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2012年9月16日 (日)

スタンリー・キューブリック『スパルタカス』 ('60、UNIVERSAL)

 スパルタカスの彼女が微妙にババア臭いが納得いかない。
 
 純情可憐な清純派でなくていいから、もう少し若い娘に演じさせて欲しかった。
 なにせ奴隷役である。これはおいしい。もったいない。

 こういう場面がある。
 同じく奴隷のスパルタカスは見習い剣闘士、真剣相手のハードな特訓が終わると、太っ腹な主人(ピーター・ユスチノフ)が女をサービスしてくれる。イイ店だ。
 スパはヒロインに視線レベルで惚れ抜いている中学生みたいな奴なのだが、今宵遂に意中の彼女が俺の部屋に!股間を無限に熱くし、しかと抱き締め、ハテふと気配に気づいて天井の格子戸を見上げると、下卑た笑顔の主人と剣闘教官が覗いてやがるではないか!

 「いけェ!ニイチャン!」
 「GO!GO!内臓はみ出るまで、いけ!」


 断固性交拒否を表明したスパに対する嫌がらせとして、主人は隣室へ愛しの彼女を追いやり、飢えた野獣系剣闘士に思い切り犯させる。石壁を噛んで悔し涙に暮れるスパルタカス。マジで叛乱を決意・・・・。

 どうです、いいでしょ?
 完璧だと思う。娯楽のツボをわかってらっしゃる。
 ただし、この脚本、演じる女優に客が惚れれば惚れただけ破壊力を発揮する。それなくしては、只のコントだ。じゃあ、誰ならよかったのか?
 難しい。
 でも、あのババアじゃない。これだけは確かだ。

 そういう意味でいくと、カーク・ダグラスもなんだか庶民の共感を呼ばない顔であり、本来あの顔は悪役でこそ栄えるのではないかしら、と思うのである。この意見に賛同する人は多い筈だ。

 赤狩られ名人ダルトン・トランボの脚本はよく練れているし、キューちゃんの演出も手際がいい。
 そうすると、露わになって来るのは、スタイルありきのオールドハリウッド調が既にこの時点で飽和状態に達しとっくに決壊が始まっていたのだ、という事実である。
 スターシステム、くそくらえ。
 
 ところで諸君、現代日本がどのチャンネルを廻しても同じような人達しか映さない、閉鎖的なスターシステムに陥っていることにお気づきだろうか。
 
 もう一度、言う。
 スターシステム、くそくらえ。

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