワポケットミステリ)

 バカバカしいのに面白い、読んだら止まらぬクイーン地獄。
 この本はいつに増して特に語るべき内容が存在しない。アメリカン・ペーパーバックの素晴らしき精髄。文字で書かれた虚無空間。そこから這い出す蛆虫ですらエレガントだ。

【あらすじ】
 休暇でカナダへ出かけたお馴染みクイーン親子が、帰路山道に迷い込み、着いた所が山頂に立つ露骨に怪しい謎の医師邸宅。背後を断崖絶壁に阻まれ、部外者立ち入り禁止を大書きして貼り付けたような陸の孤島。
 おまけに麓では不注意なきこりのミスにより史上最大規模の山火事が発生。逃げ惑う熊、鳥、虫たち。脱出を阻まれ絶滅は目前、限界状況に瀕した金持ちどもの鄙びたセックス・パラダイスにこの期に及んで意味不明の連続殺人が捲き起こり、誰もが口をアワアワさせて逃げ惑う。果たして事件の真相は?死者が握り締めたカードの切れ端にどの程度に深い意味があるというのか?
 われらがアイドル・クイーン老警視は、今回も他所様とは歴然と違う風格を見せつけ、逃亡を図った容疑者を迷わず射殺。容疑があるというだけであっさり撃ち殺す。勿論誤射。拍手喝采。めんたまつながりのおまわりさんみたい。
 若手のクイーンはベッドで全裸を見せつける。B・Lかというくらい、シーツに包まり執拗に全裸で挑発。少しは推理しろよと説教したくなるほど、本業は終始ぐだぐだ加減で罐詰開けては喰ってばかりいる。
 かわいいシャム双生児も特別出演!あてずっぽうで適当に言ったら真犯人がわかってしまったという驚天動地の結末を見逃すな!恒例読者への挑戦状、それはこの本自体だ!

【解説】
 とにかくいろんな意味で凄い一冊。
 本当にメインディッシュのダイイング・メッセージがたいしたことないの。「それ、カード握り直すとか想定しないわけ?」
 猛火により消滅寸前の山荘を舞台に、かなり馬鹿げた殺人劇の幕が開く。犯人を炙り出す小学生の遊びみたいな心理試験(乱歩半泣き)も凄すぎる。傑作。

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