トビーフーパー『レプティリア』 ('00、日本Victor)
夏だ!人喰い生物が一番輝く季節の到来だ!
それにしても、どこの間抜けが『レプティリア』など観たがるのだろうか。田舎の湖にはしゃぎに来た若者のグループを巨大な鰐が襲う。それだけの物語。愛すべき作品だ。
しかしこの映画、もっとマシな作品になったのではないか、という疑惑があるにはある。
脚本は未消化で使いこなせていないが、巨大鰐の誕生には暗い因果があるらしく、その生誕の秘密を握るホテルは廃墟となり、朽ち果てている。地元出身の青年が語るそこに纏わる怪談話はゴシックめいて魅力的だ。
フーパーもそこに敏感に反応したのだろう、楽しく水遊びをする若者達を睥睨するように聳える焼け落ちた巨大な館(C.G.というか、書き割り)というノリノリのカットを入れている。
問題は、この館がただ単に背景として出てきただけで、サッパリ本筋に絡んで来ないことだろう。
お話は主として、若者たちと鰐とのデッドレースに終始し発展性がまったくない。
曰くありげに登場し、いつも唾を周囲に垂らし続けるワニ狩り名人も、速攻で始末されてしまう。彼の住まう家の美術は、完璧に『悪魔のいけにえ』リスペクトで出来上がっており、骨が吊るしてあるわ標本が飾ってあるわ、地道に頑張っているのだが、でも残念ながら本家の万分の一も禍々しくない。
足を怪我した友人を一輪車に載せて運ぶくだりは、まんまフランクリンへのオマージュ。
面白いんだけど、出涸らしのお茶をさらに煮詰めた感じで複雑な心境。でも終盤、鰐の行動がどんどんデタラメ度を増し、一軒家を破壊しガソリンスタンドが爆発、車に乗ってた男が焼け死ぬ(『鳥』だ!)と、なんか突き抜けた明るさが映画に漂い始める。イルカショーよろしく鰐が水面からジャンプし、ボート上空で一回転してみせる物凄いカットやら、まんま『アナコンダ』な人間踊り食いなんか見せられると、これはもうフーパー先生、楽しんでらっしゃるな、と。
最後の展開は『怪獣ゴルゴ』なんであるが、この映画、ひょっとしてフーパー流大怪獣映画なのかも知れんぞ、と憎めない気持になるのでありました。
ホラーじゃないんだな。そう納得すると気持に余裕が出来て楽しく観れますよ、この映画。
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