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2013年5月11日 (土)

杉村麦太『吸血聖女キリエ』 ('02、秋田書店少年チャンピオンコミックス)

 西部劇。吸血鬼。常に片袖が破れた娘。
 彼女の片袖がいつ破れたのかといえば、第一話、銃撃戦の最中に鉤付きロープに腕を絡めとられた瞬間なのだが、それからずっと左袖は破れたまんま。SEIYUなどない1870年代西部の荒野が舞台であるにせよ、年頃の娘だ、もう少しなんとかせいよと思う私だ。
 この作品は、いちいち奇矯を呈する不自然な要素のゴッタ煮である。
 だいたい舞台が開拓時代のアメリカだ。ゴージャス。全米に吹き荒れる狂血病の嵐、原因は、まぁたぶん、ヨーロッパから流れてきたらしい吸血界の大物の仕業。
 大物の血を引く若い娘が主人公で、これがキリエ。桐絵ではなくカイリー・ミノーグのKYRIE。なんでか荒野で極限のミニスカ装備なので常にパンツが覗く。飢えた難民でもおなかいっぱいですというくらい、パンチラ過剰供給。コスチュームを考えた時点で気づくべきだったのだ。
 パンツ丸出しの小娘に射殺される悪党なんざ、全員たいしたことないよ。
 だが、奇妙な魅力もある。吸血鬼の再生能力を持つ小娘は、体力的には所詮小娘レベルでしかない。痛覚も常人と一緒。腹を刺されて痛みに耐えながら逆襲するとか、マゾっぽい。ていうか絶対マゾでしょ。死なないし。基本的にこのヒロインの造形は『銃夢』のガリィへのオマージュだと思うが、あちらはベースがメカ仕掛けなので痛くない。首だけになっても平気。そこへいくと、キリエは血を流す。必要以上に流血する。あと死体喰ったりもする。そこが素敵。
 まぁ、なんですよ、怪獣に変身したり空飛んだりの反則を投入しないで、律儀にガンアクション主体でやろうというのはこんち勇気ある選択ですよ。リアリズム重視とは言い難いけど、そこはそれ、マンガですから。個人的にはラーラマリアだとか全体に漂うアニメ臭が鬱陶しいんですけど、ガチでコアやる枠じゃない。これでいいんじゃないかと思います。

【あらすじ】

 アリゾナ州サンベルナルディーノ。全米に猛威を揮う狂血病の大流行に対抗すべく、この小さな町でも自警団が結成され、せっせといけにえを捜し出しては狩っていた。今日の獲物は教会の若いシスター。ウホーーー。
 そこに現れた全身黒ずくめの少女。差してる日傘も真っ黒。
 「・・・うざい!」
 一言叫ぶや、傘の先から銃身突き出し銃乱射。アクの強いチャンピオン顔の悪人達をバッタバッタと薙ぎ倒す。こりゃ完全に狂人だ。生き残った連中はからくも早馬を飛ばして即刻ボスにご注進。実は彼らは自警行為を隠れ蓑に、鉄道工事の地上げを請け負う悪党集団だったのだ。悪い奴ってのはいつの時代にもいるもんでございます。

 「あの辺で鉄道の給水地として使える場所は、あの教会の井戸しかないんだわ!コンチキショウめッ!」

 フォークで部下の手の甲を滅多刺しにし怒る悪玉。滴る鮮血の赤い色。
 一方救い主として教会に迎え入れられ、ご馳走を振舞われる少女は、どんなに勧められてもいっさい箸をつけようとしなかった。ってまぁ、箸ないんですが。不審がるシスターを尻目に、馬鹿なガキどもはすっかり少女になついてしまい、

 「おねえちゃん、おねえちゃん、遊ぼ!」
 
 で、終日マリオに付き合わされた。
 疲れる一日も終わり、草木も眠る丑満どき、空腹のあまり夜中にベッドを抜け出して教会墓地に埋葬されていた悪党の遺体を「うま、うまと最高の笑顔で頬張っていると、
 
 「ああっ!人喰い行為発見!」

 しょんべんに起き出してきたガキに見つかっちまった。やべえ。

 「おまえも、コレ食え。ホレホレ」

 と、齧りかけの太腿を投げ与えてやると、子供っちゅう畜生の浅ましさ、疑問も持たずに一緒にガリガリやりだした。そのまま朝まで仲良く齧っていたら早起きしてきたシスターに見つかって、こっぴどく叱られた。

 「死体を粗末にしたりとか、もう、そういうのありえしまへんで!!」

 そこへ悪党集団が保健所のおじさんを先頭に大挙して来襲。ヴァンパイアを狩るのは保健所の立派なお仕事なのである。墓地で死体を漁っていた二名は即座に吸血鬼と見做され、首に縄をつけられてキャンキャン啼きながらしょっぴかれて行ってしまった。

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