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2012年7月16日 (月)

『アタック・オブ・ザ・ビースト・クリーチャー』 ('85、HIGH BURN VIDEO)

 紛れもなく傑作であるが、説明に困る。そんなビデオだ。
 
 これに関しましてはですね、かの『ZOMBIE手帖ブログ』さんに予告編(※シーン抜粋)が貼ってありまして、ひと目見るなり、即購入を決定。翌日お店に買いに走ったという。
 とにかく凄い内容なのだが、私の能力では諸君に適確に凄さを伝えきれる自信がまるでない。
 困った。
 だが、困ってばかりいても記事にならないので、なるべく簡潔に要点だけ、かいつまんで述べることにする。随所に意味が解らないと思うが、そこは私も同様によく解らないのだ。
 安心して、迷い子になろう!

【あらすじ】

 1920年代の北大西洋。豪華客船が沈没し、生き残った男女数名は救命ボートで脱出。地図にも載らない孤島に辿り着く。
 島に到着した途端、鳴り響く不吉なアナログシンセ音。
 この島は実は、赤い顔の小人が多数棲息する世にも珍しい島だったのだ!次々と襲い掛かる小悪魔のボディーアタックにどんどん殺されていく人間達!
 凶悪すぎる奴らは、人肉を喰い一瞬のうちに骨だけにしてしまう!こわい!怖すぎる!
 船員達は果たして、襲撃を逃れ、この恐怖のいけにえアイランドから脱出することが出来るだろうか・・・?

【解説】

 さぁ、難しいぞ。
 こんな単純かつ凡庸な組み立ての低予算ホラーのどこが凄いんだろうか?
 全然伝わらないのを承知で、以下列記してみる。

1)潰れまくった画質が凄い

 さすがに誰も聞いたことがない映画だけに、まともなマスターが発見できなかったものと思われる。ビデオのダビングを重ねて潰れてしまったような映像が延々流れ続ける。
 ハイビジョンだ、ブルーレイだと映像革命を無駄に繰り返す現代からすれば、ありえない酷いレベルの画質。心洗われる。人物の輪郭なんか滲みまくりだし、ときどき画面をトリミングぶれの線がよぎる。ロングに顕著だが、フォーカスの合わない森の木々とかあって、ぼやけて潰れてしまっている。
 これに似た映像効果を見たことあるな、と思ったら、この当時出回っていた裏ビデオのダビングにダビングを重ねた画質だった。
 
2)極悪な音楽(シンセ1台)が凄い

 全編に流れまくる謎のシンセサウンド。人を不快にさせるブピョとかブニュ~とかいった音を延々流しまくり、ファミコンのように単調で不愉快な旋律を要所要所に絡めてくる。画質の悪い画面と相俟って、嫌な感じのトリップ感が生まれる。
 地元生産の安いドラッグを無理やりキメてる感じ。高校の部室なんかで。塗料系とか。

3)生産性のない話が凄い

 低予算ホラーのストーリーから得られる教訓などあるだろうか?「面白い」とか「ひでぇ!」以外に?他になにが?
 この映画など、ひたすらに怪物の襲撃から逃げ惑っているだけだ。で、どんどん喰われていく。これほど省エネルギーに徹底した映画はあるまいと思われる。
 この夏、節電に協力したいと思っているご家庭や企業は、参考までに一度観ておいた方がよい。

4)まったく華のない出演者陣が凄い

 本当にパッとしないんですよ。
 でも逆にそこが「この人以外ありえない」感を醸し出している。単なる偶然なんでしょうが、安い映画が安い役者を呼ぶというね。望んで形成された安い磁場が絶妙です。
 なんか他の映画で顔見たことある人が混じってる気がするんですが、たぶん気のせいでしょう。

5)赤い小人の造形が凄すぎる

 やっぱし、コレでしょう。
 単なる人形なんだよね。手操作の。ハンドパペット。こいつの魅力が、この映画の味わいを確実に深めています。
 身長は30センチくらい、赤い顔に大きめの白目を剥いて、黒い蓬髪が長く伸びてる。小さい手がついてて、走るアクションの時には、「たけしのスポーツ大将」のカールくんみたいな動きをする。
 インディアンの呪い人形みたいな奴らだが、口の中には牙がびっしり生えてて、かろうじて生物感を保っている。かなりギリギリですが。ギリでアウト、みたいな。
 こいつらが木の上に固まってたり、草叢から覗いたり、倒木の上をダッシュしたりするスーパーSFXで襲い掛かってくるんだから、たまらない。
 当然、襲撃シーンでは喰らいつかれた役者さん、こいつらを全身に貼り付けて暴れる大奮闘を見せてくれますよ。空中を飛んで襲うシーンでは、人形を放り投げてます。その場面で解るんですが、人形に足はついてなくて、棒状のもので下半身が出来てて、ここを攫んで操ればいいんだなーとか、パペット的に余計な知識も満載です。
 本編の緩すぎるクライマックス、山頂に集う赤い小人数百匹!なんか神殿の石像みたいなものを拝んでる!これが奴らの神なのか?
 んー、それこそどうでもいい話、と思ったら、監督も同意見だったらしく、それ以上彼らの正体に触れる演出はなかったのでありました。気が利いています。

 ・・・以上、紛うことなき傑作!お求めはお近くのショップ、またはインターネットで!(ネットの方が早いと思うよ。)

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