『ある日、どこかで』 ('80、Universal)
(※事前にご注意。以下の文章は完璧にネタばれである。)
正直申し上げるが、たいした映画ではないのだ。
リチャード・マティスンの原作はどう贔屓目に見ても、ジャック・フィニィーの換骨奪胎だし(ならば大甘だが「愛の手紙」の方が良いような気がする。映画向きではないが)、監督に到っては、きみ、『燃える昆虫軍団』の男だよ。ヤノット・シュワルツ。代表作『ジョーズ2』ですよ。どっちも傑作ですけども。
それにしてもこの映画を好きな連中が多いのには驚いた。どいつも、よう泣きやがる。たぶん、同世代の連中だな。お前ら、アホの集まりか。中学のとき観た映画が最高、なんて堂々と宣言するなんて、人間として恥ずかしくないのか?
・・・ないか。そうか。
と、毒づいてばかりいても仕方ないので、少し分析めいたことを述べることにする。
この映画を好きな連中は畢竟、主演の美男美女に騙されているのである。
クリストファー・リーブ。
スーパーマンだね。こりゃ、ちょっと文句ないよね。二枚目、しかもいい奴。
ジェーン・シーモア。
『バミューダの謎』で海亀と一緒に泳いでた女だよね。残念だが、可愛いね。認めます。
で、テーマは、時を越えた果たされぬ恋愛、と来る。
こりゃ、完璧だ。
まいった。
観客は自動的に彼らの味方につく。
この映画のプロットはお粗末な欠陥品であり、微塵も説得力がない。
タイムトラベルの方法も、60年前のファッションに身をつつんでひたすら自己暗示を続ける、非常に危険な方法。そりゃ、この映画全体がリーブの妄想って解釈も飛び出すわな。
ネタを割るけど、なぜ、コインを見た途端現代に引き戻され、1912年に二度と戻れないのか、根本的にわからない。
コケの一念?ならば、なんでもう一度時間の壁を越えられないんだ?
答えは簡単。
作者が、時間旅行という反則技を、自分に都合のいい道具としてしか使っていないから。
この二名は、引き離されるべくして離されるんです。それで泣け、と言われても困る。
虚構の中に非現実を持ち込むとき、一番慎重に警戒すべきところを、あまりに無自覚にやってしまっている。詰めが甘い。甘すぎる。藤子Fに土下座しろ。
・・・って、まぁ、甘口もたまにいいじゃないですか。
白昼夢みたいな、美男美女の恋愛をボケーーーッと眺めるのも、あんたにはいい薬ですよ。
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