つのだじろう『蓮華伝説(上)』 ('87、大都社)
つのだじろうの『蓮華伝説』!
日本マンガ界に白フォース・黒フォースの区別が存在するなら、疑いなく黒フォースの筆頭格・トップガン、暗黒巨星つのだじろう先生が渾身の熱筆を奮った裏代表作!でも、先生の存在自体が既に裏モノっぽいから、つまりは代表作というワケだ!文句あっか!
トキワ荘を燃やせ!!
Fの首を晒せ!!ベレー帽つきで!!
われわれには神から面白いマンガを自由に閲覧する権限が与えられている。それを行使するも善し、懐に仕舞いこんで安閑とするも善し。根性を出せば、どんなマンガだってたいてい読める。みぃーーーんな、じろうちゃん。石川次郎。但しキャスターの方。
そういう感じだ。ベイベー。
【あらすじ】
事の発端は突如襲った淫夢がきっかけだった。
全裸で呼びかけてくる謎の美少女。浮世絵の春画。それに蓮の花。脈絡のないイメージの連鎖。なんだこりゃ。でも、きてる。なんか、きてる。くるなァー。
異様に刺激され、いい歳こいて二晩続けて夢精したTV脚本家・夏目吾郎は、何を思ったかドップリ射出したおのれの白い液体を自宅のブランデーグラスにせっせと溜めて飼い始める。石原裕次郎もびっくりだ。既にこの時点で、気違いの殿堂入り確定。
なぜかそうせずにいられなかったのだ。自分がわからなくなる夏目。
謎の液体は、訪れた東大医学部に勤める友人・森安なおやにより人間の受精卵と鑑定される。
「コレは単なる精子ではないゾ!卵子と結合した着床卵と同じものだ!」
唖然とする夏目。エッ、俺のソロじゃないの?
「しかし、体外に出た受精卵が生きていけるなんて・・・?」
「さらに周囲の雑菌をものともせず生育を続けるとは・・・?!」
軽いリアクションで手を振る森安。
「超ありえねー!!」
「ナイヨー!ないよ、ソレ!」
常識を覆し通常の十倍の速さで細胞分裂を繰り返し、みるみる胎児の形態を整えていく謎の液体。徐々に蒸発していく不足分を補うため、本業も疎かに日夜突貫のズリセン行為に従事。ぶっかけ突撃を繰り返す夏目だったが、さすがに身が持たない。あと、汁が足りない。決定的に足りない。
そんな破滅一直線の急傾斜下り坂な男に突如モーションをかけてくる怪しい女が登場。
たいして売れてないテレビタレント・安原麗子である。暇な麗子は強引なドリブルで夏目の住むときわ荘(※本当に実名で登場)へ乗り込み、勝手にスタミナ料理を作り出す。感動した夏目は、料理ともども麗子自身をもご相伴に預かることに。
うめえ。さすが本ナマは違う。
単調に陥りがちの機械的オナニーに嫌気がさしていた夏目は、神様によくぞ男と女をつくってくださったと感謝の祈りを捧げながら、久方ぶりにときめいてドップリ放出。心地良い虚脱感に浸っていたら、体液を膣内に多量に溜め込んだ麗子が動いた。
半目になり、トランス状態で空中を浮遊する麗子。エッ?
天井近くまで舞い上がり、平行に移動した女は仕事机の上に載せてあったブランデーグラスに跨ると、まんこ内部の貯蔵タンクを完全に開放した。チャーリーズエンジェル・フルスロットルで溢れ出す精子やらまん汁やら。どぺどぺ。
業務を終えた麗子は失神。その場に崩れ落ちる。
デスクから落下し、頭頂付近に瘤をつくってガースーいびきをかいている麗子と、見事に体液の補充が為され溢れそうなブランデーグラスを見比べながら、思慮深い表情になる夏目。
「うーーーむ、コイツは・・・・・・。」
しかし、さっぱり解らなかった。
そういう訳で(どういう訳だ?)、急遽同棲生活に突入し、仕事そっちのけで連日連夜交尾に励むふたり。愛だの理屈だのはそっちのけで、求めるのはひたすら獣欲完遂のみ。ある意味清々しいが、流石に他人には威張れない。
スタミナ不足を感じると、近所のスペイン料理屋へ出向き、特製スパイス入りのステーキを頬張った。これが不思議な程の強精効果。筒涸れペニスもたちまちサンダーキャノン状態に。で、息急き切らせてときわ荘へ馳せ戻るや、これまたおっ始めるという割り切った算段なのだった。
射精後冷静になってみると、無意識で空中浮遊のできる女を相手にしてるのってどうなの?的な考えも浮かばないでもないのだが、なにしろグラスに体液を補充し続けなければならない。なぜそうするのか、その結果はどうなるのか。いっさい見当がつかない。もはや悪魔に魅入られたとしか表現しようがない。有名な性現象、トリコ仕掛けの明け暮れである。
そんな彼らを監視している存在があった。
隣の部屋のババアである。
連日連夜の荒行に死の危険を察知した麗子が突如逃亡、行方を晦ます事件が発生すると、就寝中の夏目のベッドへ潜り込み勝手に代行運転サービスを完遂。これまた空中浮遊を行なうと、ブランデーグラスを満たしたのだった。
朝起きて、グラスが満たされているのを見つけ、首を捻る夏目。おのれの股間に絡みつく白い陰毛。
「うーーーむ、コイツは・・・・・・。」
しかし、さっぱり解らなかった。
麗子はその後、捨てられた犬のように戻ってきて、また以前の暮らしが始まった。
友人・森安なおやは、最近さっぱり消息のない夏目の身を案じ、学術書を大量に抱えてときわ荘をアポなし訪問。正体不明の胎児は人工培養のクローンではないのか、と無用な心配をぶちまける。
数分前に麗子内部に射出したばかりの夏目は、頭をボケーーーッとさせて聞いていたが、激昂した森安がブランデーグラスに手を掛けようとすると、さすがに顔色を失った。
それより早く、台所から包丁を持ち出した麗子が白目を剥いて突進。
「ガッ・・・!グハッ・・・」
森安なおや、腹を刺され死亡。七曲署の刑事よりあっけない。
何かに憑かれたように行動した麗子は、やがて正気づき自分の犯した罪の重さに慌てる。
「うわッ・・・?なに、コレ?!・・・まじ?まじ?」
「うーーーむ、コイツは・・・・・・。」
夏目がまたも思考循環に陥ろうとするより先にドアが開き、隣の部屋のババアが登場。
「アーーーラ、これは大変ね。お手伝いしましょ」
ビニールシートを被せ、異常に手際よく死体を運び去ってしまう。
そのプロフェッショナル過ぎる手口に戦慄を禁じえない麗子と夏目。ようやく自分達が巨大なる陰謀に巻き込まれてしまっていることに気づく。
「コレは、間違いなく何かの陰謀だ!
手掛かりは・・・とりあえずオレ、春画の線から洗ってみるわ!」
呑気すぎる捜査を開始。夢で見た春画を捜し求め、古書店・図書館・インターネットであしげくリサーチ。その絵が年代もバラバラ、別々の絵師の手になるものであることが解った。
「だから・・・なに?!」
麗子に、ど突かれ捲くる夏目。確かに。
方向性を変えて、ババアを締め上げる決意を固め買物帰りを襲うことに。しかし。
「グワワワーーーッッ!!!」
空中を飛んで来たナイフが首の横を抉り、ババアは電柱脇で大量の血を噴いて死亡。
あっけにとられる夏目。
非情な裁きを行なったのは、女装したスペイン料理屋のマスターだった。
「・・・あっ、マスターだ。」
現場を離れる犯人の姿からいとも簡単に正体を見破る夏目。
口ひげを隠さずにカツラを載せているだけの手抜きコスプレだから、そりゃすぐ判る。あのセーラー服は自前だろう。
となると、謎を解く鍵はスペイン料理屋にあり・・・か。
そういや、あの店のスタミナステーキ。いつも喰うと、必ず精力ビンビンになるのはなぜだ。なにか怪しいスパイスでも混ぜていないか。
「そうだ。分析するんだ!」
毎日食わされていて気づかなかったおのが舌を恥じることなく、死んだ森安のコネを使い、ステーキソースを化学分析にかけると。
ヨーロッパ産の毒草マンドラゴラの根を多量に含んでいることが判明。毎日毒を飲まされていたことを知った夏目は「金返せ!」と思いつつも、ようやく此処に到り事件全体を覆うオカルトの影に気がついて、魔術に詳しい東大講師を訪ねることにする。
(下巻へつづく)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント