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2013年3月30日 (土)

三条友美『寄生少女』 ('13、おおかみ書房)

 年度末。出会いと別れ。ソドムとゴモラの、この季節。

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 満開の桜が花吹雪を散らす袖ヶ浦海浜公園のベンチで。午後。

 怪奇探偵スズキくんは、携帯メールをこまめにチェックしている。桜は見ないが、メールはよく見る。結構な額をつぎ込んでレアアイテムを取得して以来、お友達リクエストが絶えないのである。それらを冷酷に蹴飛ばしていくのが、此処最近のスズキくんの日課になっている。

 ふいに電話が鳴った。
 エリザベス・モンゴメリーが鼻を動かす仕草に似た音だ。

 「似た音ではなく、実はこれオリジナルサントラなのです。」
 スズキくんは律儀に解説を加える。携帯の表示画面を斜め読みして、
 「おや、久しぶりだな。これは地獄の一丁目からの通信だわ。・・・もしもし、“怪奇あるところスズキあり”でお馴染み、ボク、スズキくんですが。」

 『も~し~、も~し~・・・』

 地の底から響いてくるように低い声がした。不景気の国から不景気をセールスに来ているような、活気が微塵もない声だ。

 『カッパドキアの大統領ですけど~~~』

 「そんなワケあるかい!!それはトルコの地方名だ!あるいは土地の名前だ!」

 『“妖精の煙突”と呼ばれる奇岩やら、その下に広がるギョレメ谷やら。旅はロマンというけれど、そんな奇天烈な名前の観光スポットに世界各国から観光客が殺到!!とは、いとおかし。』

 「いとおかし。・・・って、あんた、誰?」

 相手はガクンとつんのめったようだ。
 『おやじです。古本屋のおやじです。』
 慌てて被せてきた。
 『頼むよ。忘れんなよ。基本設定。オレが怪しいお店をやってて、あんたはそこの常連客なのよ。憶えてる?』

 うららかな午後の陽射しに無数の白い花びらが舞う。木々の織りなす柔らかい影がオレンジの舗道に複雑な網目模様を描いていた。
 「はァ・・・そんな時代もあったねと笑って話せる日が来ますよ、おそらく。」

 『・・・むむむ。
 テメエ、ちょっと目を離した隙に、悠々自適を気取ってやがるなー。草食系かよ。便所メシかよ。ふざけやがって。見てろ。捕獲装置、ゴー!』

 ゴ、ゴ、ゴゴ、ゴゴ、ゴゴ、ゴゴ。
 
不意に強烈な地鳴りがあたり一帯を揺り動かし始めた。水鳥がばさばさと飛び立つ。地面が上下に揺れ出して、まともに立っていることが出来ない。
 遊歩道をのんびり自転車で走っていたジジイが転倒し、アベックの片割れの女がキャッと甲高い悲鳴をあげて足元に蹲った。
 
 地面を引き裂いて、巨大な何かがせり上がってくる。

 轟音は周囲に満ちて耳をつんざくばかり。土砂が驟雨のように降り注ぎ、視界が茶色く霞み出した。スズキくんは、倒れかかる水銀灯の柱部を巧みに交わし、完全に宙に持ち上がったベンチの端を掴んで背もたれの舳先へと飛び移る。
 身を乗り出し注視する。

 「トライポッドだッ・・・!」

 流線型の滑らかなボディが、巨大すぎる三脚に支えられて中空に伸び上がっていく。どんな動力源なのか窺い知ることは出来ないが、金属装甲の切れ目から激しく白い煙を噴き出し、その都度に巨龍猛獣の吠え声みたいな凄まじい絶叫が響き渡る。

 「早くも、本筋と関係ない話にする気まんまんだな・・・」
 忍者刀を密かに抜き放ちながら、スズキくんは呟く。先程の携帯ゲームにうつつを抜かしていた腑抜け野郎とは最早別人である。
 「だが、そうはさせるか。」

 ばちこん。ばちこん。
 巨大な瓶ビールの栓を外すような音がして、トライポッドの側面から丸いハッチ部が地面に転がり落ちた。カッと、空いた凹面から強力な閃光の矢が解き放たれる。攻撃兵器ではない。探照灯らしい。グルグル回転し出した。

 『出て来ーーーい。スズキくんheart
 のんびり、マンガの話でもしようではないか・・・?!』


 トライポッド内部から、金属的に変成された古本屋のおやじの声が流れてくる。

 『われわれが争う必要はないんだ。それぐらい、キミにもわかってるんだろ・・・?!』

 「・・・確かに、戦う理由はまったくないんですが・・・」
 激しい怒りに奥歯をギリギリ噛み締めながら、スズキくんは呟く。
 周囲は変わり果てた惨状を呈している。転がる死体の山、また山。倒れた自転車のジジイはビクリとも動かない。アベックは黒焦げだ。強烈なトライポッドの噴気を浴びた死体はことごとくどれもがアフロの黒人と化していた。
 人が焼ける独特の臭気が、あたり一帯に漂っている。

 「・・・たかがマンガの話をするために、袖ヶ浦海浜公園を壊滅させやがって。
 ・・・テメエ、何人殺したんだ?」


 「な、ん、に、ん、殺したんだァーーーッッ!!!」

 怒り心頭のスズキくん、髪の毛が金髪になっている。
 瓦礫の山から全速力で空中に飛び出し、トライポッドの頭上で静止した。風切る速さとはこのことだ。

 「髪の毛が金髪になると、どうして飛べるのか。
 実はこれには海より深い深い事情があるのですが、今はお話している時間がありません。」

 忍者刀を頭上に構えてを溜めながら、スズキくんは申し訳なさそうに言った。常識の理解を遥かに越えた不測の事態に、トライポッドのおやじ、ジッと様子を窺っている。
 言葉を続けた。

 「強いて言えば、あの世界では金髪だから飛んでいたワケでは決してないということです。最初っから平気でひゅんひゅん飛んでいた人達が、金髪になって更にパワーアップしたのです。物事には順番があるのです。
 でも途中から観てるチビっ子達にしてみれば、金髪だから飛ぶんだ、金髪だから強いんだ、という誤解に横滑りしていっても何の不思議がありましょうや?
 って、すっかり説明しちまいましたが・・・」

 忍者刀の先端にふいに紫色の光球が膨れ上がった。溜まり出したエネルギーが形を現したと見える。バチバチと激しく放電している。

 「・・・お待たせしました、ようやく完成。では、よい子のみなさん、いきますよ。
 ご唱和ください。
 電・ 気・ ダ・ マ・ ーーー!!!」

 
大きく振りかぶった刀の先から巨大な稲光りが迸り、ゆらりと揺れた光球が、次の瞬間物凄い加速をつけて地上へ向かって一直線に突っ走った。
 ガ、ガガ、ガガ、ガガ・・・!!!
 大気が悲鳴をあげて絶叫し、溢れ出す光束に周囲が暗黒に染まる。

 「これは、ボクが極端な静電気体質なのを応用したものです。」
 スズキくんはニヤリ笑う。「地球のみんな、オラに電気を分けてくれ。勿論、電力会社にはビタ一文払ってませんけどね!」

 迫り来る巨大な電磁場の塊りを前にして、おやじ、なす術もなく打ち砕かれてしまうのか。そもそもこれは何の話なんだ。読者は全員置いてけぼりか。
 閃光が走り、大地が切り裂かれ、やがて大爆発。
 猛然たる火の粉と煙が消え去った後には、最早地上に生命はひとかけらも残されていなかった。

 ・・・と、思いきや。

 バトルバトルの連続に心底嫌気がさした頃の鳥山明が引いていた、非常にささくれ立った描線に良く似た岩塊群が縦横無尽にごろごろ転がる、荒涼そのものの筈の殺風景の真っ只中に、微かに動くものがある。錯覚か。
 風にたなびく茶色の塊り。
 煤けて真っ白く埃を被ってはいるが、それは人間の髪の毛だ。
  いや、ズラだ。
 紛うことなき、見事なズラである。
 ズラは生きていた!

 観客に滂沱の涙を誘う感動。レッドカーペットに整列したセレブ達が一斉に拍手。最高のスタンディング・オベーション。映画『風と共に去りぬ』より「タラのテーマ」、ドーーーン。

 現場上空で困り顔をしていたスズキくん、腕組みしながら降りてきた。

 「まったく、やってくれますね!
 お陰で、ボクまで大量殺人の片棒担いじゃったじゃないですか・・・」


 地中に全身埋まってズラだけ風に靡かせているおやじ、モゴモゴした声で、

 「うるへぇーーー!
 わしの前フリにすぐ答えない貴様が悪いのだ!
 これじゃ、すべてが台無しなのだ!」


 「スピルバーグに無断でトライポッドまで出して。まァ、まったく役に立ってませんでしたけど。で、ご存知金髪人間ネタがあって、最終的にバカボンのおやじのまったく似てない物真似まで聞かされるとは。なに考えてるんすか、ホント?
 実は心の広い方が多いと評判の常連読者もそりゃ怒り出しますよ!」

 「それでも、レビューだけはちゃんとやるから勘弁してくれ。今回採り上げるのは、かの三条友美先生のホラーマンガ短編集だ。面白かったのだ。」

 「・・・エエ?
 三条先生といえば、読後感最悪のエロ漫画の巨匠・・・」


 スズキくんは適当に応対しながら背後をチラ見する。大爆発はあたり一帯の地盤を完全に破壊し、瓦礫の山に変えた。
 この付近は埋立地だ。海抜ゼロメートル以下。
 ということは・・・・・・。

 おやじは気づかず続ける。
 「三条先生の思い出といえば、あれは二十歳の頃かな。明確なオナニー目的で購入した『少女菜美』シリーズの単行本が、あまりに抜けないので驚愕いた記憶がある。
 劇画の人だから人物もまんこも下手じゃないんだよ。描き込み重視のシャープな絵でね。ま、少女菜美、むかしのセーラー服着用なんですけど。厚ぼったい生地のやつ。スカート丈も時代を感じさせますよ。そんな娘が地下室で監禁陵辱されるという。一種のファンタジーですよ。ディズニー的な。思いっきり浣腸されてますけど。
 そんな素敵なマンガがなぜ抜けないのか。
 ま、あたしは昔から、そういうことばっか重点的に気にして生きてきたんで、すっかり人生狂ってしまいましたが。それはともかく。熟考の末突き止めました。事の真相。

 三条先生のマンガ、ヒロイン級の女が全部同じ顔だったんですよ。石井隆的に言えば、全員が奈美状態。ウゲゲゲボ。
 髪形とか、身長とか、当然衣裳とか名前は全部違うんですが、基本、同一人物。同じ女がよがってる。よがり顔、すべて同じ。この女で抜けなきゃ一生抜けないってことですね。抜け忍。それ抜け違い。
 でも、いいじゃん?エロマンガで人物の描き分けなんて・・・それよか、なんでこの女では抜けないのか。そこが重要だ。
 
 そもそも全国マンガ地図が整備され、「巨乳」「垂れ乳」「幼女」「めがね」といったキャラクター属性の記号化・類型化が意識的になされた現代では、既存の絵柄の援用もリメイクと称するデザイン流用も平気でアリなワケですが、どんなに技術が進化しようと何を是とし何を非とするかという選択は依然作家側に委ねられたまま。そりゃ当然だよねー。
 だから、エロマンガの価値を決定する最重要ファクターはキャラ属性じゃない。テクニックでもない。
 作者入魂のよがり顔を見せまくる主人公に、読者がうまく乗っかってくれるかどうか。
 
読者がそこに描かれた痴態のオンパレードに対してグッとこなければ、それはもう、目もあてられない無惨な失敗。そういう根本的な次元のバトルなの。

 
さて、この女。
 
この時期の三条先生は、特に執拗に一個の勝負ダマにすべてを賭けて投げ込んでたんでしょうな。実に研ぎ澄まされた勝負。意図的にやってたんだと思います。縄の締めに遊びなし。そんな感じ。キメダマ一個だけ限定。しかも殺人魔球。ストイックな男の世界。
 だから笑いはないし、おっかない。
 こわいから抜けない。
 責めのテンションは常に高いし、読者の意表を突く残虐展開が次々飛び出すし、面白いから最後まで確実に読み通せるんですけどね。でも、残念ながら、出てくるヒロイン役の女ってのが、揃いも揃ってギンギンに薬物キメてこの世の外側を見ちゃってるような濃い女ばかりなんですよ。
 劇画の女って基本みんな思い詰めてるじゃないですか。人を刺しそうな。貞子揃い。こわい。だから結末もこわいことにしかならないんだ、実は。
 三条先生って、本質的にホラー作家なんだと思います。
 その方が理解しやすいから、そう思え。

 近年の作品を見ると、キャラのバリエーションが増えて、見た目の派手さが増してますけど、でも、全員見事に同じ目です。同じ目つきを共有してます。そこは作家の個性で絶対譲れないんでしょうな。 
 
吊り。蝋燭。腸内拡張。コアでマニアックなプレイメニューに出し惜しみはない。むしろ浣腸液1.5倍増しで注入しすぎ。お陰でヒロイン、必ず吊られて、妊婦状態で人体破壊。切ったり刻んだりも当然あるので、血とかドバドバ出てます。人体切断なんかあたり前の極悪世界って、そりゃもう完全にホラーの領域です。『悪魔のいけにえ』です。『ギニーピッグ』です。

 さて。ここで非常に重要な問題ですが。
 最終的に人体破壊、精神崩壊までいってしまう女で、キミは本気でシコれるのか。
 いいのか、それで?ほんとうに・・・?

 
人間性の根幹に対する本質的な問いかけと言っていいでしょう。あなた、どうですか。」

 「いや・・・どうですかって・・・困ったなァ。」
 スズキくんは金髪の頭を掻いて、
 「ま、あの、ボクは到ってノーマルですんでよくわかりませんが。でもあんた、抜ける・抜けないの話するとき、いちばん輝いてますな。最高の笑顔をしてますよ。」
 
 「いやァ、それほどでも。」
 
皮肉に気づかないおやじは、素直に照れた。
 「抜ける・抜けないだけで今日までずっと頑張ってきましたから!恐縮です!」

 彼方に聞こえる大地を揺るがす轟音の響きに、スズキくん、残された時間を心中で密かにカウントしながら、

 「さァ、それじゃ、まだ三条作品を一本も読んだことにない幸運な読者諸君のために、『寄生少女』のあらすじを駆け足でご紹介!」
 「ところどころ意味不明な箇所が混ざるだろうが、そこは実は、われわれにもまったく理解できていないのだ!
 質問されても全然答えられない自信だけは100%以上あるんで、ひとつ、そこんとこ、ヨロシク!!!」


【あらすじ】

 「へび人形」
 廃屋に置き去りにされた薄汚い袋詰めの人形。棒状の手足に丁寧に学生服が被せられ、ボタンが止まっている。頭部だけが奇形のへびと化している。牙の生えた口だけ大きく開いて、シャーシャー息を吐きながら盛んに蠢く。目はない。
 その正体は冥界からお戻りになったクラスメート・裕太くんであり、それを証拠にへびみたいな頭部に牙が幾つも並んでいて、人間など、溶かしては軽く丸呑みにしてしまうのであった。(裕太くんには生前から人間を溶かして丸呑みにする癖があったのだろう。おそらく。)
 主人公美夕は、可愛い子猫やらニワトリなんかを捕まえてきては、どでかいハサミで頸切って裕太くんに献上する不毛な毎日を過ごしていたが、最終的に自分も溶かされ呑み込まれてしまって、ジ・エンド。
 ちなみに、意外にお茶目な裕太くん、動物も人間も頭部は必ず食べ残してしまうので、廃屋の床はやたら生首だらけになるのがグー。

 (「・・・いきなり、なんすか、コレ?」
 「この短編集は全編この調子でカッ飛ばしてんだよ!次ッ!」)


 「真夜中のイタズラ」
 あゆ、りかたんは仲良し女子高生コンビ。
 ある晩間抜けなあゆが、寝ている隙に謎の誰かに身体にイレズミを彫られてしまう事件が発生。あゆはまんざらイヤでもないらしく、謎の人物と毎夜楽しく遊ぶのだと言う。怪しんだりかたん、あゆのネグリジェ(透け素材)を着て入れ替わって待ち受けていると、果たしてヤバいおめんを被った男が深夜昆虫片手にやってきた。
 見たことない昆虫の尻から出る怪しい液を飲まされて、本来正気な筈の、りかたんまでがみるみるアンピュティーな精神状態に陥り・・・・・・。

 (「で、この後どうなるんです?」
 「シーツでぐるぐる巻きにされ、縄を掛けられて、夜の町をおみこしみたく担がれてパレードだ!山下達郎もビックリだ!」)


 「友情怪談」
 文化祭でお化け屋敷をすることになり、いじめられっ子の美羽が晴れてお化け役に選ばれました!パチパチ!ついては記念として、この生理食塩水の注射を顔やら手足にブチブチ打たせてくれまいか?オッケーーーーッ!!
 でも、いつの間に食塩水が農薬にすり替えられていたんで思わずドッキーーーン!!大ショック!美羽は精神崩壊して本気でバケモノ(毒々モンスター系)に変身して近所で暴れまくります。お化けって実在したんだ!人間の心の闇とかそんな穏当な隠れ家なんかじゃなくって、現実に!この地上に!そんな陰惨な地獄絵図のさなか、真の友情と三条先生の意外な暖かい救いの手が・・・ファンタジー感動大作!

 (「・・・本当に?」
  「ウソは書いてない。実際このとおりの内容だよ。ま、大作の割りに20ページしかないけどな!」)


 「マミーちゃん」
 包帯だらけのクラスメート・海ちゃんの秘密は、皮膚に直に産み付けられたジガバチの卵でありやした。帯状に太腿を一周する卵は孵化寸前!表皮を破ってぶちぶち出てくる蜂の子たち!片目は既に見事、蜂の巣と化しております。あわわイテテ。読者をむず痒くする描写を連発させておいて、最後お約束の巨大蜂登場で落とす構成が奇跡を呼ぶ12ページ!

 (「これは痒い。ボク、意外と皮膚弱いんですよね・・・」
 「へー、意外!ツラの皮は厚いのに?」
 「・・・殺しますよbyフリーザ・・・」)


 「変身させて」
 “舞子は殺人犯の娘です。
  だから、いつもひとりぼっちです。”

 ・・・美しいポエムのように始まる物語は、美貌の男性教師に憧れた女生徒・舞子がなんとペガサスに変身!目隠しに皮の胴着着用のその姿は、立派にSM騎乗プレイにしか見えないが、それはともかくめくるめく教師と生徒の禁断のインモラルな世界へ!と思いきや突如そこへ仮面を着けた教師の姉が乱入!麻酔薬注射を眼球に突き立てる。実は全身をガンに冒された姉の生命を救うため、男性教師は教え子を次々と誘惑。騙して自宅マンションに連れ込んでは、怪しげなガン特効薬の実験を繰り返していたのだった。
 狂った実験の結果、舞子は全身の細胞一個一個までガンに冒され死に果てるが、姉は完治。喜びにキャッキャッ言いながらまぐわい出す姉弟を、お約束通り生ける癌細胞の塊りと化した犠牲者達が襲い、律儀に生首を切り取るのであった。

 (「なんか、話の展開が早すぎ・・・」
 「うむ。全身が癌細胞になってしまえばかえって健康、という誤った医学知識がこの作品を生んだのだ。」
 「明らかにそれ以前の問題だと思うのですが・・・」)

 
「催眠あそび」

 恋人の不治の病を治すべく、悪魔のいけにえに志願する女子高生・結衣。その結果実際やってるのがブタの残飯を食ったり、公園でチンピラに犯されたりだったりするのはご愛嬌。
 地道な努力の甲斐あって見事悪魔に憑依され変身した結衣は、クラスメートの顔面をガブリ食いちぎると、背中に生えてきた蝙蝠の翼で夜空へ飛び立ち、二度と帰って来なかった。恋人はその後病気で亡くなった。

 (「・・・結局なにが言いたいんですか、この話は?」
 「悪魔はみだりに呼んではいけません。・・・ってカンジ?みたいな?」
 「・・・今度、半疑問形つかったら拷問加えますんで!」)


 「蟲病院」
 ♪ム~シ、ムシムシ、ムシ病院!
 早くも脳に蛆が湧きそうになっておりますが、再び“不治の病の恋人が病院にいる”シリーズ!長いよタイトル!
 謎の病で恋人を亡くした詩音ちゃんは、頑張って看護学校に進み、生前カレシのいた病院へ実習にやってきました。過去のトラウマに対し正面からぶつかることで克服しようという、見上げた向上心の顕れであります。
 でも実際やってるのは、注射の練習と称して腕がぼろぼろになるまで血管に針を突き刺す、単なるプレイなんですけどねー。中島某の「ファイト」を歌ったりして自室で独り練習に励む姿は既に立派なクルパーさんの仲間入りです。あばあば。
 そんな詩音ちゃんに待っていたのは、死んだと思われていた恋人との再会!
 恋人は、実は人に言えない伝説の奇病、“イケメンだけど首から下が巨大なイモムシの幼虫になっちゃってゴメンナサイ”病にかかって、今日まで病院の地下室に適当に隔離されていたのです!何年も!ビックリ!ひょっとして暇なのか、この病院?
 身体はでかいムシでも、顔はまだまだ憂いの翳り深いイケてる状態なんで、うっかりキスしちゃった詩音ちゃん、期待通り奇病に感染して巨大イモムシ完全体へと進化しちゃいます。でも、ま、いっか。両者イモムシなら問題ないっしょ。
 そこで駆け落ち決行、雨の日に病院を抜け出して裏山へ逃げ込もうとするニ匹のでかいイモムシたちでしたが、近所の小学生に捕まってビニール傘の尖った先をボコボコに突き立てられ、緑の血を噴いて絶命しちゃうのでありましたー。残念。

 (「手の込んだ嫌がらせとしか思えない話ばかり、よく続きますね!」
 「・・・だろ?オレが感心したのは、特にその点なのだ。この作者は本気だ!」)
 

 「デリバリー彼氏」
 素敵な彼氏をデリバリー!その資金獲得の為ならチョイ悪おやじを何人殺しても平気!チキチキ、NTカッター取り出して学生らしさ全開の惨殺スタイル!彼氏をレンタルするため目標に向かって着実な努力を重ねるアイちゃんでしたが、でも、「そいつ、人間じゃない!」
 夢の彼氏の正体は、舌に釘とか打たれたヘンな人形!目玉がボイーンと飛び出して古典的なスタイルのオチがつきます。最終的にワープでおしまいです。

 (「なんですか、ワープって?」
 「この世の外側へズビィィィーーーン!!!って飛んでっちゃうんだよ、人形の奴。少女をしっかり抱いて。」
 「・・・う~~~む・・・」)


 「シャカシャカぴえろ」
 問答無用の傑作!スタジオぴえろなら知っているだろうが、シャカシャカぴえろって一体何?その質問に一切答えを出さない、凄すぎる名作がドカンと登場。
 マラカスを振っている間だけ自在に動くピエロが街角に。面白がってマラカスを振りまくりピエロを操って、いじめられっ子・舞子ちゃんが憎っくきクラスメイトに血の粛清!なぜか草刈り鎌振り回して指先切断!喉笛カットスロート!微妙にマニアック過ぎる殺し技が冴え渡る!
 でも、これだけ動けるピエロは実は盲目で、行き当たりばったりに舞子の目玉を刳り貫いて、お手玉します。景気の本格回復を予感させる縁起いい感じでジ・エンド。

 (「・・・いい加減、飽きてきてるでしょ?」
 「このピエロが近所に実在するという作者の告白が一番ショッキング!絶対会いたくないよ、こんなピエロ!」
 「あっちもそう思ってますよ、きっと」)


 「彼氏はケダモノ」
 またも、死んだ恋人が蘇ってきたよ!ハッピー!
 
今回の彼氏は、なんというか全身に蛆が湧いて腐り切ってます。顔の真ん中に深い割れ目がありまして、左右に開くようです。中から極太の男性器に酷似した毛深くてゴツゴツの舌が飛び出します。んで、トクントクン毒だかなんだかわからん液体を犠牲者に注入!
 実は、こいつが意外にグルメで困る・・・という教訓的なお話。

 (「解説が駆け足になっちゃってるけど、これなんか普通に面白いオチマンガの傑作!」
 「・・・本気ですか?」
 「だって凄すぎだよ、この題名!見りゃわかるけど、ケダモノですらないんだよ、この彼氏!」)


 「寄生少女」
 タイトルチューンでは、満を持して腸内に巣食う鉤状虫が大登場!ダイエットは女子共通の悩みだよネ?思い切り喰ってガンガン痩せする都合良すぎる減量法、それが寄生虫ダイエットだ!痩せられるなら、全身サナダ虫の巣になってもオッケーだ!眼窩を喰い破って虫の頭が顔出したって、そいつが産卵して孵化して、太腿から腕から蛆まみれの穴ぼこだらけになったって、しまいに顔面が崩壊し完全にでかい虫の口に変身しちまったって、ともかく痩せてしまえばこの世は天国!超ラッピー!
 あ、でも、しまった!壊死した組織が紫いろに膿んできた!腸にガスが溜まって腹がせり出し、気味悪いブクブクの身体に!あ、既に死んでるのか、あたし。
 ダイエット見事失敗でふりだしに戻る。

 (「普通に鬼畜な読者だったら、この本の題名や惹句から“虫→少女→触手陵辱”系とか想像するじゃない?
 ところが、あにはからんや、実は古賀新一先生の『幼虫』『ヒルが吸いつく』とかみたいな正統派のホラーテイストなんだよ。ゴリゴリの。」
 「正統派ねぇ・・・」
 「ひばり書房のダメな個性をフルスクラッチでリビルドしたような新しさを感じる。」)


 「きりきり同盟」
 不良グループにいじめられていた亀を現金支払いで助けた女子高生・土屋あゆみは、自分へのご褒美としてリストカットを実行する。あぁ、気持ちイイ。でも切った後にはすんごい罪悪感。生きてる。あたし生きてる。十七歳。生きるってこういうことなの、黒澤?
 その後、携帯電話から指令を送ってくる謎の女ともみんBモードに唆され、Webサークル“キリキリ同盟”のオフ会に参加したあゆたんが、いつもの感じでザクザク腕を切り始めると、周りもノリノリで切りつけてくる。ああ、この人達、微妙に畑が違う趣味の連中だったんだ。
 翌日の新聞に“狂気の切り裂きカルト集団逮捕”の記事が。あゆみは切りつけられて身体のパーツはかなり欠損してしまったが、集中治療室でともかく生き延びていた。よかった。

 (「締めはサイコもので勝負!」
 「なにがどう勝負なのか、ボクには理解できませんが・・・」
 「周りのやつらより主人公がともかく狂ってるワケですよ。三条先生の作品はどれもそうじゃないですか。で、腕に覚えがあるキチガイが出てきて、狂気で対決!」
 「包丁人味平とおんなじですね。」
 「この話、さりげなく、治療室で重態の主人公が過去の名場面を回想するという凝った構成。で、最終的に“よかった”で落とす極悪エンディング!」)

 
 ・・・かくて全話ひとしきり流し終えたおやじ、大きく息を吐いた。姿勢は依然地面に埋まったままだ。
 太陽はすっかり西に傾いて、雲がかかっている。荒廃した大地に影が流れる。
 かすかに出てきた風に、埃りまみれのおやじのズラが揺れる。

 「いやー、長かったわ!三月が四月になるくらい、長かったわ!」

 「それはアンタの執筆期間でしょ。短編集、なにも全話解説することないじゃないですか。日本の特撮マニアじゃあるまいし。あの人たち、なんで“全話収録”とか“パーフェクトガイド”とかいう響きに弱いんですかね?」
 「知り合いのDって男も、同じ病気だよ。」
 スズキくんは嘆息した。
 「しかし、このブログをあらためてマジマジ読んでみると、本当、誰が得するのかわからん記事ばかりですね。どういう編集方針なんですか。」

 「地獄で流通するミニコミ誌をイメージしてるんですよ。あと、学級の壁新聞。」

 「お。そろそろ、時間だ。」
 
 わざとらしく腕時計を眺め、スズキくんが言った。
 いつの間に地面を揺るがす爆音があたり一帯に響き渡り、耳を聾せんばかり。話に熱を入れていたおやじも、ようやくこれに気づいて、

 「なんだ?なんだ?コレ、なんの音よ?
 ヨハネが世界の終末に吹き鳴らすラッパみたいな感じ?」


 「正確に突っ込めませんけど、吹く人はヨハネじゃなかった気がします。では。」

 ふわりと空中に浮き上がった。
 気がつけば、スズキくんの髪の毛はまだ金髪のままだ。

 「・・・バッハハァァーーーィ!!」

 叫びながら高速で飛び去っていく雄姿を見上げ、地上で首まで埋まったおやじは、ひとり愚痴る。

 「あのヤロ、こないだまで無職だったくせに、随分羽振りよくしやがって。
 気に入らん。二度とコロッケパン半分分けてやんない。やるもんか。」


 と、不吉な気配に気づいて見上げると、巨大な水の壁が間近に。5センチ距離で。
 近すぎ。

 「ぬな?!ぬな、ななな・・・??」

 前振りから随分時間を掛けて、破壊された海浜公園の防波堤を越えて侵入してきた袖ヶ浦の冷たい海水が、高さ5メートルを越す巨大な水の壁となっておやじのところにへ到着。
 崩れ落ちる総重量数千トンに及ぶ水のカーテンに押し潰されながら、おやじ最後に叫んだ。

 「・・・『クリープショー』かよ?!
 ちくしょう、おぼえてろーーー!!!・・・」


 あとには、渦巻く波涛がゴウゴウと。白い渦を巻いた。

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