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2012年12月19日 (水)

アダム・グリーン『フローズン』 ('09、ブロードメディア)

 寒いよう。
 意外かも知れないが、私はスキー場が大好きだ。ブーツだ、ウェアだ、深夜仮眠所だ、リフト券だのICチップだのそもそものチェーン着脱だの、手順がやたら複雑怪奇で面倒臭いのがいい。散々手間隙掛けさせておいて、滑り降りれば一瞬だ。急スピードで変転する風景。乾いて皮膚を刺す空気も、グラスをかけてもなお眩すぎる直射日光も、雨に変わりドブドブになる春先のボタ雪も素晴らしい。
 だが、さすがに歳を喰って面倒臭さが限界を越えてしまい、そもそも一緒に行く友人も周りには居なくなって、こうしてスキー場が舞台の、地味で低予算にも程があるパニック映画を観ては、

 「そうそう、あるよねー。止まったリフトに取り残されて一昼夜。あるある。」
 「凍った素手で鉄を掴んで皮膚がベリベリ。あるある。痛いよねー。」
 「リフトから飛び降り、複雑すぎる骨折。骨が膝から飛び出した。あるんだよー。」
 「で、待ち受けていたオオカミの群れに喰われる。あるある。」


 と、煎餅喰いながら暖かい部屋ですっかり楽しんでしまった。
 一緒にスキーに行った友人の彼女(初心者でした)が山頂付近の上級者コースで骨折、救急部隊が駆けつける騒ぎになったことがあり、赤い十字マークの担架で麓まで運ばれいった。あのときの担架を誘導するスキーヤー2名の速度はあり得ないほど速かったなぁー。
 雪山とは、本来人間が普通には暮らしてはいけない環境なのである。(炭焼き以外。)そんな場所に置き去りにされたら死ぬだけだ。あたり前ではないか。

 でも、いつかまたあの雪だらけの場所へ、また行ってみたいと思うのだ。実際死ぬほど面倒臭いのに。
 あ。今じゃなくていい。

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