ザ・モノクロームセット『ストレンジ・ブティック』 ('80、Water)
モノクロームセットなんて、単なるカッコつけの為の音楽と貶める必要などまったくないのだ。本当は。
例えば80年代ラウレンティスの『フラッシュ・ゴードン』、主人公のTシャツの胸には、赤い流れるようなレタリングで“FLASH!”と染め抜いてある。俺T(ティー)である。
公開当時ダサい・バカ・ハゲと散々罵倒された映画だが、この貴重なセンスは今や裏返って、逆にカッコいいのではないのか?だいたい、そんな大うつけ者をSFX大作映画の主役に据える度胸があるか。現在のハリウッドに?(この映画には他にもいろいろと脚本や美術に本物の幼児が関わっている疑惑が散見され、悪の帝王が“噴火”と書かれたボタンを押すと、実際に地球上で火山が噴火するなど、常人のイマジネーションを軽く凌駕する場面が目白押しだ。)
想像力の枯渇した連中が社会を占拠し、いまやすべてはジリ貧である。
フレンチ、インド、エンリオ・モリコーネなど自分が格好いいと思うものを全部ギターポップに盛り込もうとしたモノクローム・セットは、カッコよさを極めると大馬鹿になる、というこの世の摂理を見せつけてくれたバンドとして重要である。まったく何を考えてつくってやがるんだ、一体何なんだこの曲、などなど創作者の手の裡をまったく明かさない手法は、ジーン・ウルフなんかにも共通する魅力だと思う。
あ、ところでこのファースト『ストレンジ・ブティック』は、権利関係だなんだで、中々単品でCD化されてなかったので、見たら買っとくといいよ。
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