マーティン・スコセッシ『シャッター・アイランド』 ('10、パラマウント)
巨船の残骸と共に北大西洋の荒波に没した筈の、あいつが再び現れた!
レオナルド・デカプー。
さすがに長時間塩水に浸かっていただけあって、全身はブクブクに膨れ上がり、以前の貴公子然とした風貌は影も形もないが、まぁいいじゃないですか。ホイットニーも死んだことだし。
※編集部注・軽い勘違い。『タイタニック』の主題歌はセリーヌ・ディオン(妖怪)である。ちなみにホイットニーが歌っていたのは、ケビン・コスナー『ボディガード』。いろいろと不憫な感じ。
さて、そんな水死体が主演するこの映画だが、『羊たちの沈黙』『セブン』路線かと思ったら『赤い影』のリメイクだった!あぁ、勘違い。神も仏もないものか。
【あらすじ】
あなたの地元にもあるだろう、シャッター商店街。ますます増えてるぞ、シャッター商店街。
経営者の高齢化。後継者不足。資金問題。加速する値下げ競争とダンピング。かくてシャッターを降ろす店がまた一軒。そんなシャッター問題と縁の深い犯罪者向けの精神病院。隔離施設。それがシャッター・アイランドだ!
バットマン世界におけるアーカム・アサイラム。夢野久作『ドグラ・マグラ』に出てくる狂人の解放治療施設。あんな感じね。
院長はガンジー。警備隊長はネオ・ナチ。主治医がメリン神父。
こんな病院にあんた、住みたいか?
閉じ込められたデカプーは決死の脱出を試みるが、あえなく失敗。ロボトミー手術されて、結局バカになってしまった。
【解説】
スコセッシがなにゆえ「俺もサイコで一発!」と思ったのかは解らないが、デカプー主演の今更なヤクザ抗争映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』のあと、彼が選んだのは、現実と虚構の境目が曖昧になり観客がイライラし始めるこの映画だった。オチはP・K・ディックの短編「にせもの」だし。あらら。
サイコで一発当てたジョナサン・デミが『ストップ・メイキング・センス』の監督なら、スコセッシ「俺にだって『ラスト・ワルツ』という財産があるわい!」ということで、よせばいいのに、賞味期限切れにも程があるロビー・ロバートソンを引っ張り出して来て、サントラの監修をやらせたりしている。アタマ悪い。
ロビー、あいつこそが服役囚の張本人みたいな奴ですよ。顔に無理やりな縫い目のある、ブラックジャック先生みたいな囚人。アレ実はあいつのカメオ出演ですからね!禁固百万年の刑で服役中。最高かつ最低の男。イイネ!(投げ遣り)
しかし、コレ、さっぱり面白くないという点以外は、いい映画だと思いますよ。ラストのクレジットの出し方なんか、クソ真面目でいいです。『アマデウス』みたいです。(うろ思え)
冒頭、いきなりデカプーが船酔いでゲロするシーンから入るあたりも、卓越したセンスを感じさせますね。あんなに豪華客船の甲板で騒いでみせておいて、実は船には弱かった。こりゃ意外な秘話です。新伍・紳助ここだけの話。うわ、やばい。
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