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2011年12月28日 (水)

ディーン・クーンツ『ファントム』 ('98、MILAMAX)

 最終的に見どころのない映画。
 かなり派手なことが起こるのだが、面白いことにならない。
 現代に撮られた50年代の怪獣映画。ならば視覚効果は頑張っている方だろう。お色気も人物の掘り下げも皆無なのは、ヘイズコードがまだ幅を利かせているから。きっと、そうに違いない。
 それでも、ちょいと面白いのは、以下の場面である。

【シーン抜粋】

 美人姉妹がアメ車転がして実家に帰って来ると、町中に人の気配が無い。
 ありふれた山間の田舎町なのに、犬猫の姿さえない。
 不安になって家に駆け込むと、家政婦が血を流して死んでいる。鍋はかけっ放しだ。顔を見合わせる姉妹。
 慌てて保安官事務所に駆け込むと、保安官が目を剥いて死んでいる。床に散乱する薬莢。なにかと闘ったのか。それにしても、ひどい死に様だ。

 ほかの家はどうか。
 近所の、老夫婦がやっているパン屋に行ってみる姉妹。準備中だったらしく鍵の掛かっている表口を避け、裏のお勝手口から侵入。
 パンを捏ねていたらしく、延ばし棒の両端を掴んだ手首が、千切れて落ちている。
 思わず顔を見合わせる姉妹。
 と、絶妙なタイミングで大きなパン焼きオーブンのタイマーが鳴る。チン。
 瞬間、緊迫する空気。姉はエイリアンを前にしたシガニー・ウィーヴァーのように、自分にブツブツ言い聞かせはじめる。「落ち着け・・・落ち着け・・・なんでもない・・・なんでもない・・・パンが焼けただけよ・・・パンが焼けただけなんだわ・・・」
 そろそろとオーブンの扉を開けに掛かる姉。
 固唾を飲み、見守る妹。(あたしら、なにやってんだろ・・?)
 開けると、普通にパンケーキが幾つも並んでいた。よかった。
 途端に。
 スロットマシンの大当たりのように、オーブン上段からゴロゴロ落っこちてくる、老夫婦の生首!
 
無念そうな表情で、グッと口を引き結んでいる。悲鳴をあげる姉妹。こける。

 生首の扱いが、なんだか、ぞんざいなところが素晴らしい。市川昆に影響を受けているみたいだ。

 この映画に出てくるモンスターは、人間以上の知能を持ち、犬やら蛾に擬態したり、吸収した者の姿に成り変って暴れたり、しまいに触手を生やしたり、派手なアクションやりたい放題なのであるが、最終的にどんな奴だったのか、何をしたかったのかさっぱり解らなかった。

 クーンツ。ダメな奴だなぁー、クーンツ。
 だいたい名前からしてダメっぽいぞ。クーンツ。

 無理やり上下巻にする必要などないから、もう少し内容を整理して来なさい。

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