白石晃士『バチアタリ暴力人間』 ('10、イメージリングス)
「あぁ、インディーズ映画って、こういうのだったよなぁー!」
と、来しかたを振り返って私なんぞは思うのである。
明らかに、ここには“なんでもあり”が売りだった、かつての時代が共鳴している。
やばい映画。
やばい音楽、
それらは一過性のブームを通り過ぎ、消費され、記憶の彼方に消え去ってしまった。
やばいものをつくっていた人達は、本当にやばい人だったから、手配されたり、死亡したりで、今のクリーンな世の中では、なかなか表面に浮上してくることがなくなった。
『バチアタリ暴力人間』は、そんな時代に敢えて物凄いダメな人達を再配置し、野蛮さを取り返そうとする試みである。
いい歳こいたボンクラ、笠井。山本。
彼らをわれわれは昔から知っていたし、地元でも上京してからも周囲に必ず居た。
間抜けな音楽が好きで、間抜けな格好で、将来はビッグになりたくて、仕事に就いてもすぐ辞めて。お陰でいつもアパート暮らし。
彼女もいたけど、いつも愛想を尽かされ、逃げちまった。
だんだん彼らを見かけなくなっていったとしたら、それは、きみの年収が増えたからだよ。
マンションも買ったし、ね。
暴力人間とは、実は、欲望のままに正直に生きている、極々まっとうな人達のことであって、スーツ着てネクタイ締めてるわれわれこそが、社会権力をバックにつけた立派なヤクザ者なのである。
せめて、その自覚は持とうじゃないか。
こういう映画を撮ると、どうしても先達と比較されてしまうのは仕方のないところで、ラストの卓袱台のひっくり返し方がどーだ、こーだ、言われてしまうのは避けられないところだけど、まぁ、いいじゃないの。細けぇことは。
それにしても、みんな、ホント、ヤンキー好きだよなぁー。
その点は、ちょっと、呆れる。
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