マイケル・クライトン『コーマ』 ('77、M.G.M.)
ロビン・クックのベストセラー医療サスペンスを、“ホワッツ・マイケル?”でお馴染み、マイケル・クライトンがのんびり鼻くそほじりながら映画化!
もう、ぬるくてぬるくて、お茶も完全に出涸らし状態になる、抑制の利きまくった展開がある意味で堪えられない魅力。
説明しにくいが、一例を挙げよう。
悪の組織に命を狙われる警備員のじじい。緊迫した事態に気づかず巨大病院地下の詰め所で、クッキー齧りながらエロ本を読んでいる。海外であるからして、コーマン全開は当たり前。どころか、どどめ色した内臓の襞までちょっと露出している。ウヒョー!さすがは医療サスペンス。
現れた暗殺者、ターゲットのじじい以外には全員コイツの存在が知れているワケだが、画面の外側に待機し、今か今かと出番を待っている。
のんびりページを捲るじじい。
おっ、プレイメイトにこんな意外な一面が。興味深げに記事を読んでいくと、彼女は実は年子だった。・・・だから何?
じじい越しに覗く、電源設備の巨大な配電盤。
この瞬間、観客諸君に嫌な戦慄が走る。まさか、これを使うのではないだろうな・・・?
それにしても、このカット妙に長い。クライトン風情が意外な展開を用意しているとは到底思えないが、それにしても間尺が悪すぎないか。バレバレではないか。こんなにハッキリ映してしまって、今更配電盤に投げ飛ばして感電死させるなんて通俗な手口ありえなくないか?
躍り出る殺人者。じじいに思い切り、体当たり!
落ちるエロ本。あわわ、せっかくのヌードが。悲鳴を上げるじじい。大きなブレーカーの谷間に跳ね飛ばされ着地。
じじい、束の間ジッとしている。・・・え?!
殺人者、偶然落ちていたモップの柄でじじいをこずくと、ようやく威勢良くスパークがあがり出し(花火)、ドリフ張りの演技力で電気に痙攣する芝居が始まる。
数秒間、雑なひとり芝居を見せられ、終わると、じじいは床に倒れて小便を漏らし絶命している。白目を剥いた超絶に間抜けな死に顔。悲壮感ゼロ。間抜けがくたばった、としか表現しようがない展開が素敵。
殺人者、確認のため死体をモップで小突き、それでも足りないのか、ふところから取り出したサイレンサーで二三発撃ち込んでトドメを刺す。
なら、最初からそれを使え。
こんな感じで先読みの充分可能な不測の事態がのんびり押し寄せてくるので、それなりに飽きずに観終わることが出来た。
度を越したセックス中毒のマイケル・ダグラスが、立身出世のことしか頭にない最低野郎を好演!生きた彼女とまた一発キメたいが故に、一度ついた悪の側から軽やかに寝返ってみせるその態度もまた最高!お前、人間らしい心はないのか?
さて、お話の方ですが、
「脳死状態の植物人間の臓器をオークションにかけて全国に転売している奴がいた!さすがはアメリカン!」
・・・という感じかな?
ちょっと、平凡?みたいな。
また、この残虐非道過ぎる筈の臓器オークションの場面がですね、ノミ競馬の実況ブースみたいなとこにオバちゃんが座ってですね、世界各地から鳴り響く電話を一生懸命取り捲るという。助手にチューリッヒまでの輸送時間を計算させたりして。
冗談なのか、本気なのかサッパリわかりません。
陰惨極まる臓器密売も、単なる宅配便の仕分けにしか見えなくて、間抜け度アップだし。
その宅配業者のトラックの屋根にしがみついたヒロインが、からくも悪の魔の手を逃れる展開に到っちゃあ、何かサスペンスというものを根本的に大きく履き違えている気がして、決して嫌いになれませんでした。
監督・脚本 マイケル・クライトン。シナリオを律儀にフィルムに起こしてみても、それだけじゃ映画にならないってのは、子供だって解る。
才能あるかもよ。
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