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2011年12月11日 (日)

金平守人『エロ漫の星(下)』 ('11、少年画報社)

 素直に感動できる、よいマンガではないかと思う。文部省推薦にしたいぐらいだ。

 人は何かを信じる。何かを信じて生きていく。その何かが、エロ漫画であってもよいのではないか。
 ならば、ひとつ、エロ漫の星を目指そうではないか。
 なに、くだらない?
 確かに。
 だが、おおむね、人が本気で信じているものは、驚くほどくだらないものばかりだ。

 このマンガは上下巻に分かれていて、上巻はテクニック編だというから、もともと“エロ漫版「サルまん」があってもいいじゃないか”的な企画でスタートしたものだと思うが、本家に同じく、実はマンガとして一番面白いのは、解説部分ではなくて、ストーリーが具体的に立ち上がっていく過程である。
 言い換えれば、作者の本気汁が出始めてからだ。
 それは、信仰の告白である。
 
 具体的にきみを救ってくれたものはなにか。過酷な競争社会の中で、先に進むのをためらうとき、落ち込み心が壊れそうになったとき、きみは何に救われたのだったか。
 今となってはさっぱり思い出せない遠い昔に、電線を見上げ、星に祈ったことはなかったか。
 人はどんな手段を使っても、生き延びていく。
 その何かがエロ漫であったとしても、誰にそれが笑えるだろうか。


 私がしたいのは、二次元とかリア充とか、そういった話ではない。
 それは瑣末の議論だ。本質はそこではない。
 そこに読者がいるかぎり、マンガは続いていくだろう。その事実に私は恐怖し、安堵する。
 なんて時代に生まれちまったんだ。

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