岡村靖幸『エチケット(パープル盤・ピンク盤)』 ('11、V3Record)
いろいろあったが、全て忘れて80年代からずっと繋がる岡村ちゃんの新作。
素直に二枚組にすりゃ良さそうなものだが、ファンは文句を言わないのであった。だいたい、新作が出るだけでたいしたもんだ。
投獄されないアーチストなんて、全員大物じゃないよ。そんな大それた軽口も叩きたくなる。
ジェイムス・ブラウンだって、公衆便所でマシンガンを乱射し逮捕されてるじゃないか。
・・・それとも一切口をつぐむのか、あんたは?
あいつは、どうだい?ほら、あいつは?
J.B.は服役後、すぐに四枚組編集盤『スター★タイム』が出たが、困ったことに日本のメジャーなレコード会社は極端に度量が狭い(蚤の額くらいの面積)もので、岡村ちゃんの過去音源は中古屋以外では品薄状態が続いている。
これは、教育上たいへんよろしくない。
従って過去の作品に遡って、リメイク作品集を出すことは社会的に必要とされる急務だったってわけだ。だったってわけさ。
まず、パープル盤。
イントロから高速化した「チャームポイント」(のエンディング部分)が演奏され、溜めて「どぉなっちゃってんだよ」に続く。
なんだか、ゴドリー&クレイム『ヒストリーミックスVol.1』を思い出させる構成だが、まぁ、気にすんな。
続く「岡村と卓球」。
いまいちだが、まぁいいじゃないか。あれは、卓球が凡人で優等生なのが悪いのだ。天才でないことを謗られるなら、われわれ全部が罪人だろう。
心配は要らない。
岡村節は、名曲「あの娘、僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう」あたりで、全開になるから。
一回もってかれると、以降チャクラは開きっ放し。
これが、岡村ちゃんの音楽におけるセオリーだ。掘れ、掘れ。Jポップの墓を掘れ。
ピンク盤には、ライブテイクも入っていて、これがツアーを前提とした復活劇の予告編集であることを印象づける。
が、そんなのは些細なことだ。
ここで演奏されるのは、物凄く王道の「カルアミルク」であって、それ以外ではない。
よりファンクネスの増した「カモン」からこの曲への着地の仕方は、感慨深い。フリーキーに吹きまくるサックスの後の空白。
いろいろ、考えさせられる瞬間だ。
牢屋とか。
殺した女とか。
芸能界の黒い交際とか。
企画段階では本当は全編ライブ盤になる筈だったらしい(出して欲しい)とか、今回の二枚はどうも立ち位置的に微妙な「ベスト選曲+リメイク&ライブ」で、純然たる新作が待たれるところだとか、ちょっとした残尿感はあるのだが、次でしょ。次ありますから。
いつわらざる本音で言わせてもらえば、
次の逮捕までには、完全新作が出て欲しい。
よろしくお願いします。
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