ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』 ('11、国書刊行会)
SFを読むのが好きな方、必読。
・・・が、しかし。あたしは、最近あんまりSFを読んでいないのだった。
どっからかって云うと、ウィリアム・ギブスン『ニュー・ロマンサー』以降。む、今となっては、えらい昔だよなぁー。
『ニューロマ』、本当に嫌いでなぁー。あんなもん褒めるなんて、アタマおかしいんでないの。
じゃあ、潔く一切読まないかというと、そんな事は無くて、(あぁ、イヤだ)『新しい太陽の書』は当然読んでるし、バラードだってポロポロ読んでる。間違えて『リングワールドの玉座』なんてのも読んじまったなぁー。あれは、しくじった。『リングワールド・エンジニア』が傑作だからといって、そのさらなる続編が面白い訳ではないのだ。いや、積極的に愚作であったと言い切りたい。意味なし。いい加減にしろ。
とはいえ、今並べたのが一応は新作ではあっても、70年代~80年代から活躍しているベテラン作家の作品であることには変わりない。私が認めた最後の新人作家って、ヴァーリイ?ふ、古い。
なにせホーガン、大嫌いですから。下手くそ。耐え難い。
要するに、あたしはあんまり現代のSFを語る資格がないのだ。
引退した政治家みたいなもんだと思って欲しい。十代の頃、狂ったように読んでいたので、それなりにうるさい。だが、世の中にこれほど貢献しない知識もまたとない。
世間の害になるので、始末してしまった方がいい。そういう存在だ。
だから、70年代~80年代の噂のみで実際お目にかかれなかった名作を集めた国書刊行会のラインナップはもちろん大好きであって、作家と題名だけでメシが喰える。三杯はいける。
そして、とうとう今回はジャック・ヴァンスの日本版ベスト短編集。しかも編集が、かの浅倉先生と聞くと、とても黙っていられない。
確実に面白いですから、じっくり読んでみてください。と、こう、余計なお勧めをしてしまうのであった。
・・・え、ヴァンスって誰かって?
いやだなぁー、異世界冒険SFの巨匠ですよ。人間と似た、でもちょっと違った種族が暮らす変な世界を描かせたら、右に出る者がないという名人クラスの凄腕ですよ。
あたし、久保書店QTブックスの『終末期の赤い地球』をリアルタイムで購入した男ですんで。ほら、うるさい。
まぁ、そんな外野はともかくとして、余計な予備知識とかなくても、しっかり読ませる、ちゃんとしたSF短編というだけで、充分ヴァンスは貴重なんですよ。
面倒な物理学用語とか、サイバーなガジェットなんかクソ喰らえと思っている文系出身者。コンピュータに支配される現代社会から脱出したいあなたにお勧めです。
だいたい、原題「Miracle Makers」を「奇跡なす者たち」と訳す、このへんの格の違い。
このケレン味とセンスを大いに見習っていただきたい。最近のバカは、「ミラクル・メイカース」ってまんま邦題にしちゃうでしょ。
「Dragon Masters」と書いて、「竜を駆る種族」と読ませる。
これですよ、コレ。
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