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2012年2月 8日 (水)

レイ・ブラドベリー『火星人記録』 ('56、元々社)

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 かの有名なブラッドベリーの『火星年代記』、最初の翻訳のバージョンがこれである。
 知ってる人はみんな知ってる。悪訳として名高い、元々社の最新科学小説全集の一冊。
 だが、果たして本当にそうなのか。福島正実が流布したデマゴーグである可能性は?我が国の誇る翻訳SFファン第一世代の人々が、極めて善良でだまされやすい人種であったことはその後の歴史が証明している。
 論より証拠、さっそく読んでみよう。

 「家々の扉は閉ざされ、窓の外には錠がおり、窓ガラスは霜で曇り、どの屋根にもつららがさがって、子供たちは斜面でスキーをやり、主婦たちは凍った街路を毛皮にくるまって巨きな熊のようにどたりどたりと歩いている。ほんのひとときはオハイオの冬であった。(斎藤静江・訳)」

 主婦がどたりどたり。正直、微妙。

 「ロケット・サマーだ。その言葉は、明け放しの吹きとおしの家々の中にいる人びとの口から口へ伝わった。ロケット・サマーだ。(同上)」

 ロケット様。三名様。そこだけ英語使われてもなぁー。

 なんか、世間の言うのは意外と正しいような気がしてきた。
 だが、まぁいい。
 この本、\105で投げ売りされてたんだから!その事実に、心ある諸君は号泣だ。あんたも、じじいになったってことだ。
 そういう方には無用のおせっかいだろうが、呆けてしまって話を忘れたお年寄り、ラノベ以外の活字が一切読めない若造、SFを捨てたDくんのために、以下簡単に、『火星年代記』のストーリーをおさらいしておこう。
 こいつは試験に、出るゾ!


【あらすじ】

 火星には古くから火星人が住んでいて、地球人が探検にやって来ると、親切なふりして殺しまくっていた。
 どうやって殺すかというと、昆虫(毒蜂)を発射する銃とかだ。はなはだ効率が悪い。
 これだけで滅亡するには充分な頭の悪さだったが、火星人の家は水晶で出来ていやがった。なんか眩しいし、夜は寒いし、床は滑るし。お陰様で、火星人の頭にはこぶが絶えなかったという。

 そんないい加減な奴らに退治されてしまう地球人も地球人だと思うが、ともかく、苦労して真空の海を漕ぎ渡り火星に着くや否や、歓迎と見せかけ、プスリ。
 
物陰に潜んで、ザクリ。
 という訳で長らく火星は人類未踏の惑星だったが、悪事はいつまでも続かないもの。
 あるとき、到着した探検隊がインフルエンザを持ち込むと、たちまち会社全体に蔓延、遂には企業倒産に結びつく深刻な経営危機に陥った。
 律儀に予防接種を受けていた人達も、残念だが、惑星間を飛び越えた香港B型に対しては勝ち目はなく、可哀相に全員が死滅。
 火星は、死の星になってしまった。

 誰もいなくなった空き家には、地球から浮浪者がやって来て、入居。どう見ても不法占拠だが、そもそも地球の法律が火星に適用されるのだろうか?
 暇な連中が無駄な議論に花を咲かせている間に、地球では超大国間の抗争が激化。各国の軍隊が衝突。
 見上げた地球の表面で、何発もの核弾頭のキノコ雲が輝いた。

 「あれまー。地球は死の星になっちまったゾイ。」
 それを見ていた薄汚いおやじが言った。
 「帰るところがなくなっちまっただよ。」

 「いまの俺たちには、入居する家があるから、もう浮浪者じゃねーーーゾ!!」
 
リーダー格の浮浪者が華々しく宣言した。
 「さらにいえば、地球も無くなったんだから、もう地球人ですらねぇ!!
 俺たちこそが、火星人だ・・・!!」


 すると、物陰に潜んでいた火星人の生き残りがハリセン片手に飛び出してきて、思い切りどついて叫んだ。

 「・・・んなワケ、ねーだろー!!!」

 ♪パオ、パオ、パァァーン。

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