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2013年5月31日 (金)

レイ・ケロッグ『人喰いネズミの島』 ('59、WHDジャパン)

 プラスチック製の牙をつけた野犬にモコモコの毛皮を被せて人喰いネズミだと言い張る、度胸満点の映画。観るときっと後悔するだろう。だからもう観るしかない。
 だいたい、監督の名前がケロッグだ。ケロッグ。ケロケロ。もうダメな匂いがぷんぷんするだろう。

【あらすじ】

 嵐が近づく絶海の孤島。周囲に聳える雲の峰を眺めながら補給物資を運んで来た船の船長さん、手下の黒人をどやしつけている。碌に働かずケツ掻いてばかりいるからである。
 
 「オートパイロットができたら、お前なんか絶対用済みなんだぜ!」
 「そりゃあんたもだろ、キャプテン!」

 
 豪快に笑い合うふたり。さっぱり面白くない。
 
 「だいぶ、雲が出てきたな・・・」
 「なんで?こんなに晴れていて、上天気じゃないですか!」
 「バカ、俺たちゃ既にハリケーンの目の中にいるんだ!そんなことも解からんのか、この、おたんこなすめが・・・!!!
 とんぼがえりは出来ないぞ、今夜は島に一泊だ!」


 ところが、目的地の孤島は、ネズミ博士がネズミの繁殖について研究する実験施設しかないきわめて不便なこの世の地獄だった!この情報を得た時点で、機敏な人なら露骨に詐欺っぽい空気を読み取るだろうが、あいにく二名は真性のバカだった。
 港なんかないから、ちょっと沖合いに錨を降ろしボートを用意。エメラルドグリーンの海に漕ぎ出す。
 島に上陸すると、さっそく博士が娘を連れてお出迎え。博士の助手がライフル銃を構えて随行している。ものものしい雰囲気だ。
 それでも博士、薄い頭でにこやかな笑みを浮かべて、

 「諸君、よく来たな!歓迎するよ!さっそくだが、荷物を降ろして、娘を連れてさっさと島を出て行ってくれ!」

 初対面からむちゃくちゃ言ってる。
 船長、ニヒルに唇を歪め、

 「おいおい、こいつは御挨拶だな!!
 史上最大級のハリケーンがこの島目指して接近してるんだ。いま出航はできないよ!荷降ろしもなしだ!」


 「キャッホー!」と歓声をあげる黒人。こいつ、心底働くのが嫌いらしい。

 「では先に断っておくが、実験の失敗で巨大化した人喰いネズミの群れが300匹、この島を徘徊しとるんだ!やつらは何でも食い尽くす!この島で食べられるものは、あらかた食べ尽くした!
 今度は人間を狙ってくるぞ・・・!」


 という博士の説明の合間に、いちはやく巨大ネズミに踊り食いされている黒人。一同唖然。
 博士の助手がすばやくライフルを構えるが、背後から接近してきた別の一匹に足を噛まれて砂浜に転倒した。

 「うぐッ、ぐぐ、ぐッ!!!」

 地面に倒れ、激しく痙攣していた助手はものの数秒で動かなくなった。

 「これは・・・」
 訝しげにその様子を見つめる船長。博士はちっとも慌てず、周囲を跳梁し始めた巨大ネズミの動きを目で追いながら、

 「なぁに、簡単なことだ!
 突然変異したやつらは、牙から強力すぎる毒を注射するのだ。コブラの数億倍、ガラガラヘビの数十倍の威力を持つ凄すぎ、猛烈すぎな毒だ。
 噛まれた人は、ほんの数秒であの世へ行ってしまうのだ!」


 「ダメじゃん!ネズミ、強すぎじゃん!」

 博士の娘はわっと泣き出した。

【解説】

 こうした本当にどうしようもないタイプの映画には、ある種危険な魅力の磁場がある。安さか。

 たしかに舞台を無人に近い島にでも設定すれば、雇う役者やエキストラはかなり削減できる。
 この映画の登場人物は全部で8人。そのうち半分は照明さんとか大道具さんとか、スタッフが兼業で出演。主演女優はスウェーデンから出稼ぎに来たばかりで、英語がまともに話せない。
 「あたし、スウェーデン訛りでごめんなさい・・・」
 と、劇中でもさんざん謝り続ける。博士が北欧出身という伏線なのかと思ったら、そうしたフォローは一切存在しなかったので、この部分は単に監督の本音なのだ。一方的な楽屋落ち。クスリともしないが、果たして本当に英語国民にも面白いのかそれ。

 こんな南の島(所在地不明)くんだりまで来て、博士の家で主人公達がやたらカクテルばかり飲んでいるのも変である。いや、場所がリゾートホテルとか豪壮な屋敷だったら理解できますが、どう見たってただの掘っ立て小屋なんですよ、博士の研究所。
 壁とか、灰色のプラスターボードでね。壁に何か掛かってたりしない。家具もほとんどない。ドリンクカウンターの台と、ソファが一本あるだけ。
 要は、いっさいセット組んでないんだよ。
 
 そんなとこでマティーニ掻き回して真顔で会話されても困る。
 

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