『ニンジャスレイヤー ネオサオタマ炎上①』 ('12、エンターブレイン)
馬鹿の読む本。馬鹿が書いた本。
諸君の想像を越えてアタマが悪い感じのするこの本は、活字読者の知能レベルの低下と昨今の嘆かわしい風紀紊乱の世相を象徴する傑作である。読め。そして、「なんにもないじゃん!」と悶えろ。
かつてガイジンの考えたニッポンというネタがあった。色眼鏡のラプソディー。都筑道夫『三重露出』とか小林信彦『素晴らしい日本野球』とか。映画『ベストキッド2』に出てくるオキナワも凄かった。南海の土人の島なんだよ。ファイヤーダンスとかするような。酋長とかいて、カラテで殺しあう。
デタラメ極まる日本像というのは格好の笑いの源泉である。
例えば、二年前に政財界を震撼させたヤンバナ・サシミ事件の概要は以下の通り。
「国内食品シェアの八十七パーセントを握っていたヤンバナ・サシミ・プロダクト&ディストリビュート社が、五年に渡ってハマチ粉末に違法なブリ粉末を混ぜ、あまつさえコクを出すため、危険性が指摘される違法なプロテインすら混入させていたことが明るみに出た。」
「ヤンバナ・サシミは不正を隠匿する目的で、政府関係者に現金をばら撒き摘発を逃れてたが、その事実が公表されたことで、大臣の約半数がセプクし、ヤンバナ社は解体。
国民の主要な栄養源であったハマチ粉末の供給システムがストップしたことで、スシが食べられず餓死する人々が前年比3万パーセントに達した。」
(本書19ページ)
3万パーセントて。やられた。
こうなれば野生化したバイオ・スモトリが人を襲おうが、ニンジャスレイヤーに倒された敵ニンジャが爆発四散しようが(ショッカーの怪人か?)、笑って許せるというものである。
この物語は徹頭徹尾デタラメであり、カンフー映画的な、ジャパニメーション的なクリシェに満ち溢れている。要は最悪、悪趣味、キモいってことですね。
作者が日本人だかガイジンだかよう知らんし、ツィッターで大人気というのも、続々と続刊が予定されているというのもきっと用意周到な嘘に違いないと思われるが、忍術修行をしたカメが現代のニューヨークを席巻するアニメが現実にあったくらいですからね。油断はなりますまいよ。
出した途端にトンデモ本の殿堂入り確定。『コズミック』以来かも知れないな。
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コメント
あ、これはまともに読んでないな……。
Twitterで翻訳連載三部まで進んでファンが増え続けてるのも、隔月で刊行される予定も本当だし、まともに読めば「ニューロマンサー」に通じるかなり綿密に練られたストーリーだとわかるというのに。
ただのネタ小説ならしっかりしたファンがつかないし、書籍が10万部も売れることは無いかと。
投稿: | 2012年12月31日 (月) 03時35分
はい、ご指摘どおりです。売れてるんだなぁー。
投稿: UB | 2012年12月31日 (月) 09時34分