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2013年1月12日 (土)

朝倉世界一『春山町サーバンツ①』 ('11、エンターブレイン)

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 朝倉先生は現在おいくつなのか。1965年生まれ。読み解くうえでそこが重要なキーだと思う。
 今年区役所に就職したばかりの若い女の子を主人公に、町一個丸ごと描いてしまおうという『春山町サーバンツ』は、さまざまな年齢層の人達が行き来する。渋谷区春山町。(きみも既に検索してみただろうが、これは架空の地名である。)年齢とは来歴であり、生活である。
 冒頭で紹介される町の名物、樹齢800年のクスは、だから様々な時間や生活を束ね統合する、ルートディレクトリみたいな存在である。諸君はそこにぶら下がるフォルダだ。からっぽのフォルダもあるし、ファイルが多過ぎてサブフォルダを幾つも持っているものもある。町というのは、エクスプローラで充分検索可能なコンテンツである。現実はきみのデスクトップ上より遥かに複雑で未整理なものだから、理解できないように見えるのだ。
 たとえば第6話で、主人公の父が朝の料理をしながら鼻歌で岡村ちゃんの「だいすき」を歌うのは、此処に描かれる世界がわれわれの現在と繋がっている確かな証拠でもあるし、過ぎてきた時間を象徴してすらいる。あの歌は1988年のヒットだ。まだギリギリ昭和歌謡。もっと重要なのは、いささか種明かしめくが、岡村も'65年生まれなのである。
 これでこの物語の描き手がパパなのがわかった。
 その中味は以下のように展開される。

 「劇中に登場する市民の誰もがそれぞれに自分の生活をそのままに生きている。そのなかでのちょっとしたかかわりがこの劇の物語の流れであり、また細部になっている。」
 (ソーントン・ワイルダー『わが町』解説、Wikipediaより引用)
 
 相変わらず、朝倉先生はちょっと泣かせるのがお上手で、こじま輪業の絹さんを廻るエピソードでは涙腺がうるうるしてしまった。うまいなぁ。ちょっとってとこ、いいよなぁ。

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