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2012年7月30日 (月)

『トレマーズ』 ('89、UNIVERSAL)

 いうまでもなく大好きな一本。
 定期的に、それこそ積立貯金並みにしょっちゅう観ている。全編に漂う、冴えない田舎臭い感じがとてもいい。夏が来ると観てしまう。
 この映画を日曜映画劇場で初めて観たときのことは、今でも鮮明に記憶している。痒いところを思い切り掻いて貰ったような、言い知れない心地良さがあった。
 どこがいいのかと訊かれると、例えば中国人のおっさんが喰われる場面。
 
床が抜けて、巨大な蛇のような怪獣の頭が顔を出して、まるでドリフのコントだ。おっさんの真剣に思いつめた表情もいい。物凄く大変なことになっているのに、妙な底抜け感があり、笑ってしまう。
 本当なら全滅してもおかしくないたいへんな事態なのに、意外と大勢生き残るところもポイントだ。とにかく人を殺せばいいと思っている最近のジャンル映画制作者の連中は一度胸に手を当ててよく考え直してみて欲しい。それほど生命の値段は軽いのか。
 だからといって、誰も殺さずに映画を進めるような無粋な真似もしない。
 死んでいくのが、孤独な世捨て人のジジイ、金持ちの老医者夫婦、道路工事人、中国人のじいさん、口うるさい独身者のハゲ・・・と、見事にアメリカンウェイから遠そうな、人に好かれない連中ばかりなのも、これはもう、完全に狙ってやってるんだろう。
 ケヴィン・ベーコンの猿顔がこれほどハマった映画はないし、ヒロインの華のない感じがリアルで素敵だ。この二名がキスする最後の場面はいつ観ても泣いてしまう。
 それを見守るフレッド・ウォードの顔は、松尾伴内に似ている。

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