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2013年3月17日 (日)

水野良太郎『劇画U.S.A.聖女伝マリリン・モンロー』 ('73、朝日ソノラマ)

 有態に言って、水野良太郎の絵はかっこいい。
Img0032
 余分な描き込みを排して、さらにパンチが効いていて、人物やら構図が大胆で、鮮烈。ガイジンの顔がデフォルメなしでちゃんと描け分けられるのも、実は驚異的。どのキャラがどれかってのが速読しても充分見分けがつくってことだ。なかなか、こうはいかない。
 相変わらずペダントリーを駆使し奇を衒った滝沢解の原作モノだろうとサラサラと読めてしまう。
 この読み易さの秘密はなんだ。
 ある時期までのアメリカン・コミック最大の特徴である、筆とスミベタ。ダイナミックな描線。
 良太郎先生はアメコミの基本を忠実に実践し、たまに背景にトーンを貼ることはあっても、殆どをブラックアンドホワイトで押し通す。躊躇なく、最小限の資料をチラ見したりしながらも、筆とペンとは常にノンストップで走らせて、かなり凄い速度でジャンジャン描いているんじゃないかと思われるんですよ。でなきゃ、あぁならない。本当にうまい人はスピードをあげても線が荒れない。構図がブレることもない。
 水野先生の絵柄って、わが国での扱いにおいては本来イラストレーション系の絵の筈なんです。そういうイラストレーター、何名かいますよね。でも、それら類似品とは明らかに違う。
 止まって見えない。ちゃんとマンガの絵に見えてる。だから普通にマンガを読む速度で読める。良く考えると、あたり前の事なんだけどね。だって、もともとマンガが発明した絵柄なワケですし。
 でも、それを高度なレベルで肉体化できてる人って、実際、本当に少ないんだ。
 ウソだと思うなら真似してみ。凄いことやってんですよ。平然と。

「夜ごとモンローを夢見て
 そそり立つ男根をつないだとしたら
 /おそらく天国の入り口まで届いたにちがいない!」
(本書P.101)

 こういう万事大風呂敷な滝沢のト書きに、旋回する渦状星雲を一発スマートに描き込んでおしまいにする辺りなんざ、グッときますね。かっこいい。
 『キャプテン・フューチャー』の挿絵は、問答無用で絶対に良太郎が最高!と思う方は必読。
 われわれは少数派なんですってさ。

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