ディーン・クーンツ『ファントム』 ('98、MILAMAX)
最終的に見どころのない映画。
かなり派手なことが起こるのだが、面白いことにならない。
現代に撮られた50年代の怪獣映画。ならば視覚効果は頑張っている方だろう。お色気も人物の掘り下げも皆無なのは、ヘイズコードがまだ幅を利かせているから。きっと、そうに違いない。
それでも、ちょいと面白いのは、以下の場面である。
【シーン抜粋】
美人姉妹がアメ車転がして実家に帰って来ると、町中に人の気配が無い。
ありふれた山間の田舎町なのに、犬猫の姿さえない。
不安になって家に駆け込むと、家政婦が血を流して死んでいる。鍋はかけっ放しだ。顔を見合わせる姉妹。
慌てて保安官事務所に駆け込むと、保安官が目を剥いて死んでいる。床に散乱する薬莢。なにかと闘ったのか。それにしても、ひどい死に様だ。
ほかの家はどうか。
近所の、老夫婦がやっているパン屋に行ってみる姉妹。準備中だったらしく鍵の掛かっている表口を避け、裏のお勝手口から侵入。
パンを捏ねていたらしく、延ばし棒の両端を掴んだ手首が、千切れて落ちている。
思わず顔を見合わせる姉妹。
と、絶妙なタイミングで大きなパン焼きオーブンのタイマーが鳴る。チン。
瞬間、緊迫する空気。姉はエイリアンを前にしたシガニー・ウィーヴァーのように、自分にブツブツ言い聞かせはじめる。「落ち着け・・・落ち着け・・・なんでもない・・・なんでもない・・・パンが焼けただけよ・・・パンが焼けただけなんだわ・・・」
そろそろとオーブンの扉を開けに掛かる姉。
固唾を飲み、見守る妹。(あたしら、なにやってんだろ・・?)
開けると、普通にパンケーキが幾つも並んでいた。よかった。
途端に。
スロットマシンの大当たりのように、オーブン上段からゴロゴロ落っこちてくる、老夫婦の生首!
無念そうな表情で、グッと口を引き結んでいる。悲鳴をあげる姉妹。こける。
生首の扱いが、なんだか、ぞんざいなところが素晴らしい。市川昆に影響を受けているみたいだ。
この映画に出てくるモンスターは、人間以上の知能を持ち、犬やら蛾に擬態したり、吸収した者の姿に成り変って暴れたり、しまいに触手を生やしたり、派手なアクションやりたい放題なのであるが、最終的にどんな奴だったのか、何をしたかったのかさっぱり解らなかった。
クーンツ。ダメな奴だなぁー、クーンツ。
だいたい名前からしてダメっぽいぞ。クーンツ。
無理やり上下巻にする必要などないから、もう少し内容を整理して来なさい。
| 固定リンク
「超・神秘・映画」カテゴリの記事
- 怪獣ウラン (1956、X THE UNKNOWN、ハマー・プロ)(2022.06.19)
- 雨穴「とある一軒家で見つかった、不気味なビデオテープの真相」 2,050,876 回視聴2021/09/24(2021.10.26)
- ウィリス・H・オブライエン『黒い蠍』 ('57、ワーナー)(2018.08.12)
- リドリー・スコット『プロメテウス』 ('12、20世紀フォックス)(2014.09.15)
- 『盲坊主対空飛ぶギロチン』 (’77、ドラゴンフィルム)(2013.09.21)
コメント