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2013年5月18日 (土)

川島のりかず『けもの喰いの少女』 ('87、ひばり書房)

 きみの血糖値中にのりかず濃度が上昇していくのが感じられる。
 あぁ、川島のりかずの記事を書きたい。あぁ、のりかずの記事を読みたい。いま書店で売っているどんなマンガより面白いのりかず。素晴らしいのりかず。思い切り食ってゲロ吐きそう。
 だがこれは一種の病気だと思う。そんな筈はないのだ。川島のマンガが素晴らしいなんてことはありえない。内容スカスカで10分あれば読み終えられる単行本一冊に、記事執筆だけで一ヶ月かけるバカはいない。誰に頼まれた訳でもなく自ら進んでやる仕事。レイバー・オブ・ラブ。そんな必要などぜんぜんないのに。人生にはもっと重要なことがある筈だ。かえるの養殖とか。きゅうり無限栽培とか。
 そういう反省を込めて、今度こそは簡潔かつ要領を得た記事にしたいと思う。嘘は書かない。嘘は嫌いだ。いまのネットは嘘ばっかりだ。特にウンベルケナシと名乗る輩の記事は酷い。妄想と一方的な思い込みしか書かれていない。資料価値ゼロ。信頼性皆無。こういう無駄は排除すべきだ。
 だから気になる人は実際に入手して読んでみればいいのだ。確かに面倒くさいけど、根気よく捜せばなんとかなる。

 今回採り上げる本の入手には5年かかりました。

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【あらすじ】

 冒頭、デブが校舎屋上からダイブして自殺する。
 ダイエットに失敗したのだ。3回も。衝撃を受けまくるクラスメイト。確かにみすずはデブであり、当然ドン臭くてクラス全員から疎まれていたけれど、食欲はそれでも相変わらず旺盛だった。「死ぬ前に食うか、普通?そんなに?」ってスレッドにコメが付くぐらい、死亡直前の授業中にも菓子をボリボリむさぼり食っておりました。そんな女がなぜ?
 そういや今朝も新宿駅で山手線に飛び込んだ人が本当にいましたが(実話)、いっけんシンプルそうに見えても、人間そんな簡単に自殺するもんではない。背後になにか複雑な事情がある筈だ。借金とか。あと、借金とか。借金とか。

 そういった複雑な社会状況を鑑み、早速捜査を開始するノン子以下三名のクラスメイト。
 あのとき、死に際、校舎の下で頭がカチ割れ脳がはみ出して血塗れになったみすずは、偶然駆け寄ったノン子の腕を握り締めて囁いたのだ。
 「ゲゲゲの女房・・・」と。
 ダイイングメッセージだ。
 ちょっと古くて最近あまり使われなくなった手法だけど、これぞ明らかに死に逝く者から生者に宛てたお手紙である。受け取った者は必死こいて謎を解かねばならない。解かねば井戸から貞子が出てきて狂い死ぬ。有名な都市伝説だ。
 

 「・・・しかし、どういう意味よ、”ゲゲゲ”って?」

 放課後のクラスルーム。夕暮れ時の柔らかな斜光が室内を照らしている。
 メガネのとしえは三名の中で一番アタマがよさそうに見える。だがそれは見かけ倒しで、単に視力が悪いだけのことだ。ミッキーマウスの缶バッチを、これ見よがしに胸に留めてる時点で彼女の知能程度は知れるだろう。

 「ふむ、犯人はもしかして水木プロ関係者・・・?!ドラマ化もされてるから主演女優似という線も推理として捨てがたいわ!」

 おかっぱのリエが息急き込んで発言するが、オタクっぽくて駄目だ。こいつは、実は永遠に生きてる三十歳主婦で悪魔と契約して女子高生の姿にして貰っている。キリストを刺した主犯は実はこいつだ。だが、そんな裏設定が本筋に絡んでくる可能性はまったくない。

 「あんた達、いい加減にして!
 みすずは無念で死んだのよ!少しは真剣に考えてあげて!」


 形容しがたいボリューム感を持つ髪形のノン子(※ジャケット写真参照)は机を叩いて怒鳴りつける。彼女だけが真剣だ。そりゃそうだ、誰だってデブの呪いは受けたくない。

 「ともかく、みすずの身辺を再度洗ってみるしかないわ。としえは担任にあたってみて。進路や成績で悩んでなかったか、聞き出すのよ。
 りえは部活やクラスメイトの線から。あたし達の知らない交遊関係があったかも知れない。特にシンナー・トルエン系。禁断症状からくる妄想が昂じて錯乱し自殺に到ったのかも」

 「ずいぶん、采配テキパキしてるじゃん。異様に。軍師かよ。
 ・・・で、あんた自身は?」

 「あたし・・・?
 あたしは、カレシとおデーーート!!」


 その場の全員が一斉に転倒したもので、教室の床が抜け落ち階下の低学年クラスが丸一個壊滅したが、既に課外時間だったので香典料は最小限ロットで済んだ。学校関係者どもは年度決算報告書の隅にその事実を記載し、しれっとして「不慮の災害」と位置づけた。もちろん災害を引き起こした当事者どもが瓦礫に埋もれつつも全員無事だったのは、毎度のこと。いつも罪なき者が貧乏籤を引くのだ。
 
 さて、ノン子のカレシであるが、同じクラスのこいつである。

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 勘のいい読者は既にお分かりであろう。みすず(デブ)の死に、この奇怪な髪形の男は深く深く関与しているのでありまして、本作品は実にその辺の真相を探る本格ミステリーとして読み解くことが可能だ。無理やりですけど。
 
でも信じろ。表紙をよく見たまえ。


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 さて、読者の脳裏に垂れ込める暗雲がラピュタ上空の青空の如く晴れ渡ったのを確信したうえで、物語をいつもの川島発狂路線へと戻しますが、カレシとその後うっふんあっはん、ぎったんばっこんひたすら楽しんで帰宅し、幸福の絶頂にあるノン子を突如襲ったのは恐怖の異常食欲だった。

 「おかわり!」
 晩飯のごはんを食べる、食べる。傍らで妹が嫌味を言っても止まらない。
 おかわり、うまい。
 最初っからおかわりが食べられたらどんなにいいだろう。そんな吉田戦車みたいな、とめどない思考を廻らせながら食い続け、デザートの杏仁までカッチリ完食し切った。

 「アネキ、あんまり食いすぎるとブタになるぞ!」

 意地の悪い妹は、ぜえぜえ肩で息をし全力疾走後のマラソンランナーみたいになっている姉を見て、思わず呆れて言った。
 その、妙に細めた目に向かって、姉は深海から響くような重低音で、

 「・・・うるせえ、この、キツネ目の女!!!
 グリコ誘拐犯、実はおめえじゃねーのかよ!!!」


 ギラリ、目が光る。心なし今日の姉は剣呑だ。これは。
 その瞬間、強烈なアッパーカットが左頬を直撃していた。ぐらり、よろめく。明るく楽しい家族の食卓がたちまちベトナムの戦場並みの泥沼に。
 びえん、びえん泣きながら反撃の連続パンチを空振りさせる妹。思わず怒鳴りだす母親。TVで野球拳を観ていた父親も黙ってはおられず、立ち上がった。

 (あれ・・・?どうしたんだろ、わたし?!)
 最大級の怒号が交差する真っ只中で、ノン子は、先ほどの凶悪すぎる自分の言動をいっさい記憶に留めていなかった。

 その日からノン子を連続的な異常食欲が襲う。奇怪なことに食糧をゲットする瞬間の記憶はいつも途切れ、気がつくと目の前にエサが並んでいるのだった。
 ファミマで自前で買ったチョコボールがカバンに入っていると、
 (誰が入れたんだろ、コレ・・・?)

 授業中ボリボリ喰っていて発覚、教師に取り上げられると、
 (バーカ、まだペロペロキャンディーがあるんだよーーーん!)
 キリがない。
 無邪気といえば聞こえがいいが、なんだかおっかない娘になってしまった。自覚症状がないから反省もない。周囲の忠告も聴く耳持たず。最悪のシナリオ。
 相変わらず自宅ではおかわりを無制限に繰り返し、「オバQかよ!」と家族の心胆を寒からしめる。
 まるで何かに取り憑かれているかのようだ。
 ・・・って、まぁ、実際に憑依されていたりするのだが。

 どんどんエスカレートする食欲はもはや誰にも止められない。教室で齧るおやつも加速度的にヘヴィー度を増し、今日はチョコレートのショートケーキ詰め合わせ。3個。
 またか、と取り上げようとした教師に対し、遂にぶち切れ、殴る蹴る。

 「オラ、オラ、オラ!!!」

 女学生の繊手にどんな力が秘められていたのか、顎を砕かれ、ストマックに強烈な回し蹴りを喰らった教師は不覚にも速攻でのびてしまった。ご丁寧に胃液まで吐き出して、スーツが汚物まみれで転倒。派手に薙ぎ倒された椅子と机の間に転がり込む。到底ありえない事態に口をポカンと開けて見守るしかないクラスメイト達。実際何が起きているのか、誰もうまく説明できない。
 そんなお間抜けさんどもを不吉極まる凶眼でギロリ睥睨しながら、ぼそり、ドスを効かした声で、

 「・・・あたしの食欲を邪魔するやつは血ィ見るどォ!」

 キマった。
 見事にキマったところで、またチョコショートを口に運ぶ。
 グチャグチャ。
 不気味な咀嚼音だけが沈黙の重たい教室に響いている。
 親友も、つるんでいた仲間も、もちろんカレシも、彼女にかける言葉が見つからなかった。条理の外側へ一直線。勝手に超音速ジェット機に乗って旅立ってしまった。
(つづく)

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