尾玉なみえ『少年エスパーねじめ』 ('02、集英社ジャンプコミックス)
---いつもの古本屋にて---
「スズキくん、スズキくん。
キミ用に『少年エスパーねじめ』①②巻、仕入れといたから。」
「ありがとうございます。ホント感激です。近所を幾ら廻っても、拾えなくてずっと悲しい思いをしてました。
そういえば、マスターって、職業・古本屋でしたもんね。
そういえば。」
「最近、どうもその基本設定が忘れられて、困っとるんだ。
こないだなんて、神父の仮装で派手に登場したのはいいが、最後まで正体明かされず。
誰だアレ、ってマジ言われた。」
「・・・楽しみにしてる人、いるんですか?」
「いいんだよ。ウチの甥っ子は、オレのファンだから。絶対裏切らないんだから。」
「・・・幾つなんです、その不憫な子?」
「小ニ。」
「あと、三年以内の寿命ですね。」
「うるせえ。
『ねじめ』はな、面白いけど、怖いんだよ。特に、エスパロイドのうーほー・がーる。アレが本気で怖かったなー。」
「なんですか、ソレ?」
「少年エスパーねじめは、エスパーである。この世を混沌に返そうとする、暗黒エスパーの勢力と日夜戦うのだ。」
「はァ・・・」
「エスパロイドは、そんな白エスパーを支援する目的で、どっかの科学者がつくったアンドロイドか何からしい。そんな背景設定に、尾玉先生はまったく関心がない。
勝手にどっかでつくられ、現在は野良と化しているらしい。
うーほー・がーるなんか、ねじめが住み込んでる子の家の花壇に首だけ出して埋まっている。菊、ラフレシア、チューリップ、ダリヤの隣に。」
「既に充分怖い要素がありますね。」
「こいつが完全にキチガイなの。やばい。
一個として、マトモな台詞を喋らない。初登場するなり、子供を攫ってお腹の引き出しの中に格納しちゃう。」
「引き出し・・・?」
「四次元ポケットみたいなもんだろ。なんでも入る。気に入ったものは、なんでも仕舞い込んじゃうんだ。これは怖いぜ。
出てくると、ミイラ化して廃人みたいになってる。」
「・・・・・・。」
「うーほーは、台詞すら尋常じゃなくてな、いきなりオリジナルソングを歌い出して、凶悪な行動を繰り返す。
♪かわゆい かわゆいメガネボーイ
メガネ ボイボイ メガネボーイ
メガネボーイは うーほーのモノ!!!
んで、捕獲ですよ。引き出しに。
他人に怒られると、頭部のシャッターを降ろして自分の殻に閉じ篭もる。まったくコミニュケーションが取れない。これはやばい。」
「ソレって、単なるキチガイじゃ・・・」
「その通りだよ。
尾玉なみえの登場人物なんて、そんなのばっかしだよ。」
「むむ・・・。それ・・・笑っていいんですかね?」
「わからん。だが、掛け値なしで面白いのは確かだ。
他の場面でも、うーほーが戦闘で役に立ってる描写なんか全然ないんだ。それどころか、爆発で首がもげたりして、マジ怖い。気色悪い。」
「まるで、ホラーキャラ扱いですね。」
「こりゃもう、読んでもらうしかないよ!なんか、嫌なリアリティーがあるんだよ!タマんねぇよ!
読んで感想を言ってみろってんだよ!
・・・でも、甥っ子には読ませたくないなぁー・・・どうしよう?」
「勝手にやっててください。」
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