« V.A.『ジンギスカンだらけ』 ('08、PiccoloTown) | トップページ | 天城鷹雄『猟蝕夜』 ('88、フランス書院文庫) »

2012年6月 4日 (月)

『情無用のジャンゴ』 ('67、IMAGICA)

 昨日はジンギスカン、今日ジャンゴ。

 我ながらカッコいいラインナップだと思う。
 世間はTVで放映されたスピルバーグ版『宇宙戦争』に夢中のようであるが、あれの見所は薄かった。宇宙人が投網漁の要領で人類を捕まえる場面ぐらいしか面白くない映画であった。
 そこへいくと、ジャンゴ。
 マカロニの帝王。棺桶にガトリング銃を隠し持つ男。とことん卑怯な黒づくめ。最高。

 ・・・だ
が。
 ここでのジャンゴは気合を入れる為、常にハチマキを着用しております。まるで、往年の談志師匠。気分はもう戦争。

 悲しい。
 悲しすぎるぜ、ジャンゴ!


 ま、御存知の通り、フランコ・ネロの『続・荒野の用心棒』が『ジャンゴ』の英語題でヒットしたもんで、関係ない類似品まで猫も杓子も軒並みジャンゴを名乗ったってのがジャンゴ大量発生の密かな原因なんですけどさ。ま、いいじゃないの。
 この作品でも主人公の呼び名は、実は“ストレンジャー”だったりするワケですし。
 オープニングの白い荒地は、ローマ近郊の住宅地開発中の場所だそうで、そんなせこい西部のスケール感の無さが、なんか大人になって観ると身に積まされるんだよなー。
 
 グランド・メサもないし、牛の暴走もちょっぴり貧相。
 その代わりといってはなんですが、血と銃弾は豊富。インディアンのおじさんが、頭の皮を剥がされたりします!

【あらすじ】


 騎兵隊が皆殺しにされ、黄金が奪われた!
 
奪った奴らはさらに仲間割れして、グループの残り半分を射殺!勿論、撃つ前に自分達の墓穴を掘らせるというお約束ありで。ワクワクするね!
 奇跡的に生命を取りとめた荒くれ者、通称はちまきジャンゴは、通りすがりのインディアン2名に助けられ、荒野へ復讐に旅立つ。砂漠の外れにあるという、伝説の「不幸の町」目指して。嫌な名前だなぁー。
 荷馬車の荷台に載せられ、砂漠を越えていくその姿は、負傷したときのバイオレンス・ジャックみたい。さすが、我が国随一のマカロニ度数を誇るマンガ。どっちが本家か、既にわからない。
 
 一方、金塊を奪った連中は、辿り着いた「不幸の町」でひとり残らず、町民からなぶり殺しにされる。銃で追い立てられ、水桶に顔面を浸けられ、首に縄をかけられて次々と悲惨な死を遂げていくギャングたち。転がった死体は一箇所に集められ、吊るされる。
 この町では、権力は腐敗し、住民は血に飢え、悪徳が大手を振って闊歩する。まさにこの世の地獄。
 最後に残った金塊強奪グループのボスを速攻の飛び入り参加で仕留めて、住民の拍手喝采を浴びるジャンゴ。殺しの世界に華麗にデビュー。
 
このとき使用した銃弾は、僅かに手元に残っていた金塊を溶かしてこさえた特製品だった為、まだ息の根が止まっていなかった裏切りの主犯は生きたまま全身の傷口をナイフで抉られるというスペシャルな憂き目に合い、死亡します。
 摘出した銃弾を手に手に大喜びの町の住民達。ちょっといい場面。

 さて、ここからはハメット『血の収穫』すなわち黒澤『用心棒』の系譜を引く、残虐ハードボイルドの王道展開となり、町を牛耳る大物達の間を主人公がウロウロして彼らを自滅させていくお馴染みのパターンが繰り広げられる。

 この町には3人の大物がいる。
 第一のボス、ソロは黒服のホモ集団を率いる危険なデブ。町一番の美少年を寄って集ってレイプして嬲り者にしちゃう。本気でやばい男。
 ちなみに主人公に惚れる純真な美女の役が、ここではこの猫背の美少年になっておりまして、マカロニ・ゾンビ映画『悪魔の墓場』でお馴染みのレイモンド・ラブロックが演っております。あの映画じゃ髭面のおっさんなんだけどなー。誰でも若い頃ってあるよなー。
 さんざん犯され捲くった美少年は、翌朝、はだけたシャツの胸元から覗く左乳首の下辺りに銃口を押し当て自害。死体を抱いて複雑な顔になる主人公。どうしたものか。はちまきがちょっと緩んでます。

 第二のボスはテンプラ。美少年の実の父。揚げ物系。普通に飲み屋を経営するも、キツい顔の後妻に全て牛耳られ、良いとこ無し。どうも、この後妻と美少年の間にも何かトラブルがあった御様子で、少年が後妻の下着をナイフで切り裂く、どうでもいい感情的見せ場が出てきたりもします。
 テンプラはテンプラで、揚げ物だけに結構人気がある訳ですが、熱し易く冷め易い性格。息子が死んだと聞かされて、すわ復讐と乗り込み、あっさり返り討ちで全滅。
 後妻も巨大なカツラでヨレヨレ走って逃げようとしますが、カツラが出口に痞えて捕まり、死亡。この話、それにしても皆んなすぐ死ぬ。マカロニの典型的パターンだな。

 第三のボス、その名もハーゲルマン。いいね!この名前!
 こいつは極端にしみったれた性格で、妻を自宅に監禁してるバカ。3ボスの中では一番イケてるからって、いい気になるなよ、ハーゲルマン。遂に黄金を手に入れ、有頂天になるも、妻がマジ切れして家に火を放ち、火災炎上。溶けた黄金を引っかぶって顔面金ピカになって窒息死。
 この火事を存分に野次馬根性で見終わった主人公、再び荒野に馬を走らせるのでありました。

【解説】

 最後に教訓めいたことを書いておくが、

 情け知らずと恥知らず。
 本当になりたいのは、どっち?

|

« V.A.『ジンギスカンだらけ』 ('08、PiccoloTown) | トップページ | 天城鷹雄『猟蝕夜』 ('88、フランス書院文庫) »

超・神秘・映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『情無用のジャンゴ』 ('67、IMAGICA):

« V.A.『ジンギスカンだらけ』 ('08、PiccoloTown) | トップページ | 天城鷹雄『猟蝕夜』 ('88、フランス書院文庫) »