年末年始特番「スズキくんの逝く年・クル年」
(セットは特に組まれていない。
剥き出しの壁から鉄パイプが幾つも飛び出した殺風景なスタジオ。コンクリートの床は湿っており、色の悪い茶褐色の水溜りがある。)
(曲が流れ、終わったところだ。Gyaoで六曲連続で視聴していたらしい。)
「・・・はァーーーい、というわけで今年の大ヒット、きゃりーぱみゅぱみゅちゃんで『つけまつげつけかえ疑獄』でしたーー!!
ぱふ、ぱふ!」
東急ハンズで購入したパーティーキットを身につけたスズキくん、浮かれている。
「わざと『酢めし疑獄』みたいに言うな!間違えるだろが!」
おやじ、今回は能動的に突っ込みに徹するつもりなのか、阪神タイガース応援団長のコスプレをしてやる気を出している。
「いけーーー、江夏!カッ飛ばしたれや!!!」
「あんた、ムチャクチャですよ。」
諌めるスズキくんも学生服に、目玉がボイィ~~~ン!のメガネ着用だ。
「この番組、無理やり今年を纏めるって始まりましたけど、早くもネタ枯れが懸念されておりますよ。
だいたい、あんた、現代に生きてないでしょう?何時代の人か知らないが。」
「むむ。失敬な。ひとを天地(あめつち)分かれる前の住人みたく言うな!!だれが原生林歩いとるっちゅうねん!
だれが、ヘイ!ミスターダイナソアー!やっちゅうねん。」
「解りにくいボケですが、ポリ~スの歌詞ですな。“Walking on Your FootSteps”。あんたにとって音楽の歴史は1983年のシンクロニシティーコンサートで終わってるんだから、ま、しょうがないでしょう。
ぱふ、ぱふ!」
おやじ、メガホン片手に凄んだ。
「だから慌てて、ぱみゅぱみゅちゃんを観て来たんじゃないか。2012年をこれで語れるぞ。もう、コレ、総括リンチ・姐御しちゃうぞ!」
「よく知らないものを例えに使うのは、いい加減、火傷しちゃうからおよしなさい。」
スズキくんは、ふざけた格好の癖にもの凄く真面目な、謂わば小林完吾アナのような口調で、
「それで、ぱみゅ観て何がわかったんですか?」
「・・・あ、いや、中田ヤスタカが曲書いてるんだなって・・・」
「中学生でもわかるわ・・・!!
そんなもん・・・!!」
メガネを外し、いきなり席から立ち上がった。
「大体あんたのブログ、大半の情報が憶測と嘘だらけじゃねーーーですか?!なに考えてるんですか?
もっと真面目にやってください!!
世の中には、驚くほどバカげた本を真剣に読んでる奴だって存在してるんですよ!
どんなバカ映画にだってひとりぐらい、真剣に愛するファンがいるんです。それを創った監督とか・・・」
「その監督の両親とか・・・」
「そういうみなさんの虚しい愛に少しでも報いるため、このページはあるんじゃないんですか?!
世界の平和を訴えていきましょうよ!原発完全撤廃とか、萌えアニメが好きな外人を殺すとか、もっと他にやること、ある筈でしょ?」
おやじ、ゆらりと席を立つ。
「あの・・・どちらへ・・・?」
「番組の途中ではあるが、ぱみゅについては既に語り尽くしてしまったようだ。これから築地へ行って、新ネタを仕入れてくる。
・・・へぃ、らっしゃい!!
・・・らっしゃい・・・!!
・・・らっしゃい!!!・・・・」
喚きながら出て行ってしまった。
シブガキ隊『スシ食いねェ!』の12インチバージョンを物真似しているらしい。
「エエイ、勝手な人だ。困ったな・・・」
「どうします?局長?」
腕組みするスズキくんに若手が寄ってきて訊いた。
「こういうときはアレだ、『ファニーとアレクサンデル』を流せ!朝までノンストップでリピート放映だ!どうせだれも観るもんか。
そのうち、おやじも帰ってくるだろう。」
若手は深く頷いた。
「へい!らっしゃい!!」
(画面暗転する。映画が始まった。)
(薄暗くなったスタジオの隅から、スズキくんの熟睡する寝息が聞こえる。彼は外国の映画は登場人物を全然覚えられないので、極端に耐性がないのだ。)
(つづく)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント