ロバート・アルドリッチ『ロンゲスト・ヤード』 ('74、パラマウント)
スポーツ大嫌いだからスポーツは観ない。ゆえにスポーツ映画も観ない。
そもそも正々堂々勝負ってのが嫌だ。チームプレイも嫌いだ。オリンピックなんか勝手に日本国民を代表して世界に臨んでくれちゃってるあたりが、当然大嫌いだ。
こういうひねくれた人間が感動するスポーツものこそ、まさに本物ではなかろうか。血がグランドに数メートル噴きあがる『アストロ球団』とかみたいにさ。頼むよ。面白いの観せてくれよ。
さて、『ロンゲスト・ヤード』は、世界で一番男気のある映画監督アルドリッチが、男臭さで定評あるバート・レイノルズ(ハゲ)を主演に迎えて放つ囚人アクション大作である。
塀の中の囚人がどうやってアクションするのか?
わかりやすいのは『大脱走』やら『アルカトラズからの脱出』みたく、ズバリ脱獄をテーマにしてみることだが、いささか新味に乏しい。脱走映画の結論がいつも「無事逃げのびた」か「結局捕まりました」しかないのも苦しい。“閉鎖空間からの脱出”という意味では『CUBE』なんかも同じ括りだが、あれも面白くなかったでしょ?見え見えだよね。
やはりブレッソンの『抵抗』に勝つのは難しい。って私、『抵抗』観てないんだけど。ごめん。知った口をききました。
だったら、「囚人になにかやらせりゃいいじゃん!」
そうだ。
『特攻大作戦』(大傑作)で囚人を空輸してナチスを襲わせたアルドリッチ、今回は囚人に塀の中でフットボールをやらせて看守どもに大逆襲!という映画を思いつきました!
看守チーム対囚人チーム。
これは面白い。平気でどついたり、蹴ったりできる。首の骨を折ったりも。要は、手加減なしの堂々たる殺し合いである。なんて立派なテーマだ。
合法的殺人ゲームというジャンルなら、『ローラーボール』だって『デスレース2000年』だって仲間である。『バトル・ロワイヤル』だって。って、『バト・ロワ』観てないんだけど。まぁ、どうでもいいじゃん。
どう考えても無茶だが、『ロンゲスト・ヤード』には、ルール遵守の世間が逆立ちしてもおっつけない反逆の美学がある。画太郎先生の『地獄甲子園』みたいなもんだ。ただし外道高校対外道高校の。最悪の潰し合い。だが勝負事の本質とはこういうもんだろう。
でも、そんな最悪のシチュエーションから絶望や裏切りばかりでなく、野太い笑いやら男臭い友情やらを堂々と汲み出してくるあたり、さすがはアルドリッチという感じがする。
ここに出てくる男達は皆あっけらかんとして明るいのだ。殺人狂のハゲも含めて。もちろん、ジョーズ以前のリチャード・キールも含めて。本当に不思議だ。
スポーツ嫌いのきみも、冒頭のバート・レイノルズの傍若無人すぎる行動だけでも見てやって欲しい。女をどついて張り飛ばす。かっぱらった車で警察とカーチェイス(しかも勝つ)。飲んでた酒のグラスを後部座席に放り投げて、カントリーのかかるバーで昼間っから大酒飲み直し。あげく逮捕。
男たるもの、かくありたい。最高。
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