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2011年10月 2日 (日)

ジョン・カーペンター『ヴァンパイア最後の聖戦』 ('99、日本ヘラルド)

 実は現在ちょっぴり国内版で入手困難なカーペンンター映画のリストというものがあって、心ある映画ファンを悩ましている。
 
 『パラダイム』。
 『マウス・オブ・マッドネス』。
 『ゼイリブ』。

 特に『ゼイリブ』が出てないのは、まずい。これ、本当に心底くだらない大傑作ですから。
 サングラスをかけると、宇宙からの侵略者が見える!で、「かけろ!」「かけねぇ!」で白人と黒人がドヤ街でゴミ箱倒して延々ど突き合いする、という。
 あたしは、二回テレビで観た。あと、版状態の悪い中古を店頭で二三回ほど。
 『遊星からの物体X』の誰かが作ったリメイク(ノルウェイ基地が舞台のエピソード0!)の公開にあわせて、どこかの会社がドドンと再発してくれないだろうか。

 『ヴァンパイア最後の聖戦』 はそこまでレアではないが、実は意外と時代に置き忘れられた一本である。
 別にたいした内容じゃないよ。ヴァチカンの組織したヴァンパイア討伐隊というのがあって、町内の清掃車みたく地道な掃討活動を繰り広げている。が、ヨーロッパ部隊が全滅!(スチール写真で紹介)ジェームス・ウッズの主人公率いるアメリカ隊も、二名を残し壊滅的な打撃を受ける。ヴァンパイアの親玉、吸血界の大物が昼間も出歩ける通行免除手形を入手しようと遂に姿を現したのだ!
 って、この親玉、実は14世紀の人物なので、600年間もどこで無駄飯喰ってたのか謎ですが。このへんはカーペンターではなく、原作書いた奴に訊いてくれ。どうせ、吸血雑学で誤魔化されちゃうんでしょうけど。

 この映画実は、安岡力也を若くしたようなエルヴィスかぶれのデブと、眉毛のないジェームス・ウッズ(短気な中年)との男の友情を描いた、いつものカーペンター映画なのであります。
 吸血鬼のイメージは、ホレ、あれだ。ハマー・フィルムのドラキュラ。クリストファー・リーの演じた最初の二本『吸血鬼ドラキュラ』『凶人ドラキュラ(この邦題センスあるよなぁー!)』に非常に近い。ま、マントとかネクタイありませんが。
 死人のくせに、やたら強い人。こわい人。ときどき、咬みつく。
 そういう人が本気でガンガン襲ってくるので、たいへん面白いです。
 珍しく、吸血鬼に噛まれた売春婦のネーチャンが全裸でベッドに縛り付けられたりするお色気描写がありますが(ストイック極まるカーペンター映画では、実はコッチの方が生首飛ぶよりショックシーン)、会話が進むと、すぐにシーツかぶせてあげちゃうの。
 そのへんに、ハワード・ホークス的な男の優しさを見ましたね。

 昼間の太陽の下に引き吊り出されると、吸血鬼の身体がボンボン燃えて、しまいに爆発!
 そういう幼稚で無茶な発想が面白いと思える方は必見。発火の初期段階は、かなり仕掛け花火状態ですので、花火をつくっている職人さんも、ぜひ。
 

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