山田風太郎「忍者六道銭」 ('71、角川文庫)
佐伯俊男の表紙が懐かしくて、つい買ってしまう角川文庫版忍法帖の一冊。
「あんたに言われるまでもなく、面白いのは解り切ってるじゃん!」
その通りだ。
短編「忍者六道銭」はね、悪いお姫様に唆された忍者ふたりが、姫様の祝言相手のちんこをさば折りにして歩く話だ。ホラ、面白いだろ。子供でもわかる。
歴史的事実を捻じ曲げることは一切しない格調の高さと、人間生理に根ざした下衆で幼稚な思考と。
全体になんか大らかなんですよ。考えが。理屈じゃないものを系統立ててちゃんと出してくる図太い根性と、凛として譲らない品格とね。非常にハッキリしております。娯楽小説はやっぱり明確じゃないと。読んでて非常に気持ちがいい。背筋が伸びる気がします。
お陰様で、エロい場面はふんだんにあるのに、抜けません。
そこがまた、なんか一流っぽいとこだな。
さわやかな風俗なんですよ。たぶん。忍法帖ってのは。
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