R.A.ラファティ『昔には帰れない』 ('12、ハヤカワ文庫SF)
そうそう、そうなんだよ。昔には帰れないんだよ!
全SFファン号泣。
小難しいこと云ってる奴も、軟弱ハリウッド調SFに慣らされ脳が溶けた奴も、SFなんか知らん顔で今日の残飯を漁るあんたも。今年のベスト。買っとかないと。一番きれいな造本のやつを。今すぐ。お近くの書店で。
これで、ラファティ唯一のヒューゴー賞受賞作「素顔のユリーマ」がようやく(『世界SF大賞傑作選』以外でも)読めます。でもコレ、ラファティにしちゃあ普通のレベルの短編。もちろん、他人には決して真似られない内容ですけれども。いつもの感じ。おおむねラファティはこうです。
じゃあ、なにが凄いんだって、例えば「月の裏側」。
妻の浮気に気づく旦那の話なのに、完璧にSF。他に誰が書けるんですかコレ。普通小説以下にしかならない題材を使って、説明しようのない反復とロジックの綱渡り。凄いです。凄いです。下を漏らしそう。チェスタートン好みのネタと展開ですけど、コレを書くラファティの悲しみと滑稽味は独自のもの。なんたって現代アメリカですもの。
伊藤・浅倉共訳で、「昔には帰れない」の表題。脳をつるはしでガツンとやられた心境でした。
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