清水幸詩朗『2×BONE①』 ('13、講談社シリウスKC)
驚愕の新ジャンル、骨にこだわり骨を語る、骨ロマン登場!作者の清水先生もなんかビーバップ感覚溢れる講談社らしい名前で素敵ですね。
骨太な物語に期待して早速読んでみましょう。
【あらすじ】
温暖化による地球環境の激変が生み出した人類以外の知的生命体種族---骨人類(ヒューマンボーン)!!
脆すぎる血や肉ではなく、骨重視の方向で進化の可能性を見出した、元祖鉄骨娘・鷲尾いさ子嬢も大いに推奨する、地球最強の外骨格生物である。その肉体は強度・敏捷性・攻撃能力とも人類を遥かに凌ぐまさに生物兵器そのもの。
人類がぼけっと惰眠を貪っているあいだに、彼らは強大な地下帝国を築き上げ宣戦布告してきた!
「血と肉の時代は終わった・・・」
「これからは、俺たち、骨人間の天下だ!!!」
「なんでまた、骨風情がそんな恐竜帝国のような真似を・・・」
旧世界の支配者(恐竜)が人類皆殺しをもくろむならまだしも理解できるが、なんでまた骨が。そもそもなんで骨なの。巨大な疑問を抱えながら、骨人類と戦うことになった主人公の高校生・小泉ジロー。知能低い。
骨人類どもに対抗する唯一の手段、骨サプリを開発した天才科学者・小泉ジュンイチロー教授の長男だ。教授は対・骨人類対抗組織「シークレット・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン」を立ち上げ、直後に原因不明の爆発事故を起こして失踪。消息不明となってしまったが、その爆発の中心に残されていたのが、この真っ黒い謎のサプリメント。
ついては、ジローくん、これを飲んでくれたまえ。
「イヤだ・・・!!!絶対、イヤだ!!!
だいたい、なんで俺がそんなの飲まなくちゃいけないんだ・・・!!」
至極まっとうな理由で、突如現れた「アーサー・ブラウン」のエージェントたちに抗うジローであったが、こういう場面で敵が出現し緊急事態を迎えるのは、『ガンダム』であれ『エヴァゲリ』であれ、ヒットアニメの導入部セオリー。脚本家はもう少し知恵を使った方がいい。
もともと心臓の弱い設定で度を越したあわて者であるジローは、予期せぬ骨人類出現に動揺し、救心と間違えて黒サプリを飲んでしまう。たちまち、メキメキ立ち上がる外骨格。皮膚はケバだち紙のようにめくれて、ビリビリ裂ける。
「ああッーーー!!!」
煙が晴れてそこに立っていたのは、紛うことなき、一体の牛骨戦士だった!
「なんで牛骨やねん・・・!!」
ジローの怒りの一撃は宿敵・ホネホーネマンの頬骨を捉えて粉々に打ち砕いたのだった。
【解説】
なんというか、物凄く隙間の多い物語である。
進化樹から分岐した人類以外の知的生物といえば、例えばご存知「妖怪ハンター」のヒルコ一族とかを連想するだろうが、ここに登場する骨人類は明確な侵略の動機も与えられていないし、実際戦闘力もたかが知れている。根城を突き止め核爆弾の一発も落とせばおしまいだろう。
だいたい、骨が人類を目の仇にする理由がわからんよ。誰か俺に納得のいく動機を教えてくれ。
ちなみに先のあらすじ紹介は大嘘で、実際は主人公が骨戦士に変身するわけではなく、トランクに血を吸わせるというブッ飛んだやりかたで牛骨を召喚。あとはポケモンスタジアムみたく、ポケモンが勝手に戦ってくれるゲームシステムとなっております。
なんか、そういう、ぐうたらな子たちが増えたよ最近。
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