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2011年9月19日 (月)

デヴィッド・リンチ『エレファント・マン』 ('80、BROOKSFILMS)

 文部省推薦だったか知らないが「感動の実話」「ヒューマン・ドキュメント」として売られて、なんと大ヒット!(洋画興収年間第一位!)。嫌でも記憶に残る映画である。
 オールドタイムの文芸大作を装った悪趣味映画。
 
指摘されれば確かにその通りなんだが、実のところ、そんな評論家レベルの話はどうでもいい。

 これは、可哀相な人の人生を憐れむ映画ではない。
  われわれは、みんなエレファントマンだ。

 お前たち悪党は、その事実に目を瞑り、納戸の奥に隠蔽したのだ。
 異様に肥大化した頭部を持って産まれ、全身の90%は腫瘍に冒され象の皮膚のように角質化して垂れ下がり、脊髄は不気味に捻じ曲がって、地上にまともに立つことすら出来ない。右手はまったく動かず、肺気腫を患い言語不明瞭で、暴力に怯え、でも性器だけはまったくの健常を保っている二十一歳。

 正常と異常の二極論に立ってみても、事態は何も変わらない。
 ときおり思い出す、呪われた小箱。
 それは、記憶の片隅に封印されているのではなく、実はきみの捕らわれているこの世界そのものなのだ。
 なぜ、気づかないのか。

 私は、血の涙を流しながら諸君に訴えたい。
 われわれは、全員、エレファントマンだ。
 

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