ホドロフスキー/ヒメネス『メタ・バロンの一族』 ('12、小学館集英社プロダクション)
(「更新してんじゃん!」「俺は有名な嘘つきだ!」)
メタ・バロン。宇宙最強の戦士。殺し屋。ハゲ。
「ハゲにも偉大な人物はいる!」という革新的思想を持って、有名な自称天才作家アレハンドロ・ホドロフスキーがお届けするSF冒険活劇。(こんなの出すなよ、このクソ忙しいときに!レビューしなくちゃならないだろ、ってのは葬式弁当持ちのぼやきである。)
ホドロフスキーは、まぁ生涯『エル・トポ』呼ばわりされる、カルト地下世界では有名な映画作家/マンガ原作者な訳だが、愛読書は『ドク・サヴェッジ』である。
バカだ。
こいつ、絶対バカに決まっている。
そんな無価値なクズを堂々と絶賛するのは、フィリップ・ホセ=ファーマーかこいつくらいのものである。まったく尊敬に値する行為だ。
そういえば、ドク・サヴェッジもハゲ。ハゲ世界の先輩格。ハゲ・セイブ・ザ・ワールド。
さて、日本版も勿論女子高生の知らない大ヒット!傑作『アンカル』シリーズのスピンオフとして企画されたこの本は、ロボット二名の会話から幕を開ける。
(片方がロボット・トント。傑作和製宇宙活劇『宇宙からのメッセージ』でヴィク・モローと驚異の共演を果たした国際派メカ男優のアイツが著作権無視して堂々の出演。この件に関して東映がクレームをつけたという話は聞かないから、あいつはパブリックドメインなのかも知れない。あるいは経営陣から忘れられた黒歴史か。いずれにしても、『宇宙からのメッセージ』に本気でオマージュを捧げてる奴は初めて見た。)
「よーし、じゃあ、メタ・バロン様の話をしよう!」
「いっすねー!!あの人、マジ最高っすよ!カッコいい!!
なんたって、部分的に機械なのがいい!」
最高である。
【あらすじ】
メタ・バロンは小学校しか出なかった。地元新潟の貧農家庭に三男として産まれ、幼い頃から馬車馬のように働かされる毎日。楽しい記憶といえば上の兄に連れられて行った蜂の子狩りくらい。兄は地面に穿たれた雀蜂の巣を踏み抜いて全身四十四箇所を刺されまくり、その晩苦痛と高熱に魘されながら息を引取った。結果バロンの食事の取り分は増量となり彼は満足した。
バロン六歳の頃、銀河系に太平洋戦争が勃発。一家の長男は学徒出陣となって赤紙一枚戦地へ。老齢を理由に兵役を免れたバロンの父オトンは、闇商売に手を染め一攫千金巨万の富を築く。その基盤となったのは秘伝、なんでも持ち上げる不思議な軟膏であった。嘘のようだが適量を垂らすと塗られた物体の質量比重がゼロになる。慣性の法則は働かない。嘘のようだが本当。これは凄い真の輸送革命だと、徴発に次ぐ徴発ラッシュ。
財閥との癒着、軍兵站部への賄賂供与。辣腕振りを買われたオトンは、妻オカンの止めるのも聞かず政界へと進出。暗黒武器商人として一躍勇名を馳せるも、あっさり暗殺。凶弾に倒され、駆けつけた長男の目の前で息を引取る。(彼は既に将官となっていた。)家督はそのまま長男へと引き継がれ実家は兄の仕切るものに。今や巨大軍需産業と化している軟膏生産は、国家へパテント売却が決定。代償としてバロン一家は銀河の片隅に惑星を一個貰い受ける。
時にバロン、小学卒業の春であった。
【あらすじ】
意外だったがホドロフスキー、エンタメ作者として実は優秀じゃないのか。誰もそんな風に教えてくれなかったが、神話だカルトだ抜かす前にまず大冒険ありき。そういう極めて底の浅い優れたパルプ魂を持つ男ではなかったか。
(※本記事は気が向いたら増補されます。まだ原作読んでる途中なので。)
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コメント
最近読者になったばかりですが
更新楽しみにしていたので嬉しいです
ご愁傷さまでした…
忙しい時は更新の無理をしないで、
落ち着いたらまた面白い記事を
読ませてください!
投稿: 碧海 | 2012年7月11日 (水) 23時35分