ドリヤス工場『あやかし古書庫と少女の魅宝』第1巻 ('12、一迅社)
普通に行った新刊書店で、普通に棚に載っていた新刊本を衝動買い。
なんでって、これが水木なんですよ。どう見ても。絵柄として完成度が高い。脱力期にあった70年代くらいの水木先生の絵にクリソツなの。
同人誌作家としては活動スパンの長い方らしいんですが、アニパロにせよゲームネタにせよ、この絵を使うのは反則だね。そりゃ絶対、面白いわ。
とはいえ、パロでは所詮ネット住民の喜ぶ共同資産にしかならない訳でして。
この絵で敢えてオリジナルを描かせようと説得した編集さんの熱意に感服しますね。
話はね、萌え系の絵でやったら誰の記憶にも残らないようなもんなんですけど。
ま、アノ、世界を支配できる魔術系の古文書がありまして、それが主人公の実家の古本屋に所蔵されているらしい。それを探して日本刀持ったセーラー服の美少女戦士が上がりこんでくる。学校の先輩もやって来る。超能力者で、美少女の。
んで、三角関係になるという。
主人公も実は能力者で、という話の展開も含めて、どうです?絶対、見たくない筈でしょ?
これが、水木というフィルターを通すと、ちゃんと面白くなっちゃうんだよね。
そこに驚いた。
多分、この本の最大の仕掛けはその部分にある。まったく、なんでだろ?
考えてみてくださいね。
・・・(三分経過)・・・
考えました?本当に?
あんた、嘘つきだからなー。まァ、いいや。
いいですか、正解を発表しますよ。
答えは、「水木というフィルター」は絶対面白いと確信する作者の目がそこにあるから。
だから、これはちゃんと面白いの。
作家として選び取った表現手段になっちゃってるんですよ。不肖水木が。フハッ。
だから、これ、最早パロディーじゃないんです。
少年が美少女に頬を張られるシーンの擬音が、「ビビビビビ」じゃないのはそういう理由からです。
「べちん」です。「べちん」。
あ、ちなみに、ここでの美少女の造形は、つげ義春が描いた寝子ちゃんみたいな端正さは一切なくて、うら若い女子を描くのが苦手な水木先生ご本人らしい、ぶっきらぼう過ぎる素敵な美人画になっておりまして、これ、実は格好の笑いのツボなんだよねー。
幾らなんでもコレは・・・という無頼派の造形が、類型的なこの話にピタリと嵌って輝いております。
脱力系水木ということで、時々川崎ゆきおに見えたり、杉作J太郎に見えたり。(J太郎に似た絵が描けるだけでたいしたもんである。)
そういやお話なんか、道具立ては『猟奇王』シリーズっぽいやねー。
いいよねー。
要するに、芸風として完成度が高い。
画像は簡単に検索できますので、勝手に探しといてねー。
じゃ、また。
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