わらいなく『KEY MAN①②』 ('11~、徳間書店)
横スクロールのアクションゲームみたいなマンガである。
この表現で上手く伝わるとも思えないが、気になる人は現物をあたってみて頂戴。意味が解る筈だ。アクションがなんか全体に横軸に流れる。だから、派手なぶっとい流線の割りにあんまり動きまくっている印象がない。二巻に併録されているデビュー作の短編なんて、結構読むのがしんどかった。
アメコミとの関連が深い絵柄があれこれ取り沙汰されている作品なので、私としては気になってチェックしてみたのだが、あんまり外人枠ではなかった。擬音が英語で、如何にもアメコミ的なデフォルメを施したキャラが出てきて・・・って、ドクスラが既にしてそうじゃん(『Dr.スランプ』の勝手な略称)。
他、如何にも月刊リュウらしい造形が施された恐竜刑事とか、猫耳女性記者とか、『逮捕しちゃうゾ!』みたいな婦警とか、サービス精神過剰に繰り出される。あんまり得意じゃない世界。
でも悪くない内容だと思うよ。
今日び、真っ向から絵で勝負しようとする気構えのある人なんて貴重だからね。丸ペンでカリカリ描きまくっていて、いさぎ良い。
で、コレ、どういう話かというと。
【あらすじ】
キィキィ、キィ、キィ、キィーーーマン!
鳥の鳴き真似と共に現れる不思議なヒーロー・キーーーマン。理由は小鳥が好きだから。でかい図体の割りに、少女チックなハートを併せ持つ奥行きのある人物だ。
だから、小鳥の敵はキーーーマンの敵。徹底的に対抗し、追い詰め、殲滅する。その為なら手段と金は厭わない。そんな男らしいキーーーマンに子供達はもう夢中。「・・・抱かれてもいいかな?」と最近考えている。(無論ダメだが。)
そんなある日、町中のカツラが消えた。
盗った犯人は、怪盗ヅラー、ってそのまんま。(この辺、俺ではなく俺の五歳の甥っ子が考えています。)
ヅラーは、ダイヤモンド以上の完全屈曲率を誇るスーパー頭頂部を持つ男で、どんな吸着力を持つカツラを乗せても、つるんと滑って落っこちてしまう。悲し過ぎる特異体質の保持者なのだった。そこで積年の恨み今こそ晴らさん、として全てのカツラに非常招集をかけたワケだ。
捕らえたカツラを地下室に監禁し、あらゆる性的拷問を繰り広げるヅラー。釜茹で、股裂き、強制アナルバイブ。人間としての尊厳を奪い取られ、次第にケダモノ以下の人類に成り下がっていくカツラたち。
勝ち誇るヅラーは、世界強制終了を宣言。金麦で乾杯した。
一方、特定の組織に所属するのが何かの屈辱のように感じてしまう、明らかに誤った人生観の持ち主・キーーーマンは、単身コソコソ聞き込みを開始。
町で出会ったキチガイや、電車によく出没する痴漢を勝手に事情聴取。(拒んだ奴は速攻で射殺。)参考になるとも知れぬ、風の噂よりまだ細いミニコミ記事やらタクシー運ちゃんの有名人乗せました情報を続々と採取し、事件解決への大きな足がかりを得る。
そして遂に、真犯人と思しき人物が郊外のペットショップ跡地に潜伏しているとの一方的な確証を攫んだキーーマン、前祝いに一杯やるべぇと出掛けたメイド喫茶でぼったくりに遭い、すっかりオケラに。
「オレ・・・一体、なにやってんだろうなァ・・・」
飲み屋の裏のゴミ箱に頭を突っ込み、うっすら涙を浮かべるキーーーマン。手に持った鳥籠の中の小鳥も心配そうにその顔を覗き込む。
そうだ、心機一転出直そう。路地裏のお星様を見上げてそう決心したキーーーマン、駕籠に腕先を突っ込んで、嫌がる小鳥をむんずと捕らえ、頭からムシャムシャ喰ってしまった。
【解説】
無論、物語はここで終わりではなく、魔女の三人目の弟子の出現を予告して次回へ続くのである。って、ここだけ読むとまるで『サスペリア』の紹介のようだな。
歴然と違うが。
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