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2012年3月 4日 (日)

大森しんや『恋ヶ窪ワークス(愛蔵版)』 ('08、モーターマガジン)

 喫煙室で若い美女との会話。

 「え、ブログやってるんですか?どんな感じの・・・?」
 「いや、あの、きみが興味を持つような類いじゃ全然なくてー・・・(冷汗)。
 古い怪奇マンガとか胡散臭いDVDだとか、そういうモテ要素ゼロの、超狭い世界のレビューを連続して400本ばかり・・・」
 「そんなの、つまんない!(キッパリ)」
 「はァ・・・?」
 「もっと、“ボクの最近のマイブームは茄子料理で~す!”だとか、“最近ようやくSuica導入しまして~(笑)”とか、自分の事を書けばいいじゃないですか!!
 その方が絶対ウケるし、面白いですよ!」
 「はァ・・・。そういうもんかねェ・・・。」

 「で。」
 彼女はニッコリ笑ってこう言った。
 「そこに、あたし、出してください!」

 三年ばかり記事を書き続けてきたが、進んで出演させて欲しいと言われたのは初めての経験だった。(ちなみにスズキくんと佐藤師匠以外のキャラは全員、無許諾である。)
 ・・・って、こんな扱いでいいですか、Ⅰさん?
そろそろ、本筋に戻りますよ。
 
 『恋ヶ窪ワークス』の掲載誌は、「Mr.バイク」。専門誌系である。うーん、困った。無免の私にゃどんな雑誌なんだか、さっぱり解らない。
 情報収集として社内の1100ccオーナー氏にリサーチしたところ、雑誌としての立ち位置は、
 「う~~~ん、そうですねェー、『鉄道ファン』に対する『鉄道ピクトリアル』みたいな感じ・・・?」
 難解である。却って問題がこじれた気がしないでもない。そういえば、こいつ、バイク好きでもあるが、立派な鉄オタでもあったのだった。訊く相手が悪かった。
 だが、安心して。
 そういう、狭い世界をものともしない『恋ヶ窪ワークス』は、一般のマンガ好きにも安心して薦められる、完成度の高い仕上がりになっている。

 要はコレ、初期型・松本大洋系の絵なんだよね。『花男』から『鉄コン』までのね。松本本人としてはとっくにマリアナ海溝に遺棄した絵柄なんでしょうけど、まだまだ有効性保ってるね。「安心、安心。」
 バイクマンガといえば、チャンピオン・ヤンキー路線がすぐ浮かぶんだけど、真逆。このマンガにそういうツッパリ臭はございません。ある種のアニメ臭はありますが。鼻につく程ではない。画力がしっかりしているからでしょう。上品なモンです。
 
 お話は、元レディースで高校中退のおねいさんが、あやしいおやじの経営するバイク屋に勤めて部品整備に奔走する!という地味にも程があるだろ的なストーリーで、確かに一般誌には載りにくい。
 作者がパーツばらして組むのが好きなメカ好きの為、バイクマンガのくせしてバイク走ってる場面がそれほど多くない。当然、派手なアクションとかあるじゃなし。かわいくて、暖かみのある絵柄なので、残念だがお色気要素も皆無。
 
 以上のないないづくしがマイナス方向に作用しないところに、このマンガの良さがあるように思う。
 だいたい、免許取る気もない40男が何の気なく読んで充分話についていけるだけでも、奇跡。作者の確かな漫画力の証しである。
 バイクの前知識は不要。ま、あるに越したことはないでしょうが、ここは敢えて不要と断言したい。
 一応物語の設定上、ファンタジー的なオチはあったりするのだが、それで何かが大きく変わったりしないんだよね。結構、大仕掛けな仕込みなんだけど。
 通過儀礼的な対決シーンはありません。
 花男がホームラン打ったり、クロが自分の暗黒面に飲まれたり、スズキさんが死んだり、ゼロが荒木に一緒に咲いてと頼んだり。そういう印象的な場面は一切カット。ま、単純に出来ないからなんでしょうけど、それやっても単なるコピーじゃん。
 
 だから一見、大洋っぽく見えても、模倣の悪癖に陥っていない。ちゃんと作者オリジナルの世界が構築されている。巨大なモアイ像は出ないし、UFOも飛びません。
 そのバランスがとてもいい。
 なんか重いものを背負ってしまった大洋本人よりも、無責任で自由で楽しげな感じがしましたので、お勧めする次第です。

 以下『SUNNY②』のレビューに続くかも知れないし、続かないかも知れない。
 実は新刊書の棚で見つけて、なんか素通りしてしまったんだよ・・・。 

 
 (つづく)

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